「我々は、お互いをやはりまだ十分知らないからだ」と指摘した。
ロシアの政治学者ドミトリイ・モシャコフ教授は、そうした大使の意見に同意しないわけにはいかないと考えている。ロシアと数十年に渡り政治的経済的文化的パートナーシップ関係にあり、今後もそれが続いてゆくと見られるベトナムは例外だろう。インドネシアについて言えば、過去の密接なパートナー関係は、すでに大分前に無に帰してしまった。
ここ数年、ロシアとアセアンのビジネスマン達は、益々積極的に、両者の実務関係を発展させている。石油ガス領域でも、携帯電話や観光業、さらには鉱物資源採掘の分野でもそうだ。しかし、ロシア-アセアン実務評議会のヴィクトル・タルスィン会長も指摘しているように、アセアン地域へのロシアの投資について言えば、自分達が持っている真剣な戦略的抱負の実現にはまだほど遠いと言わざるを得ない。
「ロシアが加わっている数々の紛争や制裁によって、ロシアが困難で複雑な状況下に置かれた現状では、中国との関係、そして中国の融資やプロジェクトに参入するという問題は、ロシアにとって第一義的な意味を持っている。こうした状態から、残念ながら、アジアにおいて、本質的な形でロシアの状況を軽減し、深刻な問題もなく今の時期を生き延びるチャンスをロシアに与えてくれるパワーの源は、唯一中国だといった解釈が、ますます頻繁になされ始めている。それゆえ、アジアにおけるロシアの政策は、中国との関係に集中し、中国の利益は、アセアンのものも含め、他の利益を犠牲にして、特別の意味を獲得し始めている。ましてロシアにおいては、中国についてなかなか優れた知識の基盤が蓄積されており、我々は、パートナーとしての中国をよく理解している。一方アセアンとの関係においては、ベトナムを除き、ロシアにはそうした知識がない。
こうした状況は、全く受け入れられないものだ。ロシアの政治家やビジネスマンは、中国にのみ狙いを定めるような姿勢から離れる必要がある。しかしだからと言って、どんな場合でも中国から離れるわけではない。バランスを模索すべきであり、中国ともアセアンとも、という政策に移るべきだという事だ。ソチでのサミットが、そしてロシアにおけるアセアン年、アセアン諸国におけるロシア年という取り組みが、ロシア、アセアンそして中国の関係におけるバランス達成の助けになるよう望んでいる。」