「北極圏への関心を寄せる国は圏に直接的に隣接した諸国に留まらない。北極圏には何の関係もなさそうな国の間でもそうした関心は高まっている。
ここで理解しておかねばならないのは、資源枯渇の危機から新たなエネルギー資源の模索と開拓が必要に迫られているということだ。そしてそのかなり将来性の高い備蓄が眠っているのがまさに北極の大陸棚だ。
このためアジア太平洋地域諸国が北極によせる関心はまず、北極圏の資源開拓プロジェクトにうまく入りたいという切望から呼び起こされたものだ。
関心の第2の理由は温暖化と北極の氷解に関連している。これによって北氷洋をほぼ通年にわたって使う可能性が開けるからだ。このルートを使えば日本から欧州までかかる日数はスエズ運河を通るより4割短縮される。ロシアは北氷洋の開拓を1930年代にすでに始めており、ソ連で最初に本格的な砕氷艦隊が登場したのも、まさにこのルートだった。
現在、独自の砕氷船を造船することについては他の諸国も思案しており、日本もそうした中に入っている。だが日本もアジア太平洋地域のほかの国々も北極における自国の行動をすり合わせねばならない。なぜならば北極での最優先権はその圏域を取り巻くロシア、米国、カナダ、ノルウェーが依然として握っているからだ。その各国が北極圏に排他的経済領域を所有している。
今週、ソウルで行われるそうした類の会合も深刻な国益のぶつかり合いを避けるために行なわれるわけであって、これは大手をふって歓迎せねばならない。日中韓はひとつになることで北極地域の開拓に共通の政策を構築できるだろう。協力というコンテキストではこれは喜ばしいことだ。」
北極には世界の天然ガス全体の30%、石油の13%が埋蔵されている。こうした資源の一部はロシアの水域の地下に隠されている。ロスネフチは独自の北極計画を有しており、その実現に日本の資本と技術を引き寄せたいとしている。これは自前のエネルギー資源を断たれている日本の国益にも高いレベルで叶うものだ。だが、コーシュキン氏は、このプレーには政治的観点が入ってきてしまうとして、次のように語っている。
「日本の背後には常に見えない形で米国が立ちはだかっており、ロシアは対日関係が政治的に緊張した場合にエネルギー資源の供給を縮小するぞと脅し、圧力をかけかねないと吹き込んでいる。本来であれば北極圏における協力の前向きな経済効果で露日の政治環境も改善されるはずなのだが、米国はさらにあからさまに日本への圧力を強めている。対露制裁に関するG7全体の立場をぼやかしてしまうという判断から、安倍首相には事実上直接的にプーチン大統領と会うことが禁止されている。これはもう正真正銘のゆすりであり、外交圧力というほかはない。もちろん日本はより自由な空気を求めているが、自国領域に100を超える米軍基地を抱えているために自由な外交プレーが阻害されている。米国は依然として自分に必要な結果を日本に出させるためのハンドルを少なからず有している。」
北極圏でのロシアと協力が成れば、日本には北氷洋のロシアの大陸棚からのエネルギー資源の供給が確保される。コーシュキン氏は、日本がこうした協力を行うか否かは日本が政治的障害を回避しと語っている。