2017年:人類はどんな脅威に直面するのか?

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現在の社会政治情勢は世界経済を惨劇に導く可能性がある――世界経済フォーラムが発行するグローバルリスク報告書(Global Risks Report 2017)の著者の一人で保険会社Marshのグローバルリスク部門社長のJohn Drzik氏はこのように危惧する。

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トランプ大統領が米国のTPP離脱に関する大統領令に署名したことは、保護主義が2017年の世界経済にとって深刻な脅威の一つになるという、世界経済フォーラムとゴールドマン・サックスの専門家の危惧を裏付けるものだった。このほかに、ゴールドマン・サックスの考える脅威には、欧州ではBrexit、ポピュリズム的な動きの強まり、移民問題、テロなどがある。アジアでは、中国経済を鈍化させ、世界経済の成長を阻む可能性のある中国の「債務爆弾」が挙げられている。

世界経済フォーラムの報告書は、2017年の人類最大の脅威として、環境リスクと地政学的リスクを挙げている。気候変動は今後10年の主要な脅威であると記されている。しかも、パンデミックや核災害とは違って、気候変動こそが最も発生の可能性が高い脅威だとされている。

地政学的リスク

次に重要なリスクカテゴリーが地政学である。具体的には「地域的及び世界的な統治の失敗」により発生し得る大規模テロや国家間紛争がこれにあたる。地域機関や国際機関の合意形成能力や経済・地政学・環境問題の共同解決能力の欠如が、2017年のリスクとして初めて記載された。2016年には、ロシアや南アフリカなど一連の国々が国際刑事裁判所から脱退し、中国は南シナ海の領土に関する国際司法裁判所の判決を拒否した。トランプ氏はイランとの協定破棄や気候変動に関するパリ協定からの脱退を匂わせている。各国はシリア内戦の解決についても全く合意できないでいる。大国間の意見の相違が国連の機能を麻痺させ、紛争停止と一般市民への人道支援供与を阻んでいる。報告書はまた、お互いに内政干渉を非難し合って憚らない国同士の信頼欠如も地政学的緊張を助長する要因だと記している。

社会経済リスク

専門家は社会経済リスクとして大量移民を挙げており、社会的不平等の危機的な拡大や人種・宗教・文化を理由とした分断が2017年の情勢を深刻に悪化させるかもしれない。クレディ・スイスの報告書によると、世界の富の半分以上(50.8%)は1%の最富裕層が手にしているという。これが2016年にはポピュリズムの高まりにつながった。英国の国民投票や米国選挙の結果は、こうした要因が各国の情勢にどれほど深刻な影響を与えているのかを示すものとなった。

技術リスク

軍事用ロボットや人工知能の利用が広がる軍拡競争により、紛争発生リスクは高まっている。技術リスクの中で最も発生の可能性が高いものには、サイバー攻撃、詐欺とデータの盗み取り、ソフトウェアの欠陥があり、これが原因となってエネルギー部門、運輸交通、通信に支障を来す可能性がある。新技術とロボット工学の急激な進展がますます人間の労働を奪い、その結果、失業率と社会の不安定性が増すことになる。これがまた、騒乱につながる可能性がある。報告書の著者らは、ほぼすべてのリスクはお互いに関連しており、それが各リスクの影響をさらに強めていると、総括している。
例えば自然災害に関連したようなリスクには、2011年の福島原発がそうであったように、予防することがほぼ不可能なものもある。その他のリスクについては、リスクマネジメントというツールが存在する。ロシアのUFG Capital Managementのリスクマネージメントディレクター、ウラジーミル・シャポワロフ氏によると、どの国でも、また、まともな企業であればどこでも、このツールを用いて、あり得るリスクの情報を蓄積・分析し、国もしくは企業のトップのために何らかの最終成果物を出しているという。

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「金融の世界でリスクマネジメントとは、まず、どうすれば望ましくない出来事が発生する可能性を通してリスクを計測することができるかという分析である。というのも、望ましくない出来事には損失がつきまとうだけでなく、望んだ結果が得られない可能性もついてまわるからだ。リスクマネジメントは万能薬ではないが、リスクマネジメントをしていれば、例えば市況などについて、常により多くの情報に通じておくことができる。」

リスクマネジメントを提供する米国のシンクタンクで、ホワイトハウスも外交政策の策定にあたり提言を求めている外交問題評議会が先日、2017年に米国の国益にとって主要な脅威となるのは「ロシアとNATO加盟国の意図的もしくは非意図的な軍事対立」であると発表した。この脅威のレベルは「高レベル、可能性がある」と評価されている。その他の脅威としては、北朝鮮情勢の先鋭化、米国の最重要インフラへの破壊的サイバー攻撃、米国もしくは同盟国でのテロなどが挙げられている。とはいえ、2016年に「極めて可能性が高い」と評価されたシナリオのうち、どれひとつとして現実になったものはない。

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