社会学者の評価によると、トランプ大統領を選出した人の3分の1はプーチン大統領を肯定的に評価している。だからこそトランプ大統領はこれを無視できないのだ。さらに、公約からのいかなる逸脱も、トランプ大統領の弱さと政治的無能さの印だと野党にとられてしまう。またトランプ大統領自身も先の公約を反故にせず、ロシア政府との対立から降りる用意がある。トランプ大統領にとってこれは、「ビジネスであり、個人的なものは何もない」のだ。
トランプ大統領は、まだメディアを通してではあるが、対露制裁解除の見返りとしての戦略兵器削減問題の探りを入れた。ロシア政府は返答として、慌てずに公式チャネルを通じて米国の提案について知りたい考えをほのめかした
トランプ大統領はまた、ダーイシュ(イスラム国、IS)との合同軍事作戦を非常に具体的に提案している。トランプ大統領とプーチン大統領の初となる電話会談の後、ホワイトハウスの報道担当は、「会談は1時間ほど続き、トピックはダーイシュ打倒における相互協力から、シリアを含む全世界でより多くの平和を達成するため共に作業する努力にまで及んだ」と発表した。とはいえ、プーチン大統領は2015年の国連総会の演説ですでに、テロと共に戦うことを米国に提案していたのだが、何の成果もないままとなっていた。
2月7日、トランプ大統領はトルコのエルドアン大統領と電話会談を行い、シリアの都市アル=バーブとラッカで共に行動することで合意した。
まさにこの日、ロシアのラブロフ外相は、トランプ政権がシリア紛争開始から初めて、「現段階では一回限りであっても、『ダーイシュ』との戦いにおいて具体的な作戦に向かった」ことを確認した。その作戦とは、米国がロシア航空宇宙軍に、シリアにいるテロリストの位置情報の座標を提供するというもの。
ラブロフ外相はまた、シリアでの協調に関する露米文書は去年の時点ですでに、ラブロフ外相と当時のケリー国務長官によって策定されていたが、オバマ前大統領によって退けられてしまったことに言及した。また、ラブロフ外相は、シリアにおける露米の軍事協力は、「有意義かつ重みのある」結果をもたらすかもしれないと匂わせた。
ますます現実味を帯びつつあるこのようなシナリオは、露米政府の関係刷新の出発点になり、ことに軍事協力分野における対露制裁の実質的な撤廃を意味するものになるかもしれない。
EUの現首脳たちにとって、これは悪い報せだ。日本政府にとってこれは、ロシアとの協力プランに対する米国の妨害の終わりを意味するだろう。少なくとも、日本がロシアとの協力を後回しにするために「制裁が邪魔をしている」という言い訳は立たなくなる。