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© AP Photo / Czarek Sokolowskiポーランド独立記念日の11月11日、同国内では様々な政治勢力を背景にした大規模な運動が行われた。
ポーランド独立記念日の11月11日、同国内では様々な政治勢力を背景にした大規模な運動が行われた。
© AP Photo / Czarek Sokolowski
国立モスクワ大学歴史学部で東欧諸国を専門とするユーリィ・ボリショノク准教授は「スプートニク」の取材に対し、今回の出来事は参加者が多数に上ったために世界中のマスコミから注目を浴びたと説明する。以下、ボリショノク准教授の見解を紹介する:
1918年にポーランドが国家体制を取り戻したことを記念して設けられた独立記念日は毎年祝賀されるものだが、今年に限ってはこのような集団的な性格を帯びたものとなった。デモ参加者の中には極右主義者や過激なスローガンを唱える人々もいた。しかし、複数のマスコミで報道されたように、あたかも参加者全員がナチストだと考える必要はないだろう。実際はカトリック教会の影響力強化を支持する者や難民の欧州受け入れ反対者も多く、中には突飛な行動に出た若者やただの物見客もいたのだから。
デモを組織したのは、政党「国民運動」、団体「国民急進陣営」および「全ポーランド青年」といった急進的フループで、第二次世界大戦までの伊ムッソリーニの初期統治期におけるファシズム理念の影響を受けていた人々の後継者となる。右翼急進主義者ではあるが、誰かを根絶させる要求も人間憎悪的な視点もない。それ故これらのグループをナチストと呼ぶのは正しくないだろう。現在は非主流の過激派であり、政治でも社会でも大きな影響力を持っているわけではない。その状況は、例えばオーストリアで極右・自由党の候補者にほぼ5割の票が集まったことや、ドイツで2016年3月に極右政党「ドイツのための選択肢」が州議会選挙で躍進した状況とも異なるものだ。
ポーランド政府は今回のようなデモ活動を支持しなかったが、禁止もしなかった。だがポーランド独立100週年を迎える来年は、おそらくこのような活動は許可されないだろう。今回のことで国のイメージを損ないかねない大きな反響が生じたのだから。
全体的に見れば、国家主義的で抗議的な気運の高まりは、ポーランドでも他の西側諸国でも見られる。きっかけは移民受け入れ問題であったり、地方政府の経済・社会政策への不満であったり、様々だ。世界の各地は今、乱流の時期にあるのだろう。
極右的な動きはヨーロッパ全体で台頭し始めており、ロシアも例外ではない。確かにヒトラーとその民族優位論の支持者はごく僅かな数に留まっている。勿論、極右イデオロギーそのものも大きな変容を経た。敵視される対象も変わり、今ではイスラム教徒と移民が標的となっている。