「状況は冷戦時代より悪化」 露米の対立が世界にもたらす脅威とは=元CIAマシュー・バロウズ氏

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「露米関係は行き詰まり状態だ。しかし両国とも、危険な境界線への接近を回避するため、遅かれ早かれ舵を取る必要があることは認識している」— こう述べたのは、米シンクタンク「アトランティック・カウンシル」で戦略フォーサイト・イニシアチブ(SFI)部門の部長を務めるマシュー・バロウズ氏。モスクワで開かれたセミナー「露米関係:袋小路からの出口はあるのか?」で登壇し、自身の考えを披露した。バロウズ氏は、2013年、28年勤務した米中央情報局(CIA)と国務省を退職。最後の10年間は国家情報会議(NIC)に在籍していた。書籍『機密解除された未来、2030年に世界はどうなるのか』の共著者の一人でもある。

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同氏は、米露が関係を構築すべき理由として最も重要なのは、両核大国が世界に対して追う責任であると主張。だが現在の米国体制は、二国間関係の正常化の助けにはならないと指摘する。

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「対ロシア実用主義はイデオロギー的な理由で犠牲となった。この点において、状況は冷戦時代よりも悪いものとなっている。当時の西側諸国には、イデオロギーを超えてソ連との建設的な協力を求める『緊張緩和支持者』の大きなグループが存在していたが、今ではそのようなものはない。国内状況が全てを決定する状況で、非理性と予測不可能性は深刻になっており、米国でいま起きていることはその典型だ。政党間は互いに同意することができず、極めて重要な問題に関するコンセンサスもない。政権上層部にも結束は見られない。この状況でプーチン氏とトランプ氏にできることは何だろうか。確固たるチャンネルを政府間だけでなく、軍事を始めとする他の分野でも築くことだろう。今のところは、このようなチャンネルやルートが悲しいほど少ない。コミュニケーションや対話をマスコミや閉鎖的な場所から移動させ、『目には目を』の報復措置にも終止符を打つべきだ」

報復措置の直近例としては、米露両国の外国メディアを「外国エージェント(秘密情報機関員)」として登録させる決定が行われたことが挙げられるだろう。このような問題は現実への理解やコミュニケーション、相手に対する知識の不足から生じており、その現状をバロウズ氏は次のように表現する。

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「多くの場合、アメリカ人もロシア人もステレオタイプの虜になっている。米露間の人的な接点は微々たるものだ。逆説的に聞こえるかもしれないが、実は冷静時代の我々は今よりもロシアのことをよく理解していた。貴国(ロシア)を敵国だとみなしていたからこそ、綿密な研究を行っていた。かつてはロシアに関する学部や研究センターがあった。しかし冷戦終了後、これらはほぼ水泡に帰した。今の時代、我々は中国のことをより良く理解していると言えるだろう。米国では多くの中国人留学生が学んでおり、密接な交流が行われている。つまり、なるべく多くのロシア人が訪米することは我々双方の利益に適うだろう。アメリカ人と同様、多くのロシア人もまた米国に対してネガティブな印象を持っており、それを個人の経験で希釈することができないのだから。だから個人的な交流をもっと広げなくてはいけない。米国で重要なのは、ロシアのこと、その歴史や伝統への理解を深めること、そしてロシアもアメリカ人が世界をどのように見ているのかをもっと理解すべきだろう。そのためにコミュニケーションと相互関係のためのチャンネルを全て活用する必要がある。例えば、学生や専門家同士の交流、学術的なセミナーや会議、人的交流など-これらは全て、従来のステレオタイプを破壊するために必要だ。我々が互いの理解を深めれば、両国の首脳をより緊密な相互関係へと促していくこともできるかもしれない。協力から生じるメリットを示していくべきだ」

バロウズ氏は米大統領選における「ロシアの痕跡」にも言及。この問題は多くの点において、選挙に敗れ立ち直れなかった民主党指導者らが意識的に誇張したものだと述べた。

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「米国側は直接的な証拠を掴んでいないものの、ロシア人ハッカーが民主党サーバーへの侵入やウィキリークスでのメール公表によって大統領選に介入したというある種の確信を持っている。この件では、中国に対する懸念もあり、特に商業的スパイと知的財産の盗用が問題視されている。逆に、ロシアや中国側は、米国にはハッカー攻撃を仕掛けるための手段が全て整っていると恐れているだろう。そのため、どのような行為が許容され禁止されるのかを定めた何らかの議定書や合意を採択する必要があるだろう。この新技術によって自分たちの世界が無規則で『野蛮な西側諸国』に変貌することなど我々は望んでいない。この問題では全ての国が被害を受ける可能性があり、もっと危険な衝突が新たに発生する恐れもあり得る。トランプ・プーチンの両氏が話し合うべきことは正にこのこと、つまり各国がこの問題を協議できるような相互関係のシステム構築について両氏は話し合うべきだと私は考える」

バロウズ氏の発言内容に関する「スプートニク」の取材に応え、ロシアの世界経済国際関係研究所付属北米研究センターのアレクサンドラ・ボリソワ学術職員が見解を述べた。ボリソワ氏は、露米両国がその関係において危険な一線に近づいており、その行き詰まり状態からの出口を探す必要性を理解している点については同意する。だが同氏の考えによると、「分岐点」となったのはウクライナ危機ではなく、もっと過去のことだという。

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「(対立は)ウクライナ危機から始まったと言われている。確かに2014年に露米関係は著しく悪化し、以降エスカレートの一途を辿った。だが実際は冷戦終了時、ロシアの期待が現実と一致しなかったことから全てが始まったのだ。ロシアは一定の譲歩をしたことで、米国が新たな目線で見てくれることを当てにしていた。ところが米国はこれをロシアの弱体化と判断し、同国を重視する必要性はないと考えた。以降、対等なパートナー関係ではなく、ロシアにとっては屈辱的な関係が始まり、この状況によって、同国は力を拡大し誇示していく方向に刺激されたのだ」

先に行われたバルダイ会議で、ロシア経済高等院の世界経済・政治学部長のセルゲイ・カラガノフ氏は、次のように警告した。

「人々は世界的な戦争のない生活に慣れ、今後もその生活が続くと考えている。実際は必ずしもそうだとは言い切れない。昔と同じように、平和のために闘うべきだ。新たな平和的秩序への道は険しくなるが、その道は開かれなくてはならない。ロシアがすべきことで重要なのは、戦争を回避する方法、そして将来のことを考え、これを共同で築いていくことだと思う。今、ロシアと米国は何かを始めようとしている。だが、その話し合いの効果が得られるのは、中国を始めとする他の大国がこれに与する場合のみだろう」

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