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ハイトン氏によると、司令部では大統領が核攻撃を命令した際、損失を伴う攻撃の不可欠性と均衡などを考慮した行動計画を数十年間かけて練り上げてきたという。これに先立ち、米上院外交委員会では「大統領の核攻撃命令権限」について協議が行われていた。上院議員らは、トランプ大統領が核戦争を勃発させるかもしれないと真剣に危惧している。その危惧の根拠は、トランプ氏がこれまでの発言やコメントの中で、とりわけ朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)政権に対し核兵器を使用する可能性に言及してきたことにある。最も際立った例として、9月の国連総会の場で、米政府には必要に応じ北朝鮮を「完全に破壊する」用意があると表明したことが挙げられるだろう。最近のトランプ氏は挑発的な発言を控えている。だが現状はどうなのだろうか。
トランプ大統領の奇抜で時には予測できない言動は、かつて同氏を支持してきた人々からも背を向けられる事態を招いている。盟友ボブ・コーカー共和党上院議員はトランプ氏に対し、北朝鮮政府との外交的なかけひきを本職の専門家に一定期間委ねるよう忠告していたが、10月には同氏の批判に転じた。
今ではコーカー議員は、トランプ氏が大統領としての職務を「リアリティ番組」のように扱っていると非難する。また同氏が他の国に脅威をもたらし、第三次世界大戦を引き起こしかねないとも警告している。
「いかなる核大国でも国防相や軍高級幹部らとの合意なしには核攻撃は行えない。しかも核攻撃の実施には2つのパスコードシステムをクリアする必要がある。1つ目は核兵器使用を許可するためのもので、2つ目はこの行動をブロックするコードだ。これら2つのパスコードをクリアして初めて戦略的核兵器が使用できるようになる。また戦術的核兵器は電子錠システムで管理されており、その解錠コードは通常、特定の軍事作戦地帯の司令官が保管している。そしてこの場合も解錠手続きが必要となる。つまりこれらのコードをクリアすることは、先制攻撃であれ報復攻撃であれ必須手順なのだ。この議題に関して上院では定例の協議が行われた。各政権では「核態勢の見直し(NPR)」が改定されてきているからだ。ハイトン戦略司令官について言うなら、世界各国のあらゆる軍隊では最高司令官の命令を履行しない場合、降格や裁判といった処分が科されるものだ。だから彼はただ虚勢を張っているか茶番を演じているだけではないかと考えられる」
「報復攻撃に関する大統領権限の制限は協議の対象にもならなかっただろう。先制攻撃に関しても、米国がそのような選択肢を取る状況はきわめて想像し難い。他の方法によらず核兵器のみでしか解決できない問題など、まずあり得ないことだからだ。仮にトランプ氏がそのような命令を下したとしても、軍隊には、これを違法と判断すれば履行しなくても良い権利がある」
だがバブリツキー氏は、この問題が米上院外交委員会の枠を超えて協議される見通しはほぼないという。上院議員らが自ら会議の中で強調していたように、問題はきわめて機微なものであるからだと同氏は説明する。