スプートニク日本
翻訳コンクールは2年に1度開催されており、今回で4度目。コンクールを実現化するためにすでに2002年の時点で日本の文化庁によって現代日本文学の翻訳・普及事業(JLPP)が立ち上げられている。最良の翻訳者にはグランプリ賞が授与されるほか、2位も2人に授与される。翻訳受付期間は6月1日から7月31日で入賞者の名前は12月に公表される。
JLPPの小川康彦氏事務局長はスプートニクの取材に対し、応募にあたっては年齢、学歴などの制限は一切設けられていないとして、次のように語っている。
審査員は4人。名古屋外国語大学学長で翻訳家として有名な亀山郁夫氏、東京大学教授で、現代文芸論・スラブ文学研究家として活躍されている沼野充義氏、神戸市外国語大学名誉教授,立命館大学講師のリュドミーラ・エルマコーワ氏、ロシア高等経済学院教授で日本文学研究者のアレクサンドル・メシェリャコフ氏で構成されている。
質の良い外国語翻訳のために必要なことは何だろうか? スプートニクはこの問いを審査委員のひとり、アレクサンドル・メシェリャコフ氏にぶつけてみた。
「第一に自分が取り組むものに対する責任感です。著者に対して、未来の読者に対する責任感。頑張る元気。翻訳者だって時にはテキストに疲労することがあります。そうなると翻訳はただの生活のための辛い仕事になってしまう。こうなるといい結果は生まれるはずはありません。翻訳には型通りのアプローチではだめなんです。自分が俳優となり、作者が描く人物像の人生を一緒に生き、その環境に状況に身を置く必要があります。ですから翻訳者がその作者を好きになり、取り組んでいる本を好きになるほうがいいです。そしてもちろん才能。こうした才能を私たちはコンクール参加者から『釣り上げ』ようとしているんです。」
日本ではロシアの現代作家の作品は翻訳されているだろうか? スプートニクはこの問を審査員の沼野充義教授にぶつけてみた。
「現代の新しい作品の翻訳は少しずつでているんですけども 、残念ながらそんなに沢山売れてなくて、そんなに知られている人は少ない。それでもペレーヴィンとかソローキンとかは若い人たちの間でちょっとだけ、カルト・ライター (有名な作家)です。それでもそんなに多くの人が読んでいるわけではないですね。
まあ、ウリツカヤとかペトルシェフスカヤといった人たちも少しずつ翻訳されていますし、我々も頑張ってどんどんいい作品を訳したいと思います。私の家内も翻訳をやっていますが、例えばディーナ・ルービナとかね。ああいう面白い作家がもっと翻訳された方がいいと思います。」
海外文学の中で日本人に人気があるのはアメリカ文学。沼野氏はその理由を次のように分析している。
ロシア文学は残念ながら『商品』としてあまりきちんと出来てないものが多い。しかし何か魂の深さとか、面白さとか、なんか引っかかるところがあるんですよ。その魅力をもっと伝えないといけないですね。」
ロシアでは日本文学の翻訳作品としては最近、柴崎 友香作『春の庭』が店頭に姿を現した。
また日本では最近、ドミトリー・グルホフスキー作の「終末もの」のSF小説『メトロ2033』が人気を博している。この作品はロシアでは2002年に発表され、邦訳は2010年に出版されていたが、1年前、この物語をモチーフにしたゲーム「メトロエクソダス」が発売されると、それが火付け役となり書籍も新たなファンを惹きつけるようになった。