【解説】制裁発動中であるにもかかわらず、ロシア産のタラバガニとすり身が日本に大量に運ばれている

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国際シーフード・ソース・エージェンシーのデータによれば、2022年の8ヶ月間で、ロシア産の海産物のいくつかの品目の日本への輸出が大きな伸びを見せている。日本は、ロシアの最恵国待遇を撤回したのにもかかわらずである。米国が、カニを含むロシア産の海産物の輸入を禁止しているのを背景に、ロシアのカニ漁業者らは、その供給先を東南アジアやアラブ諸国へと多角化している。
日本の財務省のデータを基に、シーフード・ソースが伝えているところによれば、ロシアのカムチャツカのカニの日本への輸入量は、2022年1月から8月にかけて、およそ1300トン、金額にして105億円となっている。これは昨年の同時期に比べて、31%増となっている。また同じ時期、ロシア産のズワイガニの供給量は7000トン、金額にして220億円となっている。昨年2021年、同じ時期の輸入量は4000トン、135億円であった。つまり、その増加率は77%にも達したことになる。
さらに、ロシア産のスケトウダラのすり身の供給が急激に増加している。1月から8月にかけて日本に輸入されたすり身の量は1万1200トンで、51億円である。昨年、ロシアの水産会社は日本に供給したすり身は1300トン、金額にして4億3000万円であった。
しかし、ここで特筆すべきなのは、ロシアからの海産物の輸入量そのものも増加しているという点である。ロシア産のカニの主な消費者は、伝統的に米国、韓国、日本、中国、そして東南アジア諸国となっている。
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2021年、カニ製品の供給は、輸出の割合としては5%以下とそれほど大きくなかったものの、ロシアの海産物の売上全体の43%以上となった。3月12日、米国のバイデン大統領は、カニを含む、ロシア産海産物の輸入を禁止すると発表した。こうした条件の下、ロシアのカニ漁業者は、カニ漁を続け、輸出の多角化を図り、この製品に対する需要を高めるのを促進した。その中には、観光客の多いアラブ諸国も含まれている。
3月16日、日本はロシアに対する貿易優遇措置である最恵国待遇を撤回した。この優遇措置は、WТO(世界貿易機関)の加盟国と同様の原則にしたがい、ロシアにも適用されていたものである。その結果、カニ肉の関税は4%から6%、ウニは7%から10%、そしてサーモンは3.5%から5%に引き上げられた。
日本への海産物の輸入のうち、ロシアからの供給は全体の8.6%を占める。しかし、日本の市場にとって、これは3番目の輸入元である。しかも、水産資源のいくつかの品目において、ロシアは独占的な供給者となっている。たとえば、日本はベニザケの79%、カニの56%、そしてウニの47%をロシアから輸入している。
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こうした状況に関連し、自社製品を日本、中国、韓国、シンガポール、豪州、近東などの市場に売り出している極東の主要な水産会社「ルースキー・クラブ」は、「スプートニク」からの取材に対し、次のように述べている。
「米国からの制裁の圧力によって、国際市場におけるカニの輸出の方向性が変わりました。現在、米国市場ではカナダ産のズワイガニが、ロシア産のカニに完全に置き換わっています。これにより、ロシア産のズワイガニの価格が下がったことで、日本からの関心が高まりました。さらにロシア産のカニの日本への供給量が増加したその他の理由は、ロシア産製品がカナダ産のものよりも明らかに品質が良いという利点があること、また輸送がより容易だということです。日本市場は、海産物の消費レベルが高いのが特徴です。しかも、国内で漁獲されるカニの量が、国内需要を下回っています。しかも、カムチャツカのカニはほぼ漁獲することができません。ですから、この地域は歴史的に、ロシア産の海産物を輸入してきたのです」
ロシア極東では、主に9種の業務用カニを漁獲している。加えて、世界で漁獲されるタラバガニの70%、またプレミアムカニの30%がロシア産となっている。これらのカニは世界のあらゆる国で、珍味と考えられている。
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2022年、アラスカでは、カムチャツカのカニ漁が禁止されたことを受け、このもっとも高価なカニの漁獲割り当てはロシア(2万7500トンまたは世界の94%)とノルウェー(1800トンまたは6%)の2カ国だけとなった。「スプートニク」は、この状況を解明するため、ロシア産海産物の輸出に詳しい、ストラテジー・パートナーズのインナ・ゴリファンド氏にお話を伺った。
「スプートニク」:今年8ヶ月間のロシア産のカニの日本への輸出が増加している理由は何だと思いますか?
インナ・ゴリファンド:ロシアは常に、米国とアジア諸国にカニを輸出してきました。ロシア産のカニの輸入が米国によって禁止されたあと、唯一の支払い可能な国として残っているのは、中国、韓国、日本で、これらの国ではプレミアム品種の需要が依然として高く、必然的に、プレミアム品種のカニの輸出が増加したのです。新たな供給先として検討されているのが、東南アジアの国々ですが、新たな輸送ルートについては、供給国側によってより詳細に検討される必要があります」。
「スプートニク」:米国が、カニを含む、ロシア産の海産物の輸入を禁止してから、ロシアのカニ漁業者には厳しい時代が来ると言われていました。つまり、ロシアは、別の輸入国を見つけることができ、状況はそれほど悪くないということになるのでしょうか。
インナ・ゴリファンド:2021年、ロシア産のカニの輸出量は7万5000トンでした。米国向けにおよそ3万2000トン、つまりロシア産のカニの輸出全体の43%が輸出されていました。そこに供給されなくなった分は、中国や日本に輸送されている可能性があります。今の状況において、ロシアの生産者にとっての唯一の深刻な問題は、アジアへの通過点での輸送量が増加していることです。カニは賞味期限の短い食品です。わずか1日でも輸送に遅れが出れば、価格に大きな影響が出ます。しかし、うまく輸送を計画すれば、この問題は回避することができるのです」。
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「スプートニク」:日本はロシアにとって、輸入国としてどれほど重要でしょうか。というのも、日本では非常に多くのさまざまな海産物が消費されている一方で、日本も独自の漁業が発展しています。
インナ・ゴリファンド:ロシアは毎年、およそ2000〜3000トンのカニを日本に輸出してきました。加えて、そのうちの大部分が韓国を通じて供給(再輸出)されているため、ロシアの関税の統計のデータはやや少なめの数字になっています。実際の日本への供給量は、毎年およそ1万〜1万4000トンとなっています。このように、ロシアのカニ輸出に占める日本の割合はおよそ20%です。日本向けの輸入のうち、かなりの部分はカナダからも運ばれています。しかし、米国の市場を、ロシア産のカニの代わりにカナダのズワイガニが占めているということは、ロシアの輸出業者はカナダ産の供給量が減少している市場に移るということを意味します。つまり、カニの販売量はこれまでのレベルを維持しているだけでなく、将来的には増加が見込めるということです」。
一方、日本向けのすり身の輸出はほぼ10倍に増加している。これについて、「スプートニク」の取材に応じたスケトウダラ漁獲協会のアレクセイ・ブグラク会長は、次のように述べている。
「スケトウダラのすり身の日本およびその他の国々への輸出の増加は、ロシアにおけるすり身の製造量が伸びていることに関連しています。ロシアの会社は、スケトウダラのすり身の製造を2021年に始めたばかりです。2021年、すり身の製造量は、8400トンに達しました。色丹島にある水産工場『クラボザヴォツク』は、すり身の大量生産を行うロシア初の会社です。統計によれば、2022年10月17日時点で、およそ1万9000トンのすり身が製造されています。予測では、スケトウダラのすり身の今年の製造量は、海と沿岸で、2万3000トンに達する可能性があります。製造量の増加に伴い、この製品の輸出の可能性も高まっています。そして日本は、すり身の消費においてもっとも主要な市場の一つです。スケトウダラのすり身は、他の魚のものに比べて、ずっと味のよいもっとも高品質の製品とされています。何より、養殖魚ではなく、天然魚で作られているからです。ロシア、それからスケトウダラの漁獲量が多い国は、この部門で優位に立っています。他でもないロシアの漁業者は、新鮮な魚から高品質のスケトウダラのすり身を、漁獲後すぐに陸で、また船で作る可能性を有しています」
また、日本市場において、薬理学、医学、料理、紙製品や塗料の製造などでの化学産業で広く用いられている海藻の需要はほぼ完全にロシアの資源で網羅されていることを指摘しておく必要があるだろう。
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