【解説】米国のABM条約脱退から21年 今、国際安全保障は何によって支えられているのか

© AFP 2023 / STEPHEN JAFFE米国のジョージ・W・ブッシュ大統領
米国のジョージ・W・ブッシュ大統領 - Sputnik 日本, 1920, 16.12.2022
米国のジョージ・W・ブッシュ大統領(当時)が、2001年に米ソ(後のロシア)の弾道弾迎撃ミサイル能力を制限する画期的な協定「弾道弾迎撃ミサイル制限条約(ABM条約)」の脱退を決定してから、13日で21年目になる。この動きは、ロシアと米国の関係を悪化させる「炭鉱のカナリア」となった。炭鉱のカナリアとは、その時点では感知できない危険を知らせる物を指す。
2001年12月13日、ブッシュ大統領はホワイトハウスの庭園ローズガーデンで記者団に対し、「ABM条約は、将来のテロリストやならず者国家によるミサイル攻撃から国民を守るための政府の方針を妨げているという結論に達した」と述べた。その6ヵ月後の2002年6月13日、米国はこの条約を脱退した。
1972年5月、ソ連のブレジネフ書記長と米国のニクソン大統領がABM条約に調印した。この条約は、ソ・米国両政府が保有する弾道弾迎撃ミサイル製造能力を制限し、超大国の核弾頭と運搬システムの拡大を遅らせ、世界の戦略バランスを崩すような他国に対する優位性を獲得しようとする試みを防ぐためのものであった。
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その際ロシアは何を言い、何をしたのか

当時、大統領に就任したばかりのプーチン氏は、米国の決定に驚きはしなかったものの、条約が世界の安全保障と安定の「礎」として機能してきたことを考えると、この動きは「誤ったもの」だと考えていると米国側に伝えた。
当時の米国は、テロリストや、ブッシュ政権が「悪の枢軸」と呼ぶ北朝鮮やイランなどのいわゆる「ならず者国家」が、米国やその同盟国を攻撃するためにミサイルを製造したり入手したりするかもしれないと公に主張していた。
当時、米国の世界覇権とジョージ・W・ブッシュ大統領の父、ジョージ・ブッシュ元統領が1991年後半に宣言した「新世界秩序」を阻む唯一の要因であったロシアの核抑止力を解除することが、米国の新しいミサイル防衛拡大の真の目的ではないかと、ロシア政府は疑っていたのである。

ロシアの極超音速兵器が再び登場

ソ連邦崩壊による地政学的・経済面での壊滅的な影響からまだ回復しておらず、1999年から2004年にかけて北大西洋条約機構(NATO)が東欧に何度か進出するのを注意深く見ていたロシア政府は、米国の友好とパートナーシップのレトリックの背後に漠然とした印象を抱いていた。その印象とは、米国は1991年以降、ロシアを敵対国とみなすビジョンを本当に諦めたわけではないというもの。
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プーチン大統領は2020年9月、米国のABM条約脱退は、ロシア政府に、冷戦末期にソ連が手探りで開発した最新兵器の開発を促す特異な瞬間であったと明らかにした。
プーチン大統領はその際、「米国の戦略ミサイル防衛システム配備により、わが国の核戦力は無力化され、時代遅れになるため、こうした兵器を作らなければならなかったのだ」と述べている。
ロシアは2018年、極超音速滑空体「アバンガルド」、航空弾道空対地ミサイル「キンジャール」、大陸間弾道ミサイル「サルマト」、原子力核自律魚雷「ポセイドン」など一連の新しい戦略兵器システムを発表した。これらの兵器は、仮に米国政府がミサイル・シールド(盾)の構築に成功しても、ロシアは米国の仮想的侵略に報復できるように設計されている。

米国が一方的に脱退したロシアとの条約とは?

近年に米国政府が一方的に脱退したロシア政府との安全保障条約は、ABM条約だけではない。米国は2018年、両国が1987年に調印した中距離核戦力(INF)全廃条約(射程500~5500キロメートルの地上発射型戦略ミサイルを配備することを禁止する条約)から離脱した。その後米国は2020年、1992年に領空開放(オープンスカイズ)条約を脱退した。この条約は、35カ国が専用機を使って互いの領土上空を軍事偵察飛行することを認めたもの。ロシア政府も2021年、この動きに追随せざるを得なくなった。
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そうして何が残ったのか?

2021年1月、米国のバイデン政権は、日米両国が運用可能な核弾頭数を1700~2200個に削減することを義務付けた軍縮条約「新戦略兵器削減条約(新START)」を延長することで合意した。前任のトランプ米政権はこの条約の期限(2021年2月)が失効するのを待つ意向を示し、中国の控えめな核兵器保有をあらゆる戦略条約に加えるよう要求していた。しかしバイデン政権は、新STARTを2026年2月まで延長することで合意した。
ABM条約、INF条約、オープンスカイズ条約が崩壊し、新STARTは今やロシアと米国の間において、最後の主要な安全保障条約となった。しかし、露米両政府がともに加盟している国際協定は他にも2つある。それは宇宙条約と化学兵器禁止条約だが、これらの条約の将来も米国の行動によって脅かされている。
12月7日、国連総会は宇宙空間における兵器配備に反対するロシアの決議を採択した。総会では、すべての加盟国、特に「宇宙開発能力」を持つ国に対し、「必要に応じて、宇宙空間に兵器を最初に設置する最初の国にならないことを政治的に支持する」ように求めた。
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2019年、トランプ政権は米軍に「宇宙軍」という新部門の創設を正式決定した。これは、米国政府が宇宙での軍事活動を抑制する計画を持っていないことを示唆している。
この宇宙軍や、その他の宇宙を軍事化に関する米国の取り組み(商業用の通信・監視衛星の大規模ネットワークの展開など)は、宇宙条約に違反している可能性がある。この条約は、1967年に米国を含む112カ国が署名した協定で、宇宙での大量破壊兵器の展開を禁止し、月やその他の天体の使用を平和目的に限定し、宇宙での軍事基地、兵器試験、軍事演習を禁止している。
そして、化学兵器禁止条約。これも露米両国が加盟する軍縮条約だが、この条約に対する米国政府のコミットメントには疑問符がつく。ロシアは化学兵器禁止機関の監視の下、2017年9月にソ連時代に製造された最後の化学兵器の廃棄を完了したが、米国は自国の化学兵器備蓄の廃棄期限を常に修正している。
米国は当初、2012年までに最後の化学兵器を廃棄すると表明していたが、現在は2023年後半までに廃棄すると約束している。米国は現在、約650トンの化学兵器と軍需品を保有する、世界最大の化学兵器備蓄国となっている。
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