IT・科学 - Sputnik 日本, 1920, 19.10.2021
IT・科学
SNSから最先端テクノロジーまで

軌道から外れた? 探査機が小惑星に衝突する米国のミッションの結果は?

© 写真 : Pixabay小惑星
小惑星 - Sputnik 日本, 1920, 09.03.2023
サイン
米宇宙航空局(NASA)の研究者らは、天体に宇宙探査機「DART」を衝突させて軌道を変更させるという「DARTミッション」の結果に関する論文を発表した。この探査機は標的の小惑星「ディモルフォス」に衝突し、同小惑星の軌道を変えることに成功した。専門家によると、この方法は、宇宙に存在する脅威から地球を守るための本格的なシステムの基礎になる可能性があるという。

小惑星に「投げ槍」を

NASAによると、現在、地球近傍の宇宙空間には、大きさが1キロメートルの小惑星が900個以上存在する。それらの惑星の中に、地球を脅かすような天体はないという。
大きさが140メートルから1000メートルまでの小規模な小惑星に関する研究はあまり行われていない。そして、最も控えめな推定では、我々の周辺には少なくとも2万5000個の小惑星が存在するという。こういった小惑星と地球との衝突は、2万年に一度の割合で起こる。衝突すれば、地球には1〜2キロメートルほどのクレーターができ、その際に発生する衝撃エネルギーで、数百万人もの人が住む都市を破壊することができるという。
6500万年前には、直径10キロほどの小惑星「チクシュルーブ衝突体」が地球に衝突する出来事があり、これによって恐竜は絶滅した。今日、同じ事態が繰り返されれば、人類文明は完全に終わりを迎える。
天文学者らは、潜在的に危険性がある小惑星を1万個以上検出している。その脅威を迅速に回避するために、研究者らは「運動衝突(キネティック・インパクト)技術」を提案した。この技術を用いた実験は2022年に行われ、その標的として選ばれた小惑星は、ディディムとディモルフォスからなる二重小惑星。ディモルフォスは直径160メートルほどの小さな小惑星で、780メートルほどの大きさの小惑星ディディモスを公転している。
ディモルフォスには2021年11月の段階ですでに、衝突させるためにDART探査機が差し向けられた。それから約1年後の2022年9月27日、探査機は直径160メートルの小惑星ディモルフォスに秒速6キロメートルのスピードで衝突。探査機は瞬時に破壊されたものの、小惑星の動きを鈍化させることに成功した。
研究者らは、この実験がどの程度成功したのか、また同様の技術が今後も使えるのかどうかを判断すべく数ヶ月の時間を掛けて検証を行った。その検証結果をまとめた5本の最終論文が、学術誌「ネイチャー」に掲載されている。
小惑星 - Sputnik 日本, 1920, 30.09.2022
IT・科学
史上初 小惑星の軌道を変えるため探査機が衝突

衝突で彗星のような「尾」が発生

ハッブル宇宙望遠鏡とジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡、複数の地上観測所、および衝突前に DART 探査機から分離された LICIACube 衛星による観測は、このミッションの衝突そのものと、ディモルフォスへの影響を調べる上で重要な情報源となった。
研究者らは、探査機がディモルフォスへの接近した際のスピードが秒速6.14キロメートルであることを突き止めた。衝突の際には、探査機のソーラーパネルの1つが同小惑星の表面に接触した。その数マイクロ秒後、探査機がディモルフォスに衝突して粉々に砕け散った。
研究者らは、総質量が430万トンにもなるディモルフォスと探査機が衝突した結果、この小惑星から少なくとも1000トンもの土壌が破壊されたと推定している。この土壌は宇宙空間に数万キロメートルにわたって伸びる「尾」を形成した。
最も興味深いのは、ディモルフォスから土壌が流れ出たのが一過性のものではなかったということだ。ほぼ2週間、この小惑星から土壌が出続けたという。研究者らは、こういった特徴は水分を含まない彗星に見られると指摘している。こういう彗星は乾燥し圧縮された物質からできているという。

ミッションは成功した?

全体として、研究者らはDARTミッションの結果は成功だったと評価している。
DART研究チームの代表であり、米メリーランド大学のデレク・リチャードソン教授(天文学)は、「我々はハリケーンや地震の発生を止めることはまだできない。しかし、十分な時間と資源があれば、小惑星との衝突を防げることがわかったのだ」とプレスリリースで述べている。
小惑星ディモルフォスの軌道パラメータは、予想以上に大きく変化した。衝突によってこの小惑星はディディムに接近した。当初はディモルフォスの軌道周期が10分ほど短くなると予測されていたが、最新の研究によると、軌道周期は11時間55分から11時間22分へと33分も短くなったことが分かった。
ディモルフォスが予想外に強い運動量を受け取ったもう1つの理由は、探査機がこの小惑星の中心部からわずか25メートルの位置で落下したこと。これは事実上、正面衝突といえるという。
イトカワ(小惑星) - Sputnik 日本, 1920, 01.02.2023
IT・科学
救えるのは核爆弾だけ 学界が小惑星からの防御手段を模索

探査機「ヘラ」のミッションは継続

天文学者らは、二重小惑星(ディディムとディモルフォス)が地上の望遠鏡から見えない位置にくるまで監視を続けるという。今後は、欧州宇宙機関が開発中の探査機「ヘラ」がこれらの小惑星の近くに送り込まれる予定だ。
ヘラは2024年10月に打ち上げられ、2026年末にこの2つの小惑星に到達することが予定されている。このミッションの目的は、DART探査機との衝突によって生じたクレーターの大きさを推定するとともに、これらの小惑星の質量、内部構造、物理的特性に関するより多くの情報を得るというもの。
これらの情報をもとに、研究者らはまず、DART探査機がディモルフォスに与えた運動量を正確に計算できるという。さらには、ディモルフォスの密度、多孔質、表面特性、および内部構造を考慮して、衝突の有効性を評価することができるという。これらのすべての事柄は、今後行われるミッションを計画し、地球防衛対策として地球近傍の天体の軌道を変更させる可能性を確認するために必要な要素だという。
関連ニュース
ロシアの研究者ら 宇宙帆船を「舵」に変身させる技術を開発
地球に落下した最も有名な隕石7選
ニュース一覧
0
コメント投稿には、
ログインまたは新規登録が必要です
loader
チャットで返信
Заголовок открываемого материала