https://sputniknews.jp/20230323/15402996.html
【解説】岸田首相のウクライナ訪問 なぜ今の時期に? その評価は?
【解説】岸田首相のウクライナ訪問 なぜ今の時期に? その評価は?
Sputnik 日本
3月21日の日本時間の午前、岸田文雄首相がウクライナの首都キエフ(キーウ)に向かっていることが分かった。その後岸田氏はウクライナに無事到着。同氏は、特別軍事作戦中に日本の首相として初めてウクライナを訪問した人物となった。また、先進主要7カ国(G7)の首脳で現地入りしたのは岸田氏が最後だった。 2023年3月23日, Sputnik 日本
2023-03-23T05:20+0900
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2023-03-23T07:18+0900
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政治
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両首脳は何に合意し、なぜ岸田氏はウクライナに行き、その訪問について日本国内でどのような反応を受けたのか。スプートニクがお伝えする。21日午前、岸田氏が訪問先のインドからチャーター便でポーランドに向かったことが分かった。この渡航は事前に発表されておらず、訪問の詳細も明らかにされていなかったため、岸田氏がキエフ行きの列車に乗り込む様子を捉えたメディアの映像に誰もが驚いた。しかし、日本国民は自国のテレビ局が即座に報道する姿勢を高く評価しなかった。21日午前、岸田氏が訪問先のインドからチャーター便でポーランドに向かったことが分かった。この渡航は事前に発表されておらず、訪問の詳細も明らかにされていなかったため、岸田氏がキエフ行きの列車に乗り込む様子を捉えたメディアの映像に誰もが驚いた。岸田氏の訪問に関する報道は本人の安全を脅かすものであり、セキュリティサービスが訪問に関する情報をリークし、メディアがこのリークを広めたと非難した。その後、松野博一内閣官房長官は、岸田氏の訪問は急遽計画されたものであり、ウクライナ訪問中の岸田氏の警備については、ウクライナ政府が全面的に責任を負って実施したと説明した。ゼレンスキー大統領と合意した内容は日本とウクライナの両首脳は会談後の共同声明で、両国の関係を「特別なグローバル・パートナーシップ」に格上げすることに合意したと明らかにした。岸田氏は会談後、ウクライナのゼレンスキー大統領との共同記者会見で、ゼレンスキー氏をG7サミットにオンライン形式で参加するよう招待したと明らかにした。そして、ゼレンスキー氏はこの招待に同意している。日本は今年のG7の議長国であり、5月には広島でG7サミットが開催される予定。また、岸田氏は、北大西洋条約機構(NATO)の信託基金を通じてウクライナに殺傷能力のない装備品3000万ドル(約40億円)分を拠出し、ウクライナのエネルギー分野に4億7000万ドル(約623億円)の無償支援を行う方針を明らかにした。武器は提供せず日本はウクライナを外交面および経済面で支援してきたが、他のG7各国とは異なり、殺傷力能力がある武器は供与していない。日本はこれまで武器の供給を控えてきた。しかし、日本の陸上自衛隊は以前、2029年度までに利用をやめる多連装ロケットシステム(MLRS)をウクライナに提供するよう提案している。日本国憲法では、日本は戦闘機、戦車、ミサイルなどの殺傷力のある兵器を、日本と共同開発を行っている国にのみ譲渡できると記されている。 岸田首相と自民党の支持者は、この制限を外すことを望んでいる。岸田氏は、ウクライナ政府に日本の MLRSを譲渡することを提案した浜田靖一防衛相から強く支持されている。また、自民党の佐藤正久議員は、台湾で軍事衝突が起きた場合、日本自体が他国に武器の供給を求めなければならない可能性があるとの考えを示している。武器を必要としている他国に武器を提供しなければ、自国のために武器を求めることはできないと佐藤氏は強調している。岸田氏が得たかったものは何か?岸田氏が今ウクライナを訪問したのはなぜなのか。モスクワ国際関係大学東洋学部長で政治学者のドミトリー・ストレリツォフ氏によれば、その理由は単純なもので、岸田氏は自分の評価を維持するために、あらゆる手段でポイントを稼ぐことを余儀なくされているからだという。その一つが、「国際舞台での訪問や会談を通じて、外交政策という舞台における自分のイメージを正すこと」である。岸田氏は有権者に対して、欧米との連帯が不可欠であることをアピールしている。まるで、ウクライナ紛争は中国との対立のプロローグであるという考えを吹き込んでいるかのようだ。ストレリツォフ氏は、「つまり、日本政府がウクライナを支援しないのであれば、東アジアの状況が悪化したときに、欧米の同盟国は日本に『救いの手』を差し伸べることはないだろうということです」とスプートニクに対して語っている。さらに言えば、岸田氏のキエフ訪問は、習近平のモスクワ訪問と時期が重なることで、岸田氏のイメージは西側諸国で向上するだろう。モスクワ国際関係大学の外交学部教授で元駐日ロシア大使のアレクサンドル・パノフ氏は、スプートニクに対し、岸田氏の今回のウクライナ訪問の主な理由は、今年G7の議長国を務める日本の重要な役割を示すとともに、「日本がウクライナ危機の解決において西側の信頼できる同盟国であると示すため」であると指摘している。現在、日本政府の外交政策全体は、広島で今後開催されるG7サミットの準備に集中している。そして、日本はG7の中で唯一、首脳がまだウクライナを訪問していない国であった。そのため、イメージギャップを埋めようとする試みは、非常に理に適っている。また、国際舞台で日本の地位を高めるチャンスを逃すまいと、結束された欧米諸国と歩調を合わせようとする岸田氏の願望は理解できる。岸田氏がキエフに赴くことで、「重要なプレーヤー」としての日本の発言力が、世界の危機に関する議論において十分な重みを保っていることを示し、また日本が西側諸国に対して独自の忠誠心を明確に示した。しかし、その忠誠心は、旧来の日露関係、特に経済分野への打撃になるのではないのだろうか。露日関係はこれからどうなる?松野官房長官は、岸田氏のウクライナ訪問について、「ロシアの今後の対日政策」への影響についてはコメントを控えるとした上で、日本の対露政策の方針に「変更はない」と述べた。松野氏はまた、現在の日本にとって最も優先すべき作業分野は、ロシア連邦とのビザなしの交流の再開と、漁業に関連する問題の解決であると強調した。ロシア領クリル諸島地域のロシア経済圏での漁業は日本にとって非常に重要であり、実際のところ、日本の漁師自身にとって「死活問題」になっている。日本は現段階ではロシアのエネルギー資源を手放すつもりはなく、ガスや石油を積極的に購入している。特に、サハリン2プロジェクトは日本にはLNG輸出総量の9%に与えている。日本政府は再三にわたって、サハリン2が適切な価格によるガスの安定供給のために重要である点を強調している。「内閣総辞職!」原口一博元総務相は21日、岸田氏のウクライナ訪問について、「無事に帰ってきてほしいが帰ってきたら(内閣)総辞職してほしい」と、かなり厳しい意見をツイッターに投稿した。また、鳩山由紀夫元首相は岸田氏がウクライナを訪問した21日に、「単にウクライナを支援しますではなく、戦争終結の和平提案を出すべき時だ」とツイートしている。
https://sputniknews.jp/20230321/15367021.html
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ウクライナ, 岸田文雄, ウォロディミル・ゼレンスキー, 政治
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【解説】岸田首相のウクライナ訪問 なぜ今の時期に? その評価は?
2023年3月23日, 05:20 (更新: 2023年3月23日, 07:18) 3月21日の日本時間の午前、岸田文雄首相がウクライナの首都キエフ(キーウ)に向かっていることが分かった。その後岸田氏はウクライナに無事到着。同氏は、特別軍事作戦中に日本の首相として初めてウクライナを訪問した人物となった。また、先進主要7カ国(G7)の首脳で現地入りしたのは岸田氏が最後だった。
両首脳は何に合意し、なぜ岸田氏はウクライナに行き、その訪問について日本国内でどのような反応を受けたのか。スプートニクがお伝えする。
21日午前、岸田氏が訪問先のインドからチャーター便でポーランドに向かったことが分かった。この渡航は事前に発表されておらず、訪問の詳細も明らかにされていなかったため、岸田氏がキエフ行きの列車に乗り込む様子を捉えたメディアの映像に誰もが驚いた。
しかし、日本国民は自国のテレビ局が即座に報道する姿勢を高く評価しなかった。21日午前、岸田氏が訪問先のインドからチャーター便でポーランドに向かったことが分かった。この渡航は事前に発表されておらず、訪問の詳細も明らかにされていなかったため、岸田氏がキエフ行きの列車に乗り込む様子を捉えたメディアの映像に誰もが驚いた。
岸田氏の訪問に関する報道は本人の安全を脅かすものであり、セキュリティサービスが訪問に関する情報をリークし、メディアがこのリークを広めたと非難した。
その後、松野博一内閣官房長官は、岸田氏の訪問は急遽計画されたものであり、ウクライナ訪問中の岸田氏の警備については、ウクライナ政府が全面的に責任を負って実施したと説明した。
日本とウクライナの両首脳は会談後の共同声明で、両国の関係を「特別なグローバル・パートナーシップ」に格上げすることに合意したと明らかにした。
岸田氏は会談後、ウクライナのゼレンスキー大統領との共同記者会見で、ゼレンスキー氏をG7サミットにオンライン形式で参加するよう招待したと明らかにした。そして、ゼレンスキー氏はこの招待に同意している。日本は今年のG7の議長国であり、5月には広島でG7サミットが開催される予定。
また、岸田氏は、北大西洋条約機構(NATO)の信託基金を通じてウクライナに殺傷能力のない装備品3000万ドル(約40億円)分を拠出し、ウクライナのエネルギー分野に4億7000万ドル(約623億円)の無償支援を行う方針を明らかにした。
日本はウクライナを外交面および経済面で支援してきたが、他のG7各国とは異なり、殺傷力能力がある武器は供与していない。
日本はこれまで武器の供給を控えてきた。しかし、日本の陸上自衛隊は以前、2029年度までに利用をやめる
多連装ロケットシステム(MLRS)をウクライナに提供するよう提案している。
日本国憲法では、日本は戦闘機、戦車、ミサイルなどの殺傷力のある兵器を、日本と共同開発を行っている国にのみ譲渡できると記されている。 岸田首相と自民党の支持者は、この制限を外すことを望んでいる。
岸田氏は、ウクライナ政府に日本の MLRSを譲渡することを提案した浜田靖一防衛相から強く支持されている。また、自民党の佐藤正久議員は、台湾で軍事衝突が起きた場合、日本自体が他国に武器の供給を求めなければならない可能性があるとの考えを示している。武器を必要としている他国に武器を提供しなければ、自国のために武器を求めることはできないと佐藤氏は強調している。
岸田氏が今ウクライナを訪問したのはなぜなのか。モスクワ国際関係大学東洋学部長で政治学者の
ドミトリー・ストレリツォフ氏によれば、その理由は単純なもので、岸田氏は自分の評価を維持するために、あらゆる手段でポイントを稼ぐことを余儀なくされているからだという。その一つが、「国際舞台での訪問や会談を通じて、外交政策という舞台における自分のイメージを正すこと」である。
岸田氏は有権者に対して、欧米との連帯が不可欠であることをアピールしている。まるで、ウクライナ紛争は中国との対立のプロローグであるという考えを吹き込んでいるかのようだ。
ストレリツォフ氏は、「つまり、日本政府がウクライナを支援しないのであれば、東アジアの状況が悪化したときに、欧米の同盟国は日本に『救いの手』を差し伸べることはないだろうということです」とスプートニクに対して語っている。
さらに言えば、岸田氏のキエフ訪問は、習近平のモスクワ訪問と時期が重なることで、岸田氏のイメージは西側諸国で向上するだろう。
モスクワ国際関係大学の外交学部教授で元駐日ロシア大使の
アレクサンドル・パノフ氏は、スプートニクに対し、岸田氏の今回のウクライナ訪問の主な理由は、今年G7の議長国を務める日本の重要な役割を示すとともに、「日本がウクライナ危機の解決において西側の信頼できる同盟国であると示すため」であると指摘している。
現在、日本政府の外交政策全体は、広島で今後開催されるG7サミットの準備に集中している。そして、日本はG7の中で唯一、首脳がまだウクライナを訪問していない国であった。そのため、イメージギャップを埋めようとする試みは、非常に理に適っている。
また、国際舞台で日本の地位を高めるチャンスを逃すまいと、結束された欧米諸国と歩調を合わせようとする岸田氏の願望は理解できる。岸田氏がキエフに赴くことで、「重要なプレーヤー」としての日本の発言力が、世界の危機に関する議論において十分な重みを保っていることを示し、また日本が西側諸国に対して独自の忠誠心を明確に示した。
しかし、その忠誠心は、旧来の日露関係、特に経済分野への打撃になるのではないのだろうか。
松野官房長官は、岸田氏のウクライナ訪問について、「ロシアの今後の対日政策」への影響についてはコメントを控えるとした上で、日本の対露政策の方針に「変更はない」と述べた。松野氏はまた、現在の日本にとって最も優先すべき作業分野は、ロシア連邦とのビザなしの交流の再開と、漁業に関連する問題の解決であると強調した。ロシア領クリル諸島地域のロシア経済圏での漁業は日本にとって非常に重要であり、実際のところ、日本の漁師自身にとって
「死活問題」になっている。
日本は現段階ではロシアのエネルギー資源を手放すつもりはなく、ガスや石油を積極的に購入している。特に、サハリン2プロジェクトは日本にはLNG輸出総量の9%に与えている。日本政府は再三にわたって、サハリン2が適切な価格によるガスの安定供給のために重要である点を強調している。
原口一博元総務相は21日、岸田氏のウクライナ訪問について、「無事に帰ってきてほしいが帰ってきたら(内閣)総辞職してほしい」と、かなり厳しい意見をツイッターに投稿した。
また、
鳩山由紀夫元首相は岸田氏がウクライナを訪問した21日に、「単にウクライナを支援しますではなく、戦争終結の和平提案を出すべき時だ」とツイートしている。