https://sputniknews.jp/20230409/nato-15609724.html
【視点】日本は自らの脆弱性ゆえ、NATOとの緊密な協力を望んでいるのか 林外相が寄稿した論文の主旨
【視点】日本は自らの脆弱性ゆえ、NATOとの緊密な協力を望んでいるのか 林外相が寄稿した論文の主旨
Sputnik 日本
... 2023年4月9日, Sputnik 日本
2023-04-09T06:59+0900
2023-04-09T06:59+0900
2023-04-10T17:01+0900
軍事
nato
政治
https://cdn1.img.sputniknews.jp/img/07e7/04/02/15534394_0:0:3072:1728_1920x0_80_0_0_37b0f6dda6590245923d81616c8a7ae1.jpg
林外相は、現在の国際情勢について、第二次世界大戦終戦後もっとも厳しいものであるとした上で、日本とNATOが現在、国別適合パートナーシップ計画を策定中であることを明らかにした。日本は、このプログラムで、サイバーセキュリティ、宇宙空間、きわめて重要な新技術などの領域におけるNATOとの協力を大幅に強化する方針である。また林外相は、日本とNATOはウクライナ支援をめぐって、新たな協力の章を開いたとも指摘した。とりわけ日本は、ウクライナに殺傷能力のない装備品を供与するためのNATOの「包括的支援パッケージ」(CAP)信託基金に3000万ドル(約39億円)を拠出する意向で、日本のウクライナ支援の総額は76億ドルとなった。ウクライナ情勢と並んで、林外相は、2022年のNATOの外相会談で、世界の安全保障分野における現在の条件は、欧州の安全とインド太平洋地域の安全を個別に論じることは不可能であるという問題を提起したことをあらためて指摘した。また林外相は、東シナ海、南シナ海で、武力を用いた一方的な現状変更の試みが続いており、また日本周辺でも、北朝鮮側からの度重なるミサイル発射を含め、軍事活動が活発化している点について言及し、NATOに対し、インド太平洋地域でより積極的な活動を行うよう要請した。これに関連し、軍事政治学者連盟の専門家、アンドレイ・コーシキン氏は、日本の外相によるこうした発案は、実際には米国から提示されたものだと指摘している。一方、サンクトペテルブルク大学東洋学部のエヴゲーニー・オスマノフ助教授は、日本が自国の外交政策を行ったり、何らかの決定を下すのに、独自の判断を下せないわけはないと指摘している。オスマノフ氏は、日本はG7の議長国として、何より国際舞台において、大きな役割を果たそうとしているが、同時に、日本はこれまでにないほど、自国の脆弱性を感じているとも指摘する。一方、サイバーセキュリティ、宇宙空間、きわめて重要な技術、偽情報対策といった新たな領域におけるNATOとの協力をめぐる林外相の提案について、オスマノフ氏はこれは時代の要求だと指摘している。
https://sputniknews.jp/20230405/15563659.html
https://sputniknews.jp/20230407/nato-15587016.html
Sputnik 日本
feedback.jp@sputniknews.com
+74956456601
MIA „Rossiya Segodnya“
2023
リュドミラ サーキャン
https://cdn1.img.sputniknews.jp/img/703/83/7038378_953:0:2632:1679_100x100_80_0_0_8a2ee1c7f6dd37e7d7ee904ebebe8914.jpg
リュドミラ サーキャン
https://cdn1.img.sputniknews.jp/img/703/83/7038378_953:0:2632:1679_100x100_80_0_0_8a2ee1c7f6dd37e7d7ee904ebebe8914.jpg
ニュース
jp_JP
Sputnik 日本
feedback.jp@sputniknews.com
+74956456601
MIA „Rossiya Segodnya“
https://cdn1.img.sputniknews.jp/img/07e7/04/02/15534394_0:0:2732:2048_1920x0_80_0_0_3f3711b60ef57734024baf43a895cc72.jpgSputnik 日本
feedback.jp@sputniknews.com
+74956456601
MIA „Rossiya Segodnya“
リュドミラ サーキャン
https://cdn1.img.sputniknews.jp/img/703/83/7038378_953:0:2632:1679_100x100_80_0_0_8a2ee1c7f6dd37e7d7ee904ebebe8914.jpg
軍事, nato, 政治
【視点】日本は自らの脆弱性ゆえ、NATOとの緊密な協力を望んでいるのか 林外相が寄稿した論文の主旨
2023年4月9日, 06:59 (更新: 2023年4月10日, 17:01) 日本は従来の協力分野に加え、新たな分野でのNATO(北大西洋条約機構)との協力拡大を目指している。これは、世界の安全保障分野における現在の複雑かつ厳しい情勢によるものである。NATO加盟国と日本を含むその同盟国は、ウクライナ支援での連帯を維持しなければならず、また同時にロシアに対する厳しい制裁措置を発動している。一方、日本政府は、インド太平洋地域におけるNATOへのより積極的な参加を求めている。なぜなら欧州の安全保障とインド太平洋地域の安全保障は切っても切り離せないものだからである。日本の林芳正外相は、米政治メディア「ポリティコ」に寄稿した論文の中でこのような見解を明らかにした。
林外相は、現在の
国際情勢について、第二次世界大戦終戦後もっとも厳しいものであるとした上で、日本とNATOが現在、国別適合パートナーシップ計画を策定中であることを明らかにした。日本は、このプログラムで、サイバーセキュリティ、宇宙空間、きわめて重要な新技術などの領域におけるNATOとの協力を大幅に強化する方針である。また林外相は、日本とNATOはウクライナ支援をめぐって、新たな協力の章を開いたとも指摘した。
とりわけ日本は、ウクライナに殺傷能力のない装備品を供与するためのNATOの「包括的支援パッケージ」(CAP)信託基金に3000万ドル(約39億円)を拠出する意向で、日本のウクライナ支援の総額は76億ドルとなった。
ウクライナ情勢と並んで、林外相は、2022年のNATOの外相会談で、世界の安全保障分野における現在の条件は、欧州の安全とインド太平洋地域の安全を個別に論じることは不可能であるという問題を提起したことをあらためて指摘した。
また林外相は、東シナ海、南シナ海で、武力を用いた一方的な現状変更の試みが続いており、また日本周辺でも、北朝鮮側からの度重なるミサイル発射を含め、軍事活動が活発化している点について言及し、NATOに対し、インド太平洋地域でより積極的な活動を行うよう要請した。
これに関連し、軍事政治学者連盟の専門家、アンドレイ・コーシキン氏は、日本の外相によるこうした発案は、実際には米国から提示されたものだと指摘している。
「2022年の夏にマドリードで開かれた首脳会議で、NATOは地域の組織から世界的な組織へと移行しました。米国は、NATOの活動を太平洋地域をも網羅させようとしています。次のサミットに、日本、韓国、豪州、ニュージーランドの首脳が招かれていることにも大きな意味があるのです。米国の直接指導により、ANZUS、クアッド、ファイブ・アイズ、オーカスなどといった、中国に対抗するための「多層仕立てのパイ」構造が作られています。米国は、ウクライナ紛争においてロシアに対して用いたやり方を、今度は中国にも適用しようとしています。事実上、これはアジア版NATOの創設を意味しています。日本が、新たな国家安全保障戦略で、中国を『これまでにない最大の戦略的な挑戦』と明記したことを考慮すれば、米国が日本をこの方向に仕向けているとは言えないまでも、日本を全面的に支援しています。今年、日本政府は外交分野において特に積極性を発揮しています。というのも、日本はG7の議長国だからです。しかし、日本の議長国という立場は、事実上、米国の戦略的課題を実現するために機能しています。その課題とは、韓国、豪州、ニュージーランドなど、米国に忠誠を誓う国々の助力を借りて、中国を孤立させ、ロシアを抑止するというものです」
一方、サンクトペテルブルク大学東洋学部のエヴゲーニー・オスマノフ助教授は、日本が自国の外交政策を行ったり、何らかの決定を下すのに、独自の判断を下せないわけはないと指摘している。
オスマノフ氏は、日本はG7の議長国として、何より国際舞台において、大きな役割を果たそうとしているが、同時に、日本はこれまでにないほど、自国の脆弱性を感じているとも指摘する。
「北朝鮮の核開発については、これまでも日本政府の中で話し合われてきましたが、それがこれほどまでに危険で深刻なものだとは考えられていませんでした。しかし、今、増加するミサイル発射や向上するミサイル技術、金正恩氏の発言が日本に深刻な懸念を与えています。そして、日本は中国についても危惧しています。それは中国そのものというよりも、台湾をめぐる情勢が悪化した場合についてです。中国は、台湾を武力で制圧するというシナリオを否定し、平和的な解決を望んでいるとしていますが、中国が軍事演習を活発化したり、中国の艦艇が日本の海域を侵犯するなどといった行動に、日本は当然、無関心ではいられません。もちろん、日本の政治は100%、米国に左右されるわけではありません。
しかし、安全保障条約に従い、日本は自国の安全保障コンセプトと合致した行動をとることになります。そして、日本が現在とっている行動は、米国に指示されたものではなく、日本の戦略の範囲内のものです。しかも、それらの行動は、日本社会の要求にも合致しています。思い出したいのは、1960年代、米国の立場を強化するような日本政府のあらゆる行動に対し、日本では大々的な抗議の声が上がっていたということです。しかし、今、日本の世論もこの方向において政府を支持しています。なぜなら、国民は、それが国益に適うものだと考えているからです」
一方、サイバーセキュリティ、宇宙空間、きわめて重要な技術、偽情報対策といった新たな領域におけるNATOとの協力をめぐる林外相の提案について、オスマノフ氏はこれは時代の要求だと指摘している。
「現代の戦争はもはや20世紀の戦争ではありません。テクノロジーはかなり進化し、それなしにどんな大国も存在することはできません。サイバーセキュリティは、現在、これまでにないほど重要です。サーバーへのハッキング攻撃、サイバー攻撃などの行為はインフラに多大な影響を及ぼします。宇宙空間も、今、現実的な軍事紛争において決定的な役割を果たすものの一つです。衛星を使ったミサイルの正確な誘導、諜報活動、通信、すべてです。そして、どちらがどれだけこうした技術を用いるかということが、多くの点で、戦争の行方を決定づけるのです」