【視点】極超音速兵器をめぐる開発競争に日本を引き込む米国

© AP Photo / Pool/Franck Robichon日本の浜田靖一防衛大臣、東京で米国のロイド・オースティン国防長官と会談
日本の浜田靖一防衛大臣、東京で米国のロイド・オースティン国防長官と会談 - Sputnik 日本, 1920, 02.06.2023
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日本の浜田靖一防衛大臣は、東京で米国のロイド・オースティン国防長官と会談を実施した。そしてこの会談の結果として、日本と米国が共同で極超音速兵器迎撃システムを共同開発する可能性について検討することが明らかになった。米国はどのような目的で、こうした兵器の開発に日本を引き込んでいるのか。そしてなぜ、極超音速兵器の迎撃という課題が今、米国にとって重要なものになっているのか、「スプートニク」が取材した。

どのミサイルも命中せず

軍事問題の専門家、ウラジーミル・エフセーエフ氏は、米国は自国の兵器がウクライナで「屈辱的な大敗」を喫しているため、この課題の遂行を急いでいると指摘する。
「ロシアはキエフ近郊で、米国のミサイル迎撃システム、パトリオットを破壊しました。パトリオットには複数の発射装置があるのですが、それでも、ロシアの極超音速空対地ミサイル、キンジャールの攻撃に対し、効果的に対抗することができませんでした。パトリオットは、一つでもロシアのキンジャールに『引っ掛かけよう』と、一気に32発のフガス破片榴弾を斉射しましたが、失敗に終わりました。結果的に2つの発射装置が破壊され、2つは損傷を受け、レーダー装置は機能しなくなりました。なんとか戦況を立て直し、状況を改善しようと、オデッサ近郊からキエフに新たなパトリオットが緊急派遣されました。しかし、その結果、のちに行われた攻撃でも、もう一つの発射装置が損傷を受けています」
「武装解除を目的としたこれみよがしのパトリオットへの攻撃が行われたあと、米国はロシアのキンジャールのような極超音速兵器に対抗できる効果的な手段を必死で模索しているのです。というのも、ロシアはすでに極超音速兵器を複数持っているからです。キンジャールは空対地ミサイル(最大速度マッハ10)、そしてもう一つのアヴァンガルドは長射程の戦略兵器(最大速度マッハ20)です。米国はロシアの兵器と同様のものを開発しようとしていますが、今のところ、うまくいっていません。そこで、極超音速兵器の迎撃手段を模索するために日本の協力が必要なのです」
とはいえ、日本が協力を行ったとしても、米国が短期間で成功を収めることは困難である。それは、ロシアも同じ課題を積極的に推し進めているからである。
日米防衛相会談 - Sputnik 日本, 1920, 01.06.2023
日米 極超音速兵器迎撃システムの共同開発を確認

迎撃ミサイル:速さに追いつけても、機動性がなければうまくいかない

この開発における問題の一つは、負荷が限定されている点である。エフセーエフ氏によれば、つまり、ミサイルの機動時に負荷がかかることだという。

「もしミサイルが高速で大きく機動すれば(たとえば曲がるなど)、負荷がかかります。そうすると少しずつ破損し、落下する可能性があります。そこで、日本は現在、他でもない機動時の負荷をより安定したものにできるミサイルの開発を進めています。というのも、弾道ミサイルが定められた弾道軌道に沿って飛翔すれば、かなりの機動性があるからです。つまり、極超音速兵器を迎撃するには、同様の性能を持つ迎撃ミサイルが必要となり、それをうまく機動させることが求められるわけです。しかし、極超音速の目標物を高速度で迎撃するミサイルとその機動性を操るというのは技術的に非常に難しい課題です。そこで米国と日本がこれを早期に開発できる可能性は少ないでしょう。なぜなら、こうした性能を持つミサイルの開発には何年にもわたる研究と、実験が必要だからです」

ちなみに、米国は極超音速兵器そのものも開発できずに、これに効果的に対抗しようとしている。

一歩先をいく中国

一方、中国はすでに極超音速兵器の開発でかなりの成果を上げているとエフセーエフ氏は指摘する。

「こうした事実を見ても、日本は極超音速兵器迎撃システムの開発には大きな関心を持っています。何より、それは中国の極超音速兵器を迎撃することへの関心であり、こうした日本の考えは米国と一致しています。というのも、極超音速ミサイルは超高速で飛翔しますが、速度があることで、射程はかなり減少するのです。

そこで日本はもし極超音速ミサイル攻撃が行われた場合、日本がまずその対象となることを認識しています。もちろん、日本国内の米軍基地もその範囲に含まれます。ですから、米国と日本は現在、ウクライナ問題と同じくらい、中国の極超音速兵器との戦いについて懸念しています」

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米国の最新兵器が絶対的だというイメージ

エフセーエフ氏はさらに、パトリオットがウクライナで破壊されたことで、米国の兵器に対するイメージが悪くなったと述べている。

「米国の最新兵器に対する深刻な不信が生じています。最初に撃墜されたのが対戦車ミサイル、ジャベリンです。それは、米国が豪語していたほどの効果はないことが判明したのです。その後、ロシアはわずか半年で、米国の高機動ロケット砲システム、ハイマースに対処することができるようになりました。このハイマースは最高の兵器だとされ、ウクライナも大きな期待をかけていたものです。しかし、ハイマースには電子戦の方法で対処できることが判明しました。ハイマースのミサイルは5キロずれると効果が少なくなるということも事実として明らかになりました。

そして5月に入ってからはパトリオットの評判も下がっています。とはいえ、パトリオットは2019年にも、サウジアラビアの石油インフラへの攻撃に失敗しています。しかし当時、米国はその事実を「隠蔽」することができました。ですが、ウクライナでロシアのキンジャールを相手に負けを喫したことを隠すことはもはやできません。それでも、米国はパトリオットは損傷はわずかなもので、すぐに復活したかのように見せかけようとしています。いずれにせよ、米国の兵器に対する信用は明らかに失墜しています。しかも最新兵器に対する信用すらなくなりつつあります。当然、米国が兵器を売却している国々は購入する意味があるのかどうか考え直すようになるかもしれません」

そしてこれは中東だけではなく、欧州の同盟国にも言えることである。たとえばポーランドやリトアニアは、ハイマースの能力の高さに期待し、数百基の調達を予定している。しかし、これらの国々は、今やパトリオットもハイマースも、完全な兵器だという確信は持てなくなることだろう。
そこでエフセーエフ氏は、米国の兵器への信頼失墜により、今後、販売市場が縮小される可能性があると予測する。
一方、日本からウクライナへの武器支援について、米国のオースティン国防長官は東京で浜田防衛大臣と共に開いた共同記者会見で、これに関する決定は全面的に日本政府に委ねられていると述べている。日本政府がこれを決断すれば、廃棄予定の多連装ロケット砲がウクライナに供与されることになる。
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