【ルポ】チャイコフスキー国際コンクール、アジア勢健闘 日本人審査員に聞くピアノ部門の舞台裏

© 写真 : The International Tchaikovsky Competitionチャイコフスキー国際コンクール
チャイコフスキー国際コンクール - Sputnik 日本, 1920, 07.07.2023
サイン
2日、第17回チャイコフスキー国際コンクールが閉幕した。ロシア、中国からの参加が多くを占める中、韓国勢がバイオリンとチェロ、声楽(男性)の3部門で優勝するなど大健闘した。日本からはピアノ部門に2人、バイオリン部門に5人が参加した。4年に1度開かれる同コンクールは世界で最も権威のある音楽コンクールの一つであると同時に、モスクワ市民が楽しみにしている伝統イベントでもある。ピアノ部門の審査員、小林秀子さんに話を聞きながら、コンクールを振り返ってみたい。
常葉大学短期大学部の教授としてピアノを指導する小林さん。実は審査員のオファーが来たときに、最後まで迷い、恩師、諸先輩などに相談し、熟考した上で、「音楽とは、人と人とをつなげるもの。分かつものではない」と決断した。また、幼少時にモスクワに住み、音楽学校に通っていたという経験は、小林さんにとって大事な人生の一部だ。

「小学生の時、トロリーバスで、音楽学校に通っていました。そこで、いつも私の家の方まで送ってくれる女の子がいました。私を送るとその子にとっては遠回りになるのですが、私が外国人だから心配してくれていたのだろうと思います。そういう優しい友達がいたことをよく覚えています。人との交流、ロシアの自然、ロシアの文化は、何年経っても、自分の大切なバックグラウンドの一部分として残っています。この年齢になって、ロシア文化、ひとびとから与えられたものの大きさを感じています」

小林秀子さん
小林さんは高校生のとき、コンクール(1978年)の全期間を観客として会場でピアノを聴いていたこともある。聴衆がこの大イベントを待っているという独特の雰囲気は、チャイコフスキーコンクールにしかないものだ。ある音楽ファンはその醍醐味を「会場が文字通り一つになる、魔法のような瞬間が訪れるんです。聴いていくうちにすごく感動する演奏というのがあって、思わず、隣の人と顔を見合わせたりします」と語る。
© 写真 : The International Tchaikovsky Competition審査にのぞむ小林秀子さん
審査にのぞむ小林秀子さん - Sputnik 日本, 1920, 07.07.2023
審査にのぞむ小林秀子さん
コンクールの華であるピアノ部門で優勝したのは、セルゲイ・ダヴィドチェンコさん。ロストフ音楽院在学中の18歳で、決戦出場者の中では最も若手だった。毎回、上位入賞者は甲乙つけがたい演奏をするため、熱心な聴衆の意見は分かれ、大いに異論も出る。実際、今回は2位に3人も入賞し、5位~8位は該当者なしで、ハイレベルな戦いだったことがわかる。コンクールは10日間ほどの間に集中的に行われ、一人の審査に少なくとも50分はかかる。小林さんは審査を終えて「熱演が繰り広げられ素晴らしかった。ただ体力的にはとても大変」と振り返った。

「ピアノの審査員の方々は、『同じ耳を持っている方たち』でした。評価はほとんど割れることなく順位が決まりました。ロシアで勉強し、ピアノの基礎を学んだ人が多かったからかもしれません。審査では、細かい楽譜の読み方もさることながら、天賦の才能や感性、将来性に注目します」

小林秀子さん
パリでレナ・シェレシェフスカヤ氏に師事する田所マルセルさん(日本・フランス)は、セミファイナルまで進んだ。ロシア新聞の文化記者は田所さんを「非常に生き生きとした粘り強い感情表現」「ベートーヴェンのソナタ第16番での意図的な芸術性は、傑出した解釈者の証」「最も複雑なエチュードを選んだことは、田所氏の勇気と自信の表れであり、演奏が証明したように、それは実に正当なものであった。彼が決戦に進めなかったことだけが、聴衆にとって残念だった」と評価した。
© 写真 : The International Tchaikovsky Competitionセミファイナリスト・田所マルセルさん
セミファイナリスト・田所マルセルさん - Sputnik 日本, 1920, 07.07.2023
セミファイナリスト・田所マルセルさん
もう一人の日本人、黒岩航紀さんもセミファイナルまで進み、観客席から大喝采を浴びた。特にセミファイナルの選曲は「オールロシア」で、くるみ割り人形を聴いた聴衆は感動に包まれた。黒岩さんは、その演奏の完成ぶりをかわれ、コンクールと並行してサンクトペテルブルクで開催中だった芸術フェスティバル「白夜のスターたち」に招待され、演奏を披露した。このイベントには、バイオリン部門に出場した今川こころさんも参加した。
© 写真 : The International Tchaikovsky Competitionセミファイナリスト・黒岩航紀さん
セミファイナリスト・黒岩航紀さん - Sputnik 日本, 1920, 07.07.2023
セミファイナリスト・黒岩航紀さん
オンライン中継は世界の102か国で5000万回以上再生された。入賞者のガラ・コンサートを聴きに行った日本人男性は、「心に残ったのはやはり、ピアノの優勝者です。これまで連日、コンクールに出続けてきて、最後の最後でプロコフィエフの協奏曲を全曲弾くなんて体力的にも恐ろしいです。しかもそれを素晴らしい出来栄えでやるというのは、実力的に何歩も抜けているんだなと肌で感じました。これからの彼の活躍に期待しています」と話してくれた。
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