「ウクライナ軍の精密攻撃により、ヘルソン州の居住区(行政単位)やエネルゴダル市で3基のロシア側の砲撃システムを破壊した」
ウクライナ軍参謀本部は、公式SNS上でこのように発表した。国際原子力機関(IAEA)の査察に伴い、ロシア軍が原発から軍事車両など約100台を隣接する工場「アトム・エネルゴマシュ」や周辺集落に移動させたためとしている。これまでのウクライナ軍の原発敷地内への砲撃については言及していない。
工場「アトム・エネルゴマシュ」は原発の原子炉からわずか3キロ、エネルゴダル市の主な居住区域からも約5キロしか離れていない。ウクライナ側は「精密攻撃」としているものの、一歩間違えれば重大な核惨事となりかねない。
一方、ザポリージャ州当局によると、IAEAの査察作業が始まって以降はウクライナ側の攻撃は収まったとしている。また同日、1日にウクライナ側の攻撃で電線が破損したことにより停止していた同原発5号機の運転を再開した。
ザポリージャ原発はウクライナ南部のドニエプル川左岸にある欧州最大級の原発。ロシアのウクライナにおける特殊軍事作戦の開始直後からロシア軍の統制下となっており、ドニエプル川を挟んでウクライナ側と対峙する最前線に位置している。ロシア国防省によると、原発は7~8月にかけて複数回にわたってウクライナ側からの砲撃を受けているが、ウクライナ側は攻撃を否定していた。8月27日にもウクライナ軍が発射した砲弾4発が、核燃料を保管する建物の屋根に着弾していた。
ザポリージャ原発では9月1日から、IAEAのラファエル・グロッシ事務局長が率いる調査団が査察に訪れている。現地では、ロシア国営の原子力企業「ロスアトム」代表団の団長と同原発の職員がIAEAの調査団を案内し、調査団はウクライナ軍による砲撃の被害を受けた原発区域を視察したという。
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