【視点】非核化の試みはすでに失敗に終わり 朝鮮半島のエスカレーションがもたらすものとは

北朝鮮は3日、日本に向けて3発のミサイルを発射し、2日は少なくとも17種類のミサイルを日本海に向けて発射した。スプートニクの取材に応じた韓国の民間研究所「世宗研究所」の鄭成長(チョン・ソンジャン)北朝鮮研究センター長によると、今回の発射は、韓国と米国が合同演習を実施することに対する北朝鮮の不快感を示すものであるという。また鄭センター長は、北朝鮮が完全に非核化する可能性は極めて低いことから、対北政策の転換を図る時期にあると強調した。
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北朝鮮が2日に発射した10発以上の弾道ミサイルは、韓国に対して自国の軍事力を明確に顕示し、韓国と米国による大規模な連合空中訓練「ビジラントストーム」に対する厳重な抗議を示すものである。海上の境界線である北方限界線(NLL)を南に越え、海に向かって行われた弾道ミサイルの発射は、北朝鮮がNLLの意義を無効化する用意があることを改めて示そうとするものである。そこで、それが東(日本海)か、西(黄海)かで起こりうる南北の軍事衝突の可能性は高まりつつあり、そこに大きな注意を向ける必要がある。
朝鮮半島の緊張エスカレーション: 北朝鮮の発射について今わかっていること
起こりうる衝突を最大限に回避するべく努力することが必要であるが、もしもそれ現実のものとなった場合には、北朝鮮による戦略核兵器の使用を招くような紛争の激化を防ぐため、「断固たる解決策」ではなく、「バランスの取れた解決策」の原則を維持することがきわめて重要である。もしも北方限界線(NLL)地域での衝突にまで発展した場合、朝鮮人民軍の海軍力がかなり弱いものであることから、北朝鮮はおそらく砲撃による対抗策に出るだろう。延坪(ヨンピョン)島砲撃事件でもそうであったように、今回は、白翎(ペンニョン)島でも砲撃が行われる可能性がある。しかも、北朝鮮は近年、ミサイル攻撃力を増強しており、その影響は、2010年当時よりも、はるかに強力なものになる可能性がある。
米国には現在、(北朝鮮に対し)いかなる戦略も持っていない。米国は現状を維持しようとしているにすぎない。核兵器を保有する北朝鮮に、大規模な演習と通常兵器だけで対抗しようとしていることを、それ以外にどのように説明できるだろうか。しかし、米国は、北朝鮮が核兵器を保有していることを認めようとしていないことから、それに反応しているということを見せるためだけに、示威的な演習を行っているのである。
演習「ビジラントストーム」は2017年、文在寅政権時にも実施され、北朝鮮にきわめて激しい反応を呼び起こした。そこで、シンガポールで行われた米朝首脳会談(2018年6月)で、北朝鮮は、「今、合同軍事演習を行う必要があるのか」という趣旨の発言を行った。これに対し、トランプ大統領は、協議に必要な雰囲気を生み出すため、演習を実施する大きな必要性はないと同意し、それを延期するよう提案した。その結果、北朝鮮はこの演習について固執するのをやめ、対話へと移行したのである。
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その理由はきわめて分かり易いものである。朝鮮人民軍の空軍は大変弱いため、史上最大規模となった合同空軍訓練というものは、北朝鮮にとってきわめてセンシティブに捉えているのである。第一に、北朝鮮には航空機のための燃料が不足しているためである。北朝鮮空軍はまともな演習を行うことはできず、また戦闘機の多くが古いものとなっている。さらに北朝鮮には、米韓による合同演習に対抗するための戦略兵器もない。
よって、北朝鮮が、7回目の核実験のための雰囲気を醸成するためにミサイル発射によって状況を先鋭化しようとしているという説は、根拠があるものとは言えないだろう。たとえ北朝鮮がそれを実施したとしても、米国は北朝鮮を核保有国と認めることはない。しかし、いずれにせよ、北朝鮮はすでに核爆弾を開発しているのである。米国がより心配しているのは、大陸間弾道ミサイル実験であり、核実験が行われるかどうかということが、米政府にとって、原則的な問題でないのは確実である。
南北合意は重要性を失ったのか?
非核化の試みはすでに失敗に終わり、完全な非核化の可能性はきわめて低い。そこで、政策を転換することが必要であり、解決策は、軍備削減に向けた協議の開始によって見つけることができるだろう。しかし、問題は、米朝間には保有する核兵器の数量に大きな差があるため、そうした形式で実りある交渉を行うことはできないだろうということである。
そこで韓国は核兵器を獲得する必要がある。協議を、核兵器の現実的な削減につながるような同等のものにするためである。もし米政府が、自らの軍備に対する制限は設けず、北朝鮮から事実上一方的な非武装化を求めたとしても、北朝鮮がこれを受け入れることはないだろう。
同時に、韓国の核兵器保有するという考えは、最後の希望であり、米国はそのような案は検討しておらず、そのようなシナリオが展開される可能性は高くはないだろう。
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