今大会、スタジアムではサプライズが相次いだ。日本が格上のドイツ、スペインを撃破する快進撃をみせたほか、サウジアラビアは優勝のアルゼンチンにグループ戦で勝利。チュニジアが準優勝のフランスに、韓国がウルグアイに、モロッコがベルギーに、イランがウェールズに、オーストラリアがデンマークにそれぞれ勝利するなど、想定外の番狂わせに世界が沸いた。
大会をめぐる驚くべきことは試合だけではなかった。イラン・テヘラン大学で教鞭をとるホセイン・ルイバラン氏(政治学)は、3つの政治・社会的サプライズを挙げている。
だが、カタールは試合会場となった8つの豪勢なスタジアムを準備しただけでなく、各スタジアムと宿泊施設の間に高速道路や地下鉄などのインフラを整備した。数万人規模の観客の流れを制御し、1日4試合の過密スケジュールを達成した。この成功はFIFAのジャンニ・インファンティーノ会長も称賛している。
ところが、FIFAは結果的にカタール大会が秩序ある模範的なものになったと示唆している。アルコールの禁止やイスラムのドレスコードが性暴力の防止に寄与したとしており、インファンティーノ会長も「過去の大会とは比べ物にならないほど成功した大会」との認識を示している。今大会はファン同士の抗争の犠牲者が出なかった初めてのW杯であり、スポーツの精神を最もよく反映した大会となった。
また、最後にルイバラン氏はW杯に参加していないパレスチナの旗がしばしば見られたことをあげている。モロッコ、チュニジアなどアラビア語圏の国々の試合のあとには、パレスチナの旗を掲げるファンらの姿があった。アラブ諸国やそのファンたちが試合でパレスチナの旗の存在を容認したことは、抑圧されたパレスチナの人々への連帯を示したことを意味する。こうして人々が政治的、人道的主張を自由で非政治的なスポーツの場で表明できたことは、最も大きなサプライズだった。
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