「2022年の夏にマドリードで開かれた首脳会議で、NATOは地域の組織から世界的な組織へと移行しました。米国は、NATOの活動を太平洋地域をも網羅させようとしています。次のサミットに、日本、韓国、豪州、ニュージーランドの首脳が招かれていることにも大きな意味があるのです。米国の直接指導により、ANZUS、クアッド、ファイブ・アイズ、オーカスなどといった、中国に対抗するための「多層仕立てのパイ」構造が作られています。米国は、ウクライナ紛争においてロシアに対して用いたやり方を、今度は中国にも適用しようとしています。事実上、これはアジア版NATOの創設を意味しています。日本が、新たな国家安全保障戦略で、中国を『これまでにない最大の戦略的な挑戦』と明記したことを考慮すれば、米国が日本をこの方向に仕向けているとは言えないまでも、日本を全面的に支援しています。今年、日本政府は外交分野において特に積極性を発揮しています。というのも、日本はG7の議長国だからです。しかし、日本の議長国という立場は、事実上、米国の戦略的課題を実現するために機能しています。その課題とは、韓国、豪州、ニュージーランドなど、米国に忠誠を誓う国々の助力を借りて、中国を孤立させ、ロシアを抑止するというものです」
「北朝鮮の核開発については、これまでも日本政府の中で話し合われてきましたが、それがこれほどまでに危険で深刻なものだとは考えられていませんでした。しかし、今、増加するミサイル発射や向上するミサイル技術、金正恩氏の発言が日本に深刻な懸念を与えています。そして、日本は中国についても危惧しています。それは中国そのものというよりも、台湾をめぐる情勢が悪化した場合についてです。中国は、台湾を武力で制圧するというシナリオを否定し、平和的な解決を望んでいるとしていますが、中国が軍事演習を活発化したり、中国の艦艇が日本の海域を侵犯するなどといった行動に、日本は当然、無関心ではいられません。もちろん、日本の政治は100%、米国に左右されるわけではありません。
しかし、安全保障条約に従い、日本は自国の安全保障コンセプトと合致した行動をとることになります。そして、日本が現在とっている行動は、米国に指示されたものではなく、日本の戦略の範囲内のものです。しかも、それらの行動は、日本社会の要求にも合致しています。思い出したいのは、1960年代、米国の立場を強化するような日本政府のあらゆる行動に対し、日本では大々的な抗議の声が上がっていたということです。しかし、今、日本の世論もこの方向において政府を支持しています。なぜなら、国民は、それが国益に適うものだと考えているからです」
「現代の戦争はもはや20世紀の戦争ではありません。テクノロジーはかなり進化し、それなしにどんな大国も存在することはできません。サイバーセキュリティは、現在、これまでにないほど重要です。サーバーへのハッキング攻撃、サイバー攻撃などの行為はインフラに多大な影響を及ぼします。宇宙空間も、今、現実的な軍事紛争において決定的な役割を果たすものの一つです。衛星を使ったミサイルの正確な誘導、諜報活動、通信、すべてです。そして、どちらがどれだけこうした技術を用いるかということが、多くの点で、戦争の行方を決定づけるのです」