第15回BRICS首脳会議

【視点】G7はBRICSをビジネスパートナーと見なし始めたが、共通通貨創出への道はまだ遠い

今週開幕するG7広島サミットでは、世界経済においてその存在を強めつつあるBRICSについて意見が交わされる可能性がある。現在、BRICSには、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの5カ国が加盟しているが、すでに、アルジェリア、アルゼンチン、エジプト、イラン、インドネシア、バーレーン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦など19の国々が加盟への関心を示している。
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8月に南アフリカで開催予定のBRICSの第15回サミットで、加盟国は米ドルによる支配から脱却するため、共通通貨の創出の可能性について話し合うことになっている。果たしてBRICSは集団的欧米に対抗するものとなり、新たに作られる「BRICS通貨」は、グローバルサウスを牽引する求心力を持つものとなるのだろうか?
こうした構想の主な目的は、国際貿易における米ドルへの依存度を低下させることである。米国の貸出金利の上昇とウクライナ紛争をめぐる情勢により、ドルのレートは上昇している。しかし、途上国の通貨は下落しており、このことは各国の利益に反するものであることから、反発が起きている。また、いくつかの国は、米国による制裁の結果、ドルを使用を禁止される可能性があるとの懸念を抱いている。
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なぜ、G7はBRICSに関心を示しているのか、また新たな「BRICS通貨」はドルの立場を弱めることができるのか?「スプートニク」が、現代発展研究所で金融・経済部を率いるニキータ・マスレニコフ氏にお話を伺った。

「BRICSのポテンシャルは、G7を含め、誰の目にも明らかです。今年、中国とインドが、GDP成長の約半分を牽引しています。そしてこの2カ国の、EU(欧州連合)と米国との貿易高は1.5兆ドルとなっています。これは、世界経済におけるBRICSの役割が認められているということであり、BRICSが、今後の発展に欠くことのできないビジネスパートナーとして捉えられるようになってきたということを意味します。

BRICSの加盟国、そして加盟を申請している国々の、世界経済における大きな力が、政治的な力、影響力に変わろうとしています。G7サミットの中で、どのような形でBRICSについて話し合うことになるのかまだ分かりませんが、対露制裁については必ず議題に上がることになることから、BRICS加盟国がこの制裁の抜け穴対策を支持する用意があるのかどうかを確認するような試みがなされる可能性は高いと思います」

ニキータ・マスレニコフ氏は、G7の懸念は何よりも、新型コロナによるパンデミックとウクライナ紛争によって引き起こされた世界経済の断片化だろうと指摘する。

「この2つのファクターは国際的な資金・食糧・エネルギーの供給停止をもたらしました。また追加的な貿易の制限によって、地域間の対立が深まっています。これは、BRICSを含めたすべての国にとっての世界的、そして現実的なリスクです。

国際通貨基金(IMF)の試算によれば、世界経済の断片化による損失は世界のGDPの最大7%となる可能性があり、これはドイツと日本の年間GDPを合わせた規模です。ですから、G7はBRICS加盟国がこれほど深刻な脅威に対してどのように考え、どう対応していくのか気にしています」

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一方、8月のサミットでもアジェンダに含まれているBRICS加盟国間の共通通貨について、マスレニコフ氏は、計画の実現まではまだ時間が相当かかると述べている。

「現段階では、相互決済でBRICS加盟国が自国通貨の使用に移行する条件について話し合われています。共通通貨の創出というのは、さらに複雑な、後段階となるものです。管理および調整の統一メカニズムを持った地域の通貨システム、共同の決済システムの構築が必要です。また経済同盟、関税同盟、共通の市場を創設するための一連の作業を行う必要があります。

それまでに、すべての国が政治路線において、少なくとも、長年にわたって安定していることが必要です。欧州が独自の通貨を導入するのには、40年かかったのですから」

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