S-350の特徴
S-350ヴィーチャシ(注:ヴィーチャシは、古代ロシアにおいて勇敢かつ献身的な戦士のこと)は、2019年にロシア軍が運用を開始した移動式の地対空ミサイルシステムで、弾道および空力の両方の目標を破壊するように設計されている。これらの目標には、戦闘機、無人航空機、米国製のトマホークや英国製のストーム・シャドウなどの巡航ミサイルが含まれる。
S-350は、自走式発射装置、電子空間スキャン機能を備えた全方位レーダー、指揮所で構成されている。また、特殊な車輪付きシャーシ「BAZ-69092-012」が利用されており、5分以内に警戒態勢に入ることができる。このシステムは、16の空力目標と12の弾道目標を同時に攻撃できる。
S-350は、空力目標を射程距離最大120キロメートル、高度最大3万メートルで破壊できる防空システム。弾道標的の場合だと、射程距離は最大30キロメートル、高度最大2万5000メートル。
「撃ちっ放し」
軍事専門家のユーリ・クヌートフ氏はロシアのメディアの取材に対し、人間が標的を見つけ、手を伸ばして標準を合わせるには時間がかかるが、この場合スピードが重要なのだと指摘している。
「S-350は自動制御では、人間が手動で目標を破壊しようとする場合に比べて10倍速く処理する。これは当初、自動制御で目標を攻撃するために設計されたシステムなのだ」
クヌートフ氏によると、米国のジャーナリストでさえもS-350 を「巡航ミサイル・キラー」と呼んでいる。このシステムは自動誘導式であるため、「撃ちっ放し能力」の原理に基づいて作動する。
ロシアの「ヴィーチャシ」と米国の「パトリオット」
軍事オブザーバーのアレクセイ・スコンキン氏がロシアメディアの取材に対し、S-350の弾薬の数はパトリオットの3倍だという。
「S-350は発射装置1つにつき12基のミサイルが搭載されているが、パトリオットの場合は4基だ。S-350には発射装置が4つあるため、ミサイルの数は48基になる。重量級の一斉射撃だ。(中略)奇妙なことに、皮肉なことに、探知、追跡、照準、目標への誘導などの技術が発達したにも関わらず、量的な要素は必要なのだ。防御側が対ミサイルを多く持てば持つほど、攻撃側が戦闘任務を遂行するのは難しくなる。このような防空網に過大な負荷をかけることは非常に難しいからだ」
政治・軍事分析局のアレクサンドル・ミハイロフ局長によると、S-350のミサイルは飛行速度が高く、低空飛行の標的を攻撃できる。さらに、S-350は高度10メートルの目標を攻撃できるのに対し、パトリオットは高度100メートル未満の飛行物体を撃ち落とすことができない。
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