西側諸国によるウクライナへの兵器供与

【解説】ウクライナ向けの新型防空システム「NASAMS」は、戦場で損失したパトリオットの「代替品」?

米国防安全保障協力局は24日、中距離防空システム「NASAMS(ナムサス)」と関連機器を推定2億8500万ドル(約400億円)でウクライナに売却すると米国議会に通告した。この発表は、16日にロシアの極超音速ミサイル「キンジャール」がウクライナにある多機能レーダーステーションと米国製対空ミサイルシステム「パトリオット」の発射台5基を破壊したことを受けたもの。スプートニクはNASAMSの特徴と、同システムがウクライナの戦場でどのような役割を担っているのかをお伝えする。
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NASAMSの特徴

NASAMSは地上配備型の防空システムで、コングスベルグ・ディフェンス&エアロスペース(ノルウェー)とレイセオン(米国)によって開発された。同システムは、敵の固定翼機、回転翼機、無人航空機、新型の巡航ミサイル脅威を探知・追跡・迎撃・破壊する。
NASAMSには、3基のマルチミサイルランチャー(LCHR)が搭載されており、各ランチャーには最大6基の中距離ミサイル「AIM-120 AMRAAM」が搭載されている。AIM-120 AMRAAMは、空対空と地上発射の両方で使用できるミサイル。このミサイルは全天候型で、目視外戦闘能力を有し、有効射程は30キロメートル、(地上のNASAMSから発射した場合の)飛行高度は2万1000メートルになる。
移動式発射装置はファイア・ディストリビューション・センター(FDC)という制御モジュールに接続されており、FDCから最大25キロ離れた場所に設置できる。NASAMSの大隊は72発のミサイルを搭載した最大12基の発射装置で構成され、すべてのミサイルを異なる標的に対して15秒以内に発射することができる。これらの標的は、AN / MPQ-64 センチネル レーダー (レーダー範囲は 120 キロメートル) によって定められる。
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ウクライナはNASAMSを損失

NASAMSの製造元であるレイセオンのグレッグ・ヘイズCEOによると、米国は2022年10月初旬に、NASAMSの供与第一弾として2基をウクライナに譲り渡した。また、このシステムにはAIM-120 AMRAAMが搭載されていた。
米国防総省はレイセオンと12億ドルの契約を結び、合計8基のNASAMSがウクライナに供与されることが決まった。供与終了日は2025年11月28日。2023年1月と3月には、カナダがNASAMS を1基、ノルウェーが2基をウクライナに供与する意向を表明した。
昨年秋に配備された2基のNASAMSがウクライナの戦闘能力を向上させたかどうかは分からない。ロシア国防省は2023年2月3日、ロシア軍は防空システムの1つを破壊したと発表した。
米国は、ウクライナの防空システムを改善する取り組みとして、2022年12月に客観的な理由からNASAMSより優れた地対空ミサイルシステム「パトリオット」を1基供与した。NASAMSは一般的に狭い範囲の地上エリアや特定の目標を守るために使用される中距離防空システムであるが、パトリオットは軍事基地や都市などの広いエリアを守るために設計された長距離防空システム。
パトリオットは配備から1カ月後、ロシアの極超音速ミサイル「キンジャール」からの攻撃を受けた。NASAMS供与の目的が防空上の「穴」を塞ぐことであると仮定すれば、NASAMSがパトリオットに取って代わる可能性は低い。NASAMSは、ロシアの巡航ミサイル「カリブル」や弾道ミサイル「イスカンデル」はもちろん、超音速ミサイル「キンジャール」を迎撃することができない。
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NASAMSはロシア製に劣る?

軍事専門家のアレクセイ・レオンコフ氏はロシアのメディアの取材に対し、NASAMSはロシアの防空システムよりも劣っていると指摘した。
「我々のシステムは技術的にも能力的にも優れている。我々にはBuk-M2やBuk-M3があるが、これらは目標に対してはるかに効果的に機能し、検出も撃墜の点においても優れている」
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