西側諸国によるウクライナへの兵器供与

【解説】ウクライナの戦場における西側とロシアの兵器 どちらが優れているのか

ウクライナのレズニコフ国防相は、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)のインタビューで、ウクライナは北大西洋条約機構(NATO)の兵器をテストする「理想的な実験場」だと述べた。同氏によると、西側の兵器はロシア製兵器よりもはるかに優れていることを見せつけたという。しかし、本当にそうなのだろうか?スプートニク通信が分析する。
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キンジャール VS パトリオット

FTの記事では、ウクライナに供与された米国製の地対空ミサイルシステム「パトリオット」がロシアの極超音速ミサイル「キンジャール」を迎撃したと強調されている。一方、ロシア国防省はこの主張を否定している。同省は、5月16日にキンジャールがキエフ(キーウ)に配備されたパトリオットを破壊したと発表した。
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その前日にSNS上で拡散された動画を見ると、パトリオットがミサイルを撃墜するために30発以上のミサイルを発射したが、不成功に終わったことがわかる。そして、パトリオットがそのすべてのミサイルを発射し終わったあと、そこで大きな爆発が起こる。西側メディアは、パトリオットは空爆で「損傷」したが、完全には破壊されていないと報じた。
一方、たった一発でパトリオットが故障したことは明らかだ。

西側の別の防空システムはウクライナ軍の役に立っているのか?

レズニコフ氏はFTのインタビューで、米国とノルウェーが開発した 防空システム「NASAMS」および最近ドイツが開発した防空システム「IRIS-T」の一貫性について語った。
2022年10月、2基の中距離防空システムNASAMSがウクライナに初めて引き渡された。米国防総省はウクライナに計8基のNASAMSと不特定の量の弾薬を提供すると約束した。
一方、供与された2基のNASAMSがウクライナの戦場で効果を発揮したという証拠は少ない。NASAMSの有効射程は約30キロ。ドローン、航空機、巡航ミサイルなどの標的に対抗する。ロシアの軍事専門家は、NASAMSは米国がウクライナに提供した高機動ロケット砲システム「ハイマース」の中隊をカバーするためのものだったと考えられるが、NASAMSの数が限られているため、ウクライナ軍は自国の部隊をカバーすることはできないとの見方を示している。
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ドイツのIRIS-Tもロシアの徘徊型兵器によって使用停止となった。ロシア国防省は、IRIS-Tの運用に必要な可搬式レーダー設備「TRML-4D」を破壊した際の映像を公開した。西側メディアはこれに即座に反応し、映像にあるのがTRML-4Dであることを確認、その損傷によりIRIS-Tの今後の運用に疑問を呈した。

ハイマースは「非常に精密」、しかし…

レズニコフ氏は、米国製のハイマースも称賛し、その攻撃は「非常に正確だ」と述べた。一方、同氏は、ロシアの電子戦システムはハイマースへの対処法を学んだと指摘した。しかしレズニコフ氏によると、これは「一時的な現象」だという。
同氏は、ウクライナとその同盟国が「ロシアの対抗措置に対する対抗措置」を考え出すまで、ロシア軍はハイマースが発射するロケット弾を迎撃し続けるだろうと述べた。ロシアのショイグ国防相によると、ロシアの防空システムは6月だけでハイマースのロケット弾158発を迎撃した。
またロシア国防省によると、ウクライナ軍はこれらのシステムを民間施設や民間人に対する攻撃にも使用している。これも注目しておく必要がある。
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ウクライナ軍のたった2つの「超兵器」

ウクライナの軍事装備の損失は、特に6月4日に多くの人が「待ち詫びていた」反転攻勢が始まったあと、西側メディアで取り上げらるようになった。ドイツ製戦車レオパルトと米国製歩兵戦闘車ブラッドレーが特に注目されている。これらは、ウクライナ軍が保有する最も近代的な車両に含まれると考えられている。
ショイグ国防相は7月3日、ウクライナが反転攻勢を開始してから1ヶ月の間にレオパルト16両、航空機15機、ヘリコプター3機を含む920の軍事装備を撃破したと発表した。
米ニューヨーク・タイムズは6月26日、ウクライナ軍に供与された113台のうち少なくとも17台(15%)のブラッドレーが損傷または破壊されたと報じた。
ショイグ国防相によると、ウクライナの反転攻勢が始まってから1か月間に、ロシア軍はドンバスとザポロジエ(ザポリージャ)州でウクライナの装甲車両を合わせて約920台破壊した。
ロシアの軍事専門家ワレリー・リトフキン氏はスプートニク通信に対し、西側の戦車に対するロシア製戦車の優位性について語った。

「ロシアにはT-72、T-80、T-90の各戦車があり、これらは多くの点で西側の戦車よりも優れている。たとえば、ロシアの戦車の乗員は3人で自動装填装置が装備されているが、自動装填装置が装備されている西側の戦車は1つもない。この装置の代わりに西側の戦車には4人目の乗員がいるが、彼は戦闘中に戦車が前進してでこぼこの地面を揺れながら走行している中で弾薬を装填しなければならない。西側の戦車の全高は3メートル、ロシアの戦車は2.2メートル。西側の戦車の重量は60トン超、ロシアの戦車は46トンだ。口径は、ロシアが125ミリ、西側は120ミリ。またロシアの戦車は砲弾だけでなく、レーザー誘導方式の対戦車ミサイルも発射することができる」

ワレリー・リトフキン
ロシアの軍事専門家
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自慢できるものは何もない

リトフキン氏によると、ウクライナは戦うための装備をさらに必要としているというレズニコフ国防相の発言はもっともだという。ウクライナではもうずいぶん前に自国の兵器が枯渇してしまったからだ。
同氏は、戦場でのウクライナ軍の多大な損失はロシア製兵器の優位性の何よりの証拠だと指摘している。ショイグ国防相は7月3日、ウクライナ軍は6月4日以降、あらゆる方面で約2500のさまざまな兵器を失ったと発表した。
リトフキン氏はまた、ウクライナ国防相は現在、実際の戦果を誇ることはできないと指摘した。西側諸国だけでなく、ウクライナ国内でも、反転攻勢の進み具合が非常に遅いとみなされており、ロシアの強固な防衛線が「全部悪い」とされている。
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