対露制裁を受けた合理的結論
米国はロシアのウクライナでの特殊軍事作戦の開始以降、6400億ドル(91兆円)のロシア政府の資産を凍結している。このことは、世界各国の中央銀行の懸念を招いた。スイス・フリブール大学のセルジオ・ロッシ教授(金融・マクロ経済学)は、スプートニクに対し、各国の資産の本国への引き揚げは、資産を自らの手で「完全に管理」したいという安全保障上の理由から起きたと説明する。
また、ロッシ教授によると、金の「大量帰国」は、西側世界の金融資産や投資の需要が減退していることを意味している。
「米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中銀といった主要中銀の金融制限政策は、西側の金融資産から金準備への移行をさらに促進する可能性がある。特に中小企業や家計の不良債権の増加を考慮すると、いかなる追加利上げも西側の金融システムをますます脆弱化させることになる」
さらに、こうしたネガティブな傾向は、米国の地方銀行や欧州各国の銀行に悪影響を与えるとロッシ教授は続ける。最悪の場合、西側諸国に大打撃を与える一連のグローバル金融危機に発展する可能性もあるという。
代替策はある
こうした状況下では、非西側の金融システムが台頭する。西側諸国が立場を失いつつある一方で、BRICS諸国の経済成長と金融の安定性に関する展望は明るい。
「BRICS加盟国間の貿易協定や国際決済システムは、中長期的に見ればグローバル化した西側経済よりも、より大きな投資利益を生み出すことになる。そうなると、より多くの個人・機関投資家が、何らかの経済活動を行いたいと考えるBRICS諸国に、金準備の一部を移転させる可能性が高まる」
アジア地域の企業投資コンサル会社「デザン・シーラ&アソシエイツ」のクリス・デボンシャー・エリス代表は、スプートニクに対し、「各国は近い将来、自国での資産保有を好むかもしれないが、代わりはある」と指摘する。
「BRICSは世界のガスや石油の埋蔵量の約6割をコントロールしており、組織の拡大に伴いこの割合は大きくなる。上海協力機構も同様に、地域の経済安全保障の観点から、資産の備蓄庫になる可能性がある」
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