「おそらく、今回の内閣再改造は戦術的なものでしょう。というのも、岸田首相には2025年の次回国会議員選挙までの 『時間軸 』があるからです。つまり、首相にはまだ時間がある。況してや、自民党は衆議院と参議院で安定多数を維持している。首相の支持率は下がったままですが、これは日本ではよくある現象です。どの新内閣も支持率はピークに達した後、下がります。そしてどの首相も、有権者の支持を取り戻すために何らかの行動に迫られる。内閣改造は、国民の関心を 『復活』させ、支持率を上げるための方法のひとつなのです」
「つまり、内閣改造は実はこの国の政治生活の 『ルーティン的な操作』なのです。特定の閣僚の名前にまつわる様々な政治スキャンダル(『旧統一教会』とのスキャンダル)を含め、国民には常に不満がありますから。岸田首相自身にも、自分の長男が政府公邸で宴会を開くなど、誤算もあります。同時に、この国の経済状況だって国民を満足させるものではありません。国民の実質所得の減少、インフレ、円相場の下落など、これらの要因は間違いなくすべて首相の評価に影響します」
「確かに、内閣に新しい顔ぶれが現れるでしょう。この政治的ローテションは自民党内の人事制度を維持するための方法でもあるからです。ローテーションによって、岸田首相は徐々に一定のパワーバランスを確保し、岸田氏の命運を左右する複数の派閥内の不満を防いでいます」
「概して、岸田首相の評価が下がっているのは、『緑の党』が福島第一原発の処理水放出問題で首相を批判しているからです。『左派』は原発全般に反対で、首相がこの問題で抜本的な改革を取らないことを批判しています。『右派』は、岸田首相は外交政策で弱腰で、中国にあまりに『おもねている』と批判しています。
確かに『穏健派』も常に存在していますが、それでも何かしらの不満はいつもあります。それに、日本ではいまだに平和主義的な感情が根強く残っている一方で、今、国の防衛予算が着実に増えています。故に、岸田首相は一見、広島出身の 『平和の鳩 』なのに、いわゆる軍国主義者や右翼保守派の意向に沿った行動をしている、と批判する人もいます。その背後には、連合(日本労働組合総連合会)や立憲民主党を支持する左派勢力がいます。つまり、ある種の抗議の声が確実に存在しています。左派は数こそ少ないものの、確実に存在しているからです」
「日本維新の会という右派政党が今、台頭しているのは偶然ではありません。 ようするに、その台頭は岸田政権に対する抗議の表明なのです」