【視点】日本のウクライナ経済復興支援 具体策ではなく、政治上の自己宣伝

9月9日、つい先日まで外相を務めていた林芳正氏が実業界の代表らを連れ、ウクライナを訪れたことは人道的訪問というよりはアピールする目的を持ったものだった。なぜ日本はウクライナに資金を投じる用意があるのか、林外相に代表を同行させた川崎重工業、丸紅、楽天グループがウクライナになんらかの具体的提案を行うことができるのか、スプートニクは専門家の見解を仰いだ。
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今回、日本の実業界の代表は、日本政府が2024年初頭にウクライナ経済復興協力のための二国間協議を日本で開催するのに先立ち、ウクライナ側のニーズをヒアリングし、官民双方からの支援を約束した。
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世界経済国際関係大学、太平洋調査センター、日本経済・政治グループ代表のヴィタリー・シュヴィドコ氏は、ウクライナが位置しているのは日本の実業界や政治家の関心の周辺にすぎないとして、次のように語っている。

「日本はウクライナへ資金を投じる構えだが、それは政治的な自己宣伝に促す程度に過ぎません。これが多額の資金の長期計画ではないでしょう。 今、議題に挙がっているのはウクライナの戦後の復興であって、そのために国際資本はまだ拠出を迫られます。これは巨額の資金です。ですが、計画や期日についてはまだ具体的な話になっていません。日本企業も、政府が補助金を出してくれれば、参加できるかもしれません。

ですから、この企業の代表たちは頼まれたから行ったのであって、すでにいくつかのプロジェクトの準備があるからというわけではないはずです。 日本人が新しいプロジェクトを用意する際にどれだけ長い時間をかけ、徹底的にすべての詳細、コスト、予想される利益を計算するかは誰もが知っています。ところが、軍事行為が進行している間は、そんなことは絶対に出来ません。 このために日本企業からウクライナへの具体的に提案できることはほとんどないのです。訪問に同行した企業には大きな可能性がありますが、ウクライナで自分の企業の利益になりそうなものは自己宣伝以外には基本的に何もないのです…」

ヴィタリー・シュヴィドコ
世界経済国際関係大学の代表
日本はG7の中で唯一、ウクライナに殺傷能力のある武器は供与していない。供給品目はヘルメット、防弾ベスト、運搬車両、地雷除去機、電気・ガス・給水設備、無人機といった非戦闘用の軍事装備や、人道支援・資金援助に限定している。日本のウクライナ支援は総額70億ドル(1兆343億円)を超える。
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