【視点】港湾と空港のインフラ再整備 日本が追う2つの狙い

日本政府は、住民の避難を円滑化し、有事の際の自衛隊使用に適したものにするため、再整備・近代化する公共インフラ再構築対象として10道県にある33の民間空港と港湾を選定した。これらの施設の管轄自治体との交渉はまもなく開始される。
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リストに挙げられたのは14の空港と19の港湾。空港は、軍用輸送機の離着陸のための滑走路の増設や既存の滑走路の延長、駐車場や格納庫の増設を行う。 港湾もまた、輸送船を収容するための埠頭やインフラの増設が計画されている。対象となる施設の大半が九州と四国、そして与那国、石垣、宮古の島々に集中しているのは、 この方角が台湾周辺の情勢から、政府が潜在的に危険視している地域だからだが、それとは別に北海道の室蘭市と苫小牧市の港も含められた。
地方自治体が労働力不足と、米軍基地が集中する沖縄の二の舞を懸念して、どのような反応を示すのだろうか。 これについてモスクワ国立国際関係大学、東洋学部のウラジーミル・ネリドフ准教授は、地方自治体レベルでこの計画に対する抵抗はまず起こりえないとの見方を示している。

「日本南西部諸島への軍事インフラの整備は2010年代にはすでに始まっていました。これは尖閣諸島をめぐる東シナ海での対立が激化したためです。この悪化によって、日本は中国が潜在的な敵対国になりうると考えるようになりました。それ以降、日本人の視点からみると状況は悪い方向に変化しています。日本のアナリストや政治家は、台湾周辺の対立が紛争に発展した場合、日本も巻き込まれる可能性が高いと、今では公言しています。民間人の安全確保に関わることなので、都道府県から抵抗があるとは思えません。それと、自衛隊には自然災害時の住民救助活動があることも考慮しなければなりません。 なのでこうしたインフラ整備の計画は、自衛隊の災害救助能力を高め、市民の安全を強化する政策として政府から説明されることになるでしょう」

ウラジーミル・ネリドフ
モスクワ国立国際関係大学・東洋学部准教授
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ネリドフ氏は、これらの計画と、米軍基地の存在に地元当局や住民が不満を表明している沖縄の状況との間に直接的な関連性はないと見ている。

「地方自治体が軍事インフラの建設に反対した前例はありますが、それはイージス・アショアミサイル防衛システムの配備に関連したものでした。システムがあると、軍事衝突の際に標的となるからです。しかし、港湾や空港の再整備とミサイル防衛システムの配備は別物です。また住宅密集地にある普天間基地の移設をめぐって、地元自治体が何年も争っている沖縄の話も、私には少し違うように思います。沿岸部のインフラや空港を強化するこの計画は、それらとは異なっており、地元住民の抵抗はさほど招かないと、私は思います。 今回の計画は軍事力の強化を目的としていますが、明らかに攻撃力よりも防衛力です。国民側にも国家安全保障政策への理解があります。労働力不足については、港湾や空港に新たな施設を建設する際に、当局が労働力不足に直面することはないでしょう。日本が労働力不足で何かを建設できなかったことは一度もありません。ほとんどの工事は民間に委託されるでしょうし、自衛隊自身が工事に参加するかもしれません。軍事予算の増加は、自衛隊員の給与を増やすことも目的としていますから」

ウラジーミル・ネリドフ
モスクワ国立国際関係大学・東洋学部准教授
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高等経済学院東洋学部のアンドレイ・フェシュン准教授も同様の見解を示している。
「あの地域で軍事行動が起これば、まず米国と中国が関与することになります。そうなれば、九州や南西部の諸島の人々の命が危険にさらされることは避けられません。つまり大勢の人々を安全な場所に移すという問題が生じます。この目的のために、スタジアムや学校の施設が使われ、電気や水、食料といった最低限の装備が用意されます。住民を飛行機で危険な場所から迅速かつ効率的に避難させるためには、これらの空港に格納庫を増設する必要があります。 これは日本が、起きようが、起こるまいが、東京大地震の事態に備えているのと同じで、今回も事前に入念に準備しているのです。それに、このようなインフラは、自然災害時の民間人救助に役に立たないことはありません。だから、こうした計画が自治体の反対や国民の不満を招くことはまずないでしょう。また、労働力不足という話は、基本的には、外国人労働者の利用を拡大しようとする動きと関係しています。今回の計画とは関係はないと私は考えています」
アンドレイ・フェシュン
高等経済学院・東洋学部准教授
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