近年、日本のメーカーはスマートフォン市場における占有率を失い、5Gの基地局開設では、フィンランドのノキアやスウェーデンのエリクソン、そしてファーウェイに大きく遅れをとっている。この3社が5G基地局開設のほぼ80%を担っているのに対し、日本企業は1%以下となっている。
この分野の先駆者となったのは、次世代通信規格の発展を国の優先課題に据えた中国である。2009年から2019年にかけて、ファーウェイは5G通信網の研究と開発のために40億ドル(およそ4,400億円)を投入。ファーウェイは、この金額について、同じ米国と欧州諸国の総投資額よりも多いと指摘している。
最初の攻撃を仕掛けたのは米国防総省で、2019年12月末に国防総省は米国の通信機器メーカーに対し、5G開発において協力するよう要請した。ファーウェイ製品に代わる国内技術を広めることが狙いであった。そして2020年6月、米連邦通信委員会は(FCC)は中国のファーウェイとZTEを公式に、安全保障上の脅威に指定した。米政府はファーウェイの通信機器は中国政府のスパイ活動に使用されるのではないかと警戒感を示したが、ファーウェイはこれを否定した。
一方、英国は2027年までに、自国市場のファーウェイ製品の占有率をゼロにするための行動計画を練る意向である。
そのための主要な方策として、英国は2021年9月30日以降、5G通信網にファーウェイの設備を採用することを禁止すると決定した。この日までに設置された設備については、事業者が使用することが許可されている。また政府は国家移動通信研究拠点を設立し、日本のNECと共同で5G技術の開発に取り組む意向である。
国際経済金融大学のアレクセイ・ベリャニン助教授は、スプートニクからのインタビューに対し、「日本企業はファーウェイとは違って評判がよく、欧米諸国も採用したいと考えている」と指摘している。
「世界のプロバイダーの間で中国製品が主力となってきていることは、新たな現実であると、皆、理解していますが、これは世界的なインターネット上の脅威でもあります。もっとも、それは直感的なもので、明確な証拠に基づいたものでありません。しかしながら、そうした考えは西側の市場に緊張感をもたらしており、各国が、市場から中国企業を制限する、あるいは排除するための策を講じています。市場の分割が進んでいるわけですが、日本がどこまでファーウェイ排除の動きに加わってくるのかについては、時が答えを示してくれるでしょう。日本には技術があります。そして欧米諸国との協力の下で、市場を分割することは可能となるでしょう。その試みはすでに行われており、今後も続いていくでしょう」。
一方でベリャニン氏は、米英の5G市場で中国製品の代わりに日本の製品が採用されることになった場合、中国が報復を行う可能性は除外できないと指摘する。
一連の国々が5G通信網の構築において中国製品を排除することで、NECや富士通を始めとする日本企業が通信設備のグローバルな供給において大きな成果を上げる可能性が高まりつつある。菅首相は、就任直後から、通信機器部門を経済成長の牽引力にするよう訴えてきた。12月4日の記者会見でも、菅首相は、「5Gを機能強化した、いわゆるポスト5G、さらには次世代の技術である、いわゆる6Gの技術についても、世界をリードできるよう、政府が先頭に立って研究開発を行います」と発言し、経済対策で、これらを含めたデジタル関係で、1兆円を超える規模を確保すると約束している。