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台湾の主権を主張するようになった米国=米上院は台湾問題についてどのような政策転換を行ったのか?
台湾の主権を主張するようになった米国=米上院は台湾問題についてどのような政策転換を行ったのか?
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... 2022年9月17日, Sputnik 日本
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いわゆる「2022年台湾政策法案」は、リンゼー・グラム議員(共和党)とボブ・メネンデス外交委員長(民主党)が、今年4月に実施した台湾訪問を総括して、提出したものである。法案の提出に際して、これは台湾の安全保障を推し進め、台湾を中国からの侵略行為から守ることを目的としたものだと説明された。法案では台湾に対し、中国が侵略した場合に厳しい制裁を科すことなどが盛り込まれている。また法案は、米主導の経済圏構想「IPEF」(インド太平洋経済枠組み)を始めとする国際的な合意や組織においていわゆる台湾の主権を求める内容となっている。下院で提出された法案でもっとも重要なことは、米連邦政府が「台湾政府」と、台湾市民の利益の正当な代表者として協力すべきだと記されている点である。法案では、米国政府の人物と台湾の政府要人、政治家、公的人物との接触に関するあらゆる制限を禁ずることが盛り込まれている。この法案は、「1979年のいわゆる台湾関係法と、いわゆる米台関係の基礎となっている『6つの保障』をより成熟させたものである。そして台湾への武器供給に対する米国の義務が拡大され、今後4年間で45億ドルの軍事支援を拠出することが盛り込まれている。バイデン政権は、これまでに何度となく、大幅修正なしに、そのままの形で法案を可決することには反対であるという姿勢を明らかにしてきた。しかし、米国はこれまで数十年にわたり、戦略的曖昧政策をとってきた―つまり台湾が軍事紛争に突入した場合、米国が台湾に軍事支援を行うと直接約束はしないものの、たとえば武器供給などによる軍事支援は否定しないという態度をとってきた。またいずれにせよ、米国の台湾政策の基礎となっていたのは、米国と中国の間で1970年代の末から1980年代の初頭に署名された2カ国間の協定であった。これはいわゆる「3つの共同コミュニケ」で、その重要な意味は、「一つの中国」の原則であり、中国政府は中国国民を代表する唯一の合法政府であるとしている点である。もちろん、これらのコミュニケの中には、米国と中国が独自に解釈できるような抽象的な表現も含まれている。こうしたことを背景に、米国は「1979年の台湾関係法」、「6つの保証」と同様、これらの文書を一方的な形で採択した。またいずれにせよ、米国は、台湾の政治家との公式な政治上の交渉を控える、台湾の主権を公式に認めることはしないといったいくつかの基本的な原則を遵守してきた。最近の例でいえば、台湾は、米国が主導するIPEFには加盟していないことが挙げられる。なぜなら、この枠組みに加盟できるのは主権国家だけであるからだ。しかし、米国の一連の議員らは、米国が長年にわたって台湾に対しとり続けてきた戦略的曖昧政策を見直すことを求めている。彼らは米国は台湾をNATO(北大西洋条約機構)外の偉大な同盟国とみなすべきだと考えているのである。つまり、米国は台湾により大規模な軍事支援を行い、軍事協力に関してより具体的な義務を負い、安全を保障し、台湾政府との政治的な交渉を拡大し、台湾を少しずつ自国の地政学的利益の中に引き込んでいくべきだというのである。バイデン政権は、中国との関係構築にそれほど関心がなく、自身の在任中、中国との2カ国関係の重要性をドナルド・トランプ前大統領時代よりもさらに低くした。一方で、バイデン大統領は、両国の緊張をコントロールできないほど高めることも望んでいない。南京大学国際関係学院執行院長で、南海研究協同創新センター執行主任の朱鋒教授は、「スプートニク」からのインタビューに対し、もしも米下院で提出された法案がそのままの内容で可決されれば、これは中米関係に大きな影響を及ぼすだろうと警告する。米国のナンシー・ペロシ下院議長による台湾訪問というスキャンダルの後、中国は台湾海峡で大規模な軍事演習を実施した。そして、多くの西側のアナリストらが、その直後から、中国はこのように一方的な形で現状変更を試みていると書き立てるようになった。しかしながら、米国の第三者の台湾訪問に対抗し、中国は実際のところ、かなりの自制心を発揮したといえる。しかし、もしも米国が自国の台湾政策を変更するような法案を可決した場合、中国は厳しい対抗措置をとる必要に迫られるだろう。なぜなら、こうした行動は、中国のすべてのレッドラインを超えるものだからである。そしてこれは、アジアにおける現在の安全保障の仕組み全体にも打撃を与えるものだと朱鋒教授は指摘している。今のところ、「2022台湾関係法」は第1段階を通過しただけで、これから下院では、議員数を拡大した形で投票が行われる。投票がいつ行われるかはまだ明らかにはなっていない。法案は、国防権限法(NDAA)のような、より内容のある法案の一部となる可能性もある。この文書の可決は今年末までに行われることになっている。関連ニュース
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オピニオン, 台湾, 米国, 中国, 国際, 政治
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台湾の主権を主張するようになった米国=米上院は台湾問題についてどのような政策転換を行ったのか?
2022年9月17日, 17:13 (更新: 2022年9月21日, 22:03) 米議会上院の外交問題委員会は、台湾への軍事支援を強化する法案を可決した。法案には、台湾に対し、45億ドル(およそ6400億円)の軍事支援を行うことなどが盛り込まれている。採決結果は、賛成が17票、反対が5票の賛成多数であった。共和・民主両党の下院議員らがこの法案の可決を支持している。ジョー・バイデン大統領側からは深刻な反対の声が上がっているものの、この法案は、米国が長年維持してきた台湾政策を実質的に変更するものである。
いわゆる「2022年台湾政策法案」は、リンゼー・グラム議員(共和党)とボブ・メネンデス外交委員長(民主党)が、今年4月に実施した台湾訪問を総括して、提出したものである。法案の提出に際して、これは
台湾の安全保障を推し進め、台湾を中国からの侵略行為から守ることを目的としたものだと説明された。法案では台湾に対し、中国が侵略した場合に厳しい制裁を科すことなどが盛り込まれている。また法案は、米主導の経済圏構想「IPEF」(インド太平洋経済枠組み)を始めとする国際的な合意や組織においていわゆる台湾の主権を求める内容となっている。
下院で提出された法案でもっとも重要なことは、米連邦政府が「台湾政府」と、台湾市民の利益の正当な代表者として協力すべきだと記されている点である。法案では、米国政府の人物と台湾の政府要人、政治家、公的人物との接触に関するあらゆる制限を禁ずることが盛り込まれている。この法案は、「1979年のいわゆる台湾関係法と、いわゆる米台関係の基礎となっている『6つの保障』をより成熟させたものである。そして
台湾への武器供給に対する米国の義務が拡大され、今後4年間で45億ドルの軍事支援を拠出することが盛り込まれている。
バイデン政権は、これまでに何度となく、大幅修正なしに、そのままの形で法案を可決することには反対であるという姿勢を明らかにしてきた。しかし、米国はこれまで数十年にわたり、戦略的曖昧政策をとってきた―つまり台湾が軍事紛争に突入した場合、米国が台湾に軍事支援を行うと直接約束はしないものの、たとえば武器供給などによる
軍事支援は否定しないという態度をとってきた。またいずれにせよ、米国の台湾政策の基礎となっていたのは、米国と中国の間で1970年代の末から1980年代の初頭に署名された2カ国間の協定であった。これはいわゆる「3つの共同コミュニケ」で、その重要な意味は、「一つの中国」の原則であり、中国政府は中国国民を代表する唯一の合法政府であるとしている点である。もちろん、これらのコミュニケの中には、米国と中国が独自に解釈できるような抽象的な表現も含まれている。
こうしたことを背景に、米国は「1979年の台湾関係法」、「6つの保証」と同様、これらの文書を一方的な形で採択した。またいずれにせよ、米国は、台湾の政治家との公式な政治上の交渉を控える、台湾の主権を公式に認めることはしないといったいくつかの基本的な原則を遵守してきた。
最近の例でいえば、台湾は、米国が主導するIPEFには加盟していないことが挙げられる。なぜなら、この枠組みに加盟できるのは主権国家だけであるからだ。しかし、米国の一連の議員らは、米国が長年にわたって台湾に対しとり続けてきた戦略的曖昧政策を見直すことを求めている。彼らは米国は台湾をNATO(北大西洋条約機構)外の偉大な同盟国とみなすべきだと考えているのである。つまり、米国は台湾により大規模な軍事支援を行い、軍事協力に関してより具体的な義務を負い、安全を保障し、台湾政府との政治的な交渉を拡大し、台湾を少しずつ自国の地政学的利益の中に引き込んでいくべきだというのである。
バイデン政権は、
中国との関係構築にそれほど関心がなく、自身の在任中、中国との2カ国関係の重要性をドナルド・トランプ前大統領時代よりもさらに低くした。一方で、バイデン大統領は、両国の緊張をコントロールできないほど高めることも望んでいない。
南京大学国際関係学院執行院長で、南海研究協同創新センター執行主任の朱鋒教授は、「スプートニク」からのインタビューに対し、もしも米下院で提出された法案がそのままの内容で可決されれば、これは中米関係に大きな影響を及ぼすだろうと警告する。
「もしも法案が可決されれば、間違いなく、中米関係に大きな影響を与えるでしょう。なぜなら、その内容は、1972年の上海コミュニケ、1982年8月17日のコミュニケなど、両国政府の間で締結されたしかるべき文書に違反するものだからです。これらの文書の本質となっているのは、「一つの中国」の原則、つまり米国は台湾地区と公式的な交渉を行なってはならないということです。しかし、上院で提出された法案は、「一つの中国」の原則を不明瞭にし、台湾に対する米国の戦略的曖昧政策の立場をより明確なものにするのです。我々は、米国がいわゆる米台関係を大きく強化しただけでなく、台湾に対する防衛義務のレベルを引き上げ、台湾地区を米国のNATO以外のいわゆる同盟国にしたと見ています。これは米国が長年の政策から離れたことを意味します。もし中国が、大陸と台湾との関係に関する諸問題によって制裁対象に含まれたとしたら、間違いなく、敵意を挑発し、台湾海峡を挟む2つの国の平和的な交渉を決裂させ、台湾の分離主義勢力を奨励することになります。ですから、もし法案が最終的に採択されれば、中米関係に甚大な損害を及ぼすことになるでしょう」
米国のナンシー・
ペロシ下院議長による台湾訪問というスキャンダルの後、中国は台湾海峡で大規模な軍事演習を実施した。そして、多くの西側のアナリストらが、その直後から、中国はこのように一方的な形で現状変更を試みていると書き立てるようになった。しかしながら、米国の第三者の台湾訪問に対抗し、中国は実際のところ、かなりの自制心を発揮したといえる。しかし、もしも米国が自国の台湾政策を変更するような法案を可決した場合、中国は厳しい対抗措置をとる必要に迫られるだろう。なぜなら、こうした行動は、中国のすべてのレッドラインを超えるものだからである。そしてこれは、アジアにおける現在の安全保障の仕組み全体にも打撃を与えるものだと朱鋒教授は指摘している。
「わたしはこれはアジア地域の安全保障への大きな脅威だとも考えます。なぜなら、もしも台湾海峡を挟む2カ国の関係が、米国の行動によって、今後さらに悪化すれば、台湾地区の問題は、ますます厳しいものになり、現在の地域の安全保障バランスが崩れ、状況がコントロール不能になる可能性があるからです。もしこの台湾地区の問題が、中米関係のさらなる急激な悪化を招き、第3勢力が絡んでくるようなことになれば、地域の安全と安定に大きな損害がもたらされるでしょう」
今のところ、「2022台湾関係法」は第1段階を通過しただけで、これから下院では、議員数を拡大した形で投票が行われる。投票がいつ行われるかはまだ明らかにはなっていない。法案は、国防権限法(NDAA)のような、より内容のある法案の一部となる可能性もある。この文書の可決は今年末までに行われることになっている。