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日本と中国 50年にわたる協力とライバル関係
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... 2022年10月1日, Sputnik 日本
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揺れ動く政治日中関係は、この50年間、険悪とまではいかないまでも、ホットな状態と冷え込んだ状態を行ったり来たりしてきた。例えば1984年には、中曽根康弘元首相が北京を訪問した際、政治、経済、文化、科学技術などの分野で善隣関係を拡大する機会を探る目的で、「日中友好21世紀委員会」の設立が発表された。1992年には、日中国交樹立20周年を記念して、当時の天皇陛下(今の上皇陛下)が訪中し、江沢民総書記(当時)が日本を訪れた。 天皇陛下は訪中の際、日中関係において史上初めて、日本が中国を植民地支配していた時期について謝罪した。多くの問題が未解決のままであったが、20世紀末には両国関係の正常化は大きく前進した。しかし、2002年の国交樹立30周年には、中国が日本の軍国主義の象徴とみなす靖国神社に小泉純一郎首相(当時)が定期的に参拝することに不満を示し、激しい意見の対立が生じた。その10年後の2012年、日本政府は尖閣諸島の5島のうち3島を個人所有者から購入すると発表し、40周年の雰囲気は損なわれた。この記念となる年を祝うイベントは中止され、中国では大規模な反日デモが行われ、暴行事件が発生した。外交上のスキャンダルは、二国間の経済関係に問題を引き起こした。戦略的ライバル関係と戦略的協力日中両国がどんな状態でこの国交樹立50年周年を迎えたかについて、スプートニクはモスクワ国際関係大学、東洋学部のアンナ・キレーエヴァ助教授に取材した。「50年というのは十分に長い期間だ。とはいえ、中国と日本の間はそれよりずっと長い歴史がある。いずれにせよ、この50年の間に、よく『熱い政策と冷たい経済』という公式で語られる両国関係のあり方に、何らかの形で影響を及ぼした側面が様々あったことは確かだ。政治面で、安全保障、歴史問題でネガティブな傾向が強まった。経済協力の面では、第二次世界大戦後、国交が回復する前から緊密な関係があった。そして、1978年に鄧小平の「改革開放」政策が開始されると大規模な日中協力が開始。これには日本の投資を含まれている。この分野は間違いなく互恵的であり、この間一貫して、両国関係において常に前向きな備蓄となってきた。また、二国間関係には、同時に2つの傾向が存在してきた。それは戦略的ライバル闘争と戦略的協力である。この50年間の中で、ある時期はライバル意識が強く、ある時期は、例えば1990年代や2000年は、協力的だった。しかし、2010年以降はライバル関係の方が常に優勢になった。この傾向はおそらく今後も続くだろう。すでに2010年の時点で中国は名目GDPでは日本を追い越した。現在、その絶対値の差は名目GDPで3.5倍、購買力平価で5倍。軍事予算の差も巨大で5倍以上の開きがある。絶対値では大きな差があるものの、生活の質の点ではまだまだ日本が優れており、例えば1人当たりのGDPでは、日本は中国の2倍以上上回っている」首位争いキレーエヴァ助教授によれば、その主な理由は、両国の外交政策の方向性と戦略目標が真逆であることにあると見ている。そうでありながら、両国は地域の首位の座を巡って競いあっている。「中国が定めている目標とは、東アジアのリーダーとなり、重要な地位を占め、既存の秩序を中国の国益に適うように改革することだ。中国はこの地域に原則的には米国の深刻な影響力が及ばないようにしようとしている。したがって、中国は日米同盟をも脅威と見なしている。日本の戦略目標は全く異なっている。日本の戦略目標は、日本が中国ほど強国ではないにせよ、自らを地域のリーダーの一国、権力の中心の1つとみなしていることと関連している。日本が最も望まないのは、中国の覇権なのだ。したがって日本は、米国がインド太平洋地域におけるプレゼンスを維持することを望んでいる。なぜなら米国は日本の安全保障の維持を助けてくれる主要な同盟国であるからだ。そして、日本から見ると、中国の覇権を現実的に阻止できる大国は米国だけだ。日本は知っている。日本は中国と正面対決した場合、長期的には一切の勝ち目はなく、中国が築いた新しい秩序に適応せざるを得なくなるということを。もちろん、日本はそのようなシナリオを望んでいない。だからこそ、中国の政策は日本にとって主たる挑戦とみなされているのだ。 両国の外交政策の方向性の違いこそが、戦略的ライバル関係の根本的な理由である」歴史と領土論争が 信頼の妨げキレーエヴァ助教授は、雪解けの時期であっても、両国のエリートたちの間にも国民感情の中もに信頼を醸成することを妨げている、重要な要因がもう2つあると指摘する。第一の要因は、第二次世界大戦に対する見解の違いと、歴史教科書や歴史解釈が日本社会の保守層の中で徐々に形を変えつつあることに関係している。日本の首相の靖国神社参拝の問題もこれに含まれる。第二の要因は領土問題との絡みだ。この問題は、最近、中国の尖閣諸島(釣魚島)のうち数島が台湾に極めて近い位置にあり、台湾周辺で有事の際に軍事戦略上重要な位置となることからより複雑さを増している。「2012年に紛争がエスカレートしたことで、両国間には安全保障上のジレンマが高まった。両国は、互いの行動を自国の安全保障に対する脅威と認識するようになった。 尖閣諸島周辺では中国船が絶えず日本の領海に侵入しており、これを日本は現実的な脅威と受け止め、極めて敏感な反応を見せている。ここ数年の台湾問題の深刻化は、日本にとって『軍事衝突が起きた場合、日本はどういう行動をとるか』という難題を突き付けている。紛争で日本が米国を支援する場合、集団的自衛権が作用する可能性がある。 日本が米国に全面的な軍事支援を行うのか、それとも後方支援を行うのか、それは分からない。いずれの場合にせよ、日本のエスタブリッシュメントは今、この問題を非常に憂慮している。最近、日本の政治家が頻繁に個人的に台湾と接触しているのは、これと関係があるのかもしれない。日本は単に米国に追随しているだけで、中国を刺激しないように慎重に行動している可能性もある」日本は自分から中国というライバルを育てた日中関係の原動力は、常に経済協力だった。日本は中国へは投資だけでなく、技術を提供し、中国は日本に人的資源と生産力を提供し、これが両国の経済を相互に補完的な関係にしてきた。1978年の改革により、中国のGDPは年間10%で成長し始め、2010年には日本を抜いて世界第2位の経済大国となった。とはいえ、コロナ禍など、ここ数年に起きたいくつかのショックで、世界銀行の予測では、中国の年間成長率は2022年には4〜5%に鈍化すると出ている。キレーエヴァ助教授は、日本が中国の近代化において果たした役割は非常に大きいと指摘している。「日本は依然として中国経済への主要な投資国だ。日本の統計によると、累積投資額は約1500億ドル。また、日本はかつて中国に政府開発援助を行ってきたが、中国が十分な水準に達したため、ようやく最近になってこれを停止している。日本は中国にとってナンバー1の支援国だった。これは、第二次世界大戦後の未解決の問題を調整するための一種の間接的な方法だった。賠償金の代わりに、日本は経済援助と投資を行い、生産拠点を中国に移していた。 日本の大手多国籍企業の大半が中国に生産拠点を置いている。安価な労働力と比較的優秀な人材のおかげで、中国は日本の生産拠点となった。日本は、インフラ整備などの開発援助を通じて、多くの技術を中国に移転してきた。こうしたものは日本にとっては先端技術ではなかったかもしれないが、中国にとっては新しかった。このようにして、日本は自らの手で中国という競争相手を『育てて』しまった。中国製品は携帯電話、エレクトロニクス、インフラなど、すでに多くの産業分野でアジア、世界で日本製品と競合している。日本はアジアのインフラ市場において最も古参のプレイヤーに数えられるが、中国の『一帯一路』は最近の現象である。もちろん、日本は技術的に優位ないくつかの産業部門もあるが、価格は割高だ。その他の分野では、少なくとも大量生産の分野では中国はもはや日本に劣っていない。日本と中国は、戦略的なライバル関係にあるにもかかわらず、経済的には堅く結びついており、ある意味で相互依存関係にあるとも言える。両国の貿易額は3500億ドルを超えているが、これは主に生産連鎖上の中間財の交換と日本がアジアに設立した企業のための付加価値の創設だ。しかし、昨今の日本は投資戦略を変え始めている。それはまず、中国の中間層と購買力が高まり、中国で作られた日本製品が以前のように輸出されず、中国の国内市場に流れるようになったからだ。中国に進出している日本企業の7割が、中国市場への製品供給を増やしている。第2の傾向は中国での人件費が高騰し、自国の製造業者を支援する保護主義的な措置がますます多く出されるようになったことと関係がある。このような状況下では、日本企業が中国市場で活動することは難しくなり、一番大事な安価な労働力というファクターがなくなりつつある。 そのため、多くの日本企業が中国ではなく、ベトナムを中心とした東南アジア、さらには南アジアに新たな生産拠点を移すようになった。そうすることで、日本は中国への依存度を下げてはいるが、それでも中国は日本にとっては未だに第一の貿易相手国であり続けている。中国のシェアは約22〜23%だ。では中国にとってはどうかというと、日本はEU、米国に次ぐ第3の貿易相手国だ。しかも中国はその経済規模から、日本に大きく依存しているわけではない。だがだ! 米国が技術移転のためのチャンネルを事実上全て遮断したために、今度は中国にとっての日本、韓国、EUの重要性は客観的に高まった。このため2017年から2018年にかけては、中国がこうした技術移転に対する関心があるために日中関係は正常化するかと思われた。ところが今度は日本の方が、これにかなり慎重な姿勢を示すようになり、潜在的に中国に移転する可能性のある技術を評価するための新しい法律が制定されている」それでも、中国と日本の関係はASEANをベースにした地域機関(東アジアサミット、ASEAN地域安全保障フォーラム、ASEAN+3など)において、東アジアでの戦略的協力の要素を持っていることも特徴的だ。両国は、今までになかった安全保障上の課題や脅威(海賊、災害管理、エネルギー安全保障など)への対策に関心を抱いている。また、2020年に締結されたメガ貿易地域圏であるASEAN+5地域的な包括的経済連携協定(RCEP)の主要メンバーであり、経済大国でもある。関連記事
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日本と中国 50年にわたる協力とライバル関係
2022年10月1日, 18:15 (更新: 2022年10月1日, 19:15) 日本と中国は、9月29日に国交樹立50年周年を迎えた。1972年に調印された日中共同声明では、日中関係は平和的共存を基本とし、「すべての紛争を平和的手段により解決し、武力または武力による威嚇に訴えない」とうたわれている。日本側は、中国政府を中国の唯一の正統な政府として認め、台湾を中国領土の一部であることを認めた。このため、日本は台湾との国交を失ったが、台湾との経済的な関係や協力関係は維持された。中国は日本に対する戦争の賠償請求を取り下げた。1973年の春、両国は大使館を開設した。
日中関係は、この50年間、険悪とまではいかないまでも、ホットな状態と冷え込んだ状態を行ったり来たりしてきた。例えば1984年には、中曽根康弘元首相が北京を訪問した際、政治、経済、文化、科学技術などの分野で善隣関係を拡大する機会を探る目的で、「日中友好21世紀委員会」の設立が発表された。1992年には、日中国交樹立20周年を記念して、当時の天皇陛下(今の上皇陛下)が訪中し、江沢民総書記(当時)が日本を訪れた。 天皇陛下は訪中の際、日中関係において史上初めて、日本が中国を植民地支配していた時期について謝罪した。多くの問題が未解決のままであったが、20世紀末には両国関係の正常化は大きく前進した。しかし、2002年の国交樹立30周年には、中国が日本の軍国主義の象徴とみなす靖国神社に小泉純一郎首相(当時)が定期的に参拝することに不満を示し、激しい意見の対立が生じた。その10年後の2012年、日本政府は尖閣諸島の5島のうち3島を個人所有者から購入すると発表し、40周年の雰囲気は損なわれた。この記念となる年を祝うイベントは中止され、中国では大規模な反日デモが行われ、暴行事件が発生した。外交上のスキャンダルは、二国間の経済関係に問題を引き起こした。
日中両国がどんな状態でこの国交樹立50年周年を迎えたかについて、スプートニクはモスクワ国際関係大学、東洋学部のアンナ・キレーエヴァ助教授に取材した。
「50年というのは十分に長い期間だ。とはいえ、中国と日本の間はそれよりずっと長い歴史がある。いずれにせよ、この50年の間に、よく『熱い政策と冷たい経済』という公式で語られる両国関係のあり方に、何らかの形で影響を及ぼした側面が様々あったことは確かだ。政治面で、安全保障、歴史問題でネガティブな傾向が強まった。経済協力の面では、第二次世界大戦後、国交が回復する前から緊密な関係があった。
そして、1978年に鄧小平の「改革開放」政策が開始されると大規模な日中協力が開始。これには日本の投資を含まれている。この分野は間違いなく互恵的であり、この間一貫して、両国関係において常に前向きな備蓄となってきた。
また、二国間関係には、同時に2つの傾向が存在してきた。それは戦略的ライバル闘争と戦略的協力である。この50年間の中で、ある時期はライバル意識が強く、ある時期は、例えば1990年代や2000年は、協力的だった。
しかし、2010年以降はライバル関係の方が常に優勢になった。この傾向はおそらく今後も続くだろう。すでに2010年の時点で中国は名目GDPでは日本を追い越した。現在、その絶対値の差は名目GDPで3.5倍、購買力平価で5倍。軍事予算の差も巨大で5倍以上の開きがある。絶対値では大きな差があるものの、生活の質の点ではまだまだ日本が優れており、例えば1人当たりのGDPでは、日本は中国の2倍以上上回っている」
キレーエヴァ助教授によれば、その主な理由は、両国の外交政策の方向性と戦略目標が真逆であることにあると見ている。そうでありながら、両国は地域の首位の座を巡って競いあっている。
「中国が定めている目標とは、東アジアのリーダーとなり、重要な地位を占め、既存の秩序を中国の国益に適うように改革することだ。中国はこの地域に原則的には米国の深刻な影響力が及ばないようにしようとしている。したがって、中国は日米同盟をも脅威と見なしている。
日本の戦略目標は全く異なっている。日本の戦略目標は、日本が中国ほど強国ではないにせよ、自らを地域のリーダーの一国、権力の中心の1つとみなしていることと関連している。日本が最も望まないのは、中国の覇権なのだ。
したがって日本は、米国がインド太平洋地域におけるプレゼンスを維持することを望んでいる。なぜなら米国は日本の安全保障の維持を助けてくれる主要な同盟国であるからだ。そして、日本から見ると、中国の覇権を現実的に阻止できる大国は米国だけだ。日本は知っている。日本は中国と正面対決した場合、長期的には一切の勝ち目はなく、中国が築いた新しい秩序に適応せざるを得なくなるということを。もちろん、日本はそのようなシナリオを望んでいない。だからこそ、中国の政策は日本にとって主たる挑戦とみなされているのだ。 両国の外交政策の方向性の違いこそが、戦略的ライバル関係の根本的な理由である」
キレーエヴァ助教授は、雪解けの時期であっても、両国のエリートたちの間にも国民感情の中もに信頼を醸成することを妨げている、重要な要因がもう2つあると指摘する。第一の要因は、第二次世界大戦に対する見解の違いと、歴史教科書や歴史解釈が日本社会の保守層の中で徐々に形を変えつつあることに関係している。日本の首相の
靖国神社参拝の問題もこれに含まれる。第二の要因は領土問題との絡みだ。この問題は、最近、
中国の尖閣諸島(釣魚島)のうち数島が台湾に極めて近い位置にあり、
台湾周辺で有事の際に軍事戦略上重要な位置となることからより複雑さを増している。
「2012年に紛争がエスカレートしたことで、両国間には安全保障上のジレンマが高まった。両国は、互いの行動を自国の安全保障に対する脅威と認識するようになった。 尖閣諸島周辺では中国船が絶えず日本の領海に侵入しており、これを日本は現実的な脅威と受け止め、極めて敏感な反応を見せている。
ここ数年の台湾問題の深刻化は、日本にとって『軍事衝突が起きた場合、日本はどういう行動をとるか』という難題を突き付けている。紛争で日本が米国を支援する場合、集団的自衛権が作用する可能性がある。 日本が米国に全面的な軍事支援を行うのか、それとも後方支援を行うのか、それは分からない。
いずれの場合にせよ、日本のエスタブリッシュメントは今、この問題を非常に憂慮している。最近、日本の政治家が頻繁に個人的に台湾と接触しているのは、これと関係があるのかもしれない。日本は単に米国に追随しているだけで、中国を刺激しないように慎重に行動している可能性もある」
日中関係の原動力は、常に経済協力だった。日本は中国へは投資だけでなく、技術を提供し、中国は日本に人的資源と生産力を提供し、これが両国の経済を相互に補完的な関係にしてきた。1978年の改革により、中国のGDPは年間10%で成長し始め、2010年には日本を抜いて世界第2位の経済大国となった。とはいえ、コロナ禍など、ここ数年に起きたいくつかのショックで、
世界銀行の予測では、中国の年間成長率は2022年には4〜5%に鈍化すると出ている。キレーエヴァ助教授は、日本が中国の近代化において果たした役割は非常に大きいと指摘している。
「日本は依然として中国経済への主要な投資国だ。日本の統計によると、累積投資額は約1500億ドル。また、日本はかつて中国に政府開発援助を行ってきたが、中国が十分な水準に達したため、ようやく最近になってこれを停止している。日本は中国にとってナンバー1の支援国だった。これは、第二次世界大戦後の未解決の問題を調整するための一種の間接的な方法だった。賠償金の代わりに、日本は経済援助と投資を行い、生産拠点を中国に移していた。 日本の大手多国籍企業の大半が中国に生産拠点を置いている。安価な労働力と比較的優秀な人材のおかげで、中国は日本の生産拠点となった。日本は、インフラ整備などの開発援助を通じて、多くの技術を中国に移転してきた。
こうしたものは日本にとっては先端技術ではなかったかもしれないが、中国にとっては新しかった。このようにして、日本は自らの手で中国という競争相手を『育てて』しまった。中国製品は携帯電話、エレクトロニクス、インフラなど、すでに多くの産業分野でアジア、世界で日本製品と競合している。日本はアジアのインフラ市場において最も古参のプレイヤーに数えられるが、中国の『一帯一路』は最近の現象である。
もちろん、日本は技術的に優位ないくつかの産業部門もあるが、価格は割高だ。その他の分野では、少なくとも大量生産の分野では中国はもはや日本に劣っていない。日本と中国は、戦略的なライバル関係にあるにもかかわらず、経済的には堅く結びついており、ある意味で相互依存関係にあるとも言える。両国の貿易額は3500億ドルを超えているが、これは主に生産連鎖上の中間財の交換と日本がアジアに設立した企業のための付加価値の創設だ。
しかし、昨今の日本は投資戦略を変え始めている。それはまず、中国の中間層と購買力が高まり、中国で作られた日本製品が以前のように輸出されず、中国の国内市場に流れるようになったからだ。中国に進出している日本企業の7割が、中国市場への製品供給を増やしている。第2の傾向は中国での人件費が高騰し、自国の製造業者を支援する保護主義的な措置がますます多く出されるようになったことと関係がある。
このような状況下では、日本企業が中国市場で活動することは難しくなり、一番大事な安価な労働力というファクターがなくなりつつある。 そのため、多くの日本企業が中国ではなく、ベトナムを中心とした東南アジア、さらには南アジアに新たな生産拠点を移すようになった。そうすることで、日本は中国への依存度を下げてはいるが、それでも中国は日本にとっては未だに第一の貿易相手国であり続けている。中国のシェアは約22〜23%だ。
では中国にとってはどうかというと、日本はEU、米国に次ぐ第3の貿易相手国だ。しかも中国はその経済規模から、日本に大きく依存しているわけではない。だがだ! 米国が技術移転のためのチャンネルを事実上全て遮断したために、今度は中国にとっての日本、韓国、EUの重要性は客観的に高まった。このため2017年から2018年にかけては、中国がこうした技術移転に対する関心があるために日中関係は正常化するかと思われた。ところが今度は日本の方が、これにかなり慎重な姿勢を示すようになり、潜在的に中国に移転する可能性のある技術を評価するための新しい法律が制定されている」
それでも、中国と日本の関係はASEANをベースにした地域機関(東アジアサミット、ASEAN地域安全保障フォーラム、ASEAN+3など)において、東アジアでの戦略的協力の要素を持っていることも特徴的だ。両国は、今までになかった安全保障上の課題や脅威(海賊、災害管理、エネルギー安全保障など)への対策に関心を抱いている。また、2020年に締結されたメガ貿易地域圏であるASEAN+5地域的な包括的経済連携協定(RCEP)の主要メンバーであり、経済大国でもある。