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【解説】ニュースで振り返る今年の世界経済:エネルギー高騰と物価高に翻弄された一年
【解説】ニュースで振り返る今年の世界経済:エネルギー高騰と物価高に翻弄された一年
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今年、物価高は世界の多くの市民の生活を直撃した。10月に発表されたIMF(国際通貨基金)世界経済見通しは、生活費危機への対処と題し、「世界経済活動は広範にわたり、かつ当初予想より大幅に鈍化... 2022年12月27日, Sputnik 日本
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対露経済制裁と物流問題今年、特に経済ニュース欄を賑わせたのは、ウクライナ危機にともなう対露経済制裁だ。ロシアに対して発動された制裁の数は9000件を超えると言われており、把握するのに数日を要するほどだ。それに世界的な物流事情の困難さが輪をかけた。日露間の貿易取引の基盤となっていた建設重機などの輸送品が制裁対象となり、監視を強化しなければならなくなったほか、コンテナや船の不足でサプライチェーンが混乱し、ロシアにおける製造業は大きく影響を受けた。ロシアに進出する日系企業の中でも、撤退を余儀なくされたのは、自動車産業を中心にした製造業だ。帝国データバンクは10月31日、ロシアに進出する日本の上場企業168社のうち、約1割が撤退したと発表した。政治的状況に大きく左右される物流業界だが、韓国とロシアは11月に入って貿易促進の凍結を解除するなど、新しい動きを見せている。韓国からは自動車を含む産業製品、ロシアからは食品や木材加工品が輸出される。また、完成車メーカーが撤退するかたわら、日本からロシアへの中古車輸出は安定的な伸びを見せている。ロシアへの経済制裁が効いているのか否か?は日本や欧米メディアの好むテーマとなった。急激なルーブル安、物流の混乱などを受けてロシア市民が物価高を最も実感したのは4月だった。ロシア連邦統計局が発表するインフレ率によれば、4月は前年比で食料品価格が2割以上もアップした。それ以後は緩やかに低下しているが、サービス業のように、高止まりしたままの業種もある。32年ぶり円安水準更新いっぽうの日本は、今年に入ってから円安の傾向が続いていたが、10月には、1ドル150円を超える記録的円安が進行。シグマ・キャピタル代表取締役兼チーフエコノミストの田代秀敏氏は「エネルギー資源が乏しく、食料自給率も高くないのに生産拠点の海外移転が進んでしまった日本にとって、円安はデメリットの方が大きい」「円が強くなってこそ日本にメリットがある、と力強く発言するべきだが、今は全く逆のことをしている」と指摘し、日本政府は根本的に円安を解決するつもりがないと述べた。2023年初頭のドル円相場は、アメリカのインフレ鈍化と長期金利低下を背景に円高が予想されているが、為替レート変動の要因は日米長期金利の差だけではないため、予断を許さない。エネルギーをめぐる各国の思惑ウクライナ危機以降、エネルギー政策、特にロシアの石油・ガス購入については、幾度となく論争の的になってきた。9月26日、ドイツ向けガスパイプライン「ノルドストリーム」で爆発が起きる。ロシア側はこれを国際テロと断定、10月29日には英海軍が作戦計画に加担していたと発表した。12月5日、G7諸国、英国、オーストラリアによる第三国向けロシア産原油の上限価格導入が開始。取引価格条件を1バレル60ドルと定め、今後見直す可能性もある。合意に参加する国・地域は、取引価格が60ドル以下の場合、海上向け輸送サービスを利用できる。ロシアはこれに対し、価格設定をする相手には原油も石油製品も供給しないと警告を発してきた。また、中国やインドが参加しないことから「制限参加国はエネルギーのグローバルプレーのルールを見直しできるほどの大国ではない」との批判もある。エネルギー禁輸が西側諸国のインフレを加速させるだけで、ロシアに対する制裁効果が得られない根拠についてはこちらの記事を参照されたい。日本のように資源に乏しく、中東からの原油に大きく依存する国にとって、供給先の多様化、調達コストの高騰防止という意味でサハリンプロジェクトは貴重な存在である。日本はこれまで、米国や欧州の同調圧力を受けながらも実益を重視してきた。5月、萩生田光一・元経済産業相はサハリン2について、「どけと言われてもどかない」と発言している。結果、サハリンプロジェクトで日本の権益は維持されることになり、サハリン2で産出される原油は、上記に示した上限価格規制の対象外となった。外国から資源を調達できなくなるとどうなるか実例を示したのが、7月に大統領が国外逃亡し、首相が国家破産宣言をしたスリランカである。コロナによる外国人観光客の激減だけでなく、中国から借金を重ね、インドや日本という伝統的な友好国を軽視した外交のツケが回ってきた。外貨準備流出、それに伴う燃料不足で停電が続き、日常生活が困難になり国民の不満が爆発した。スリランカには日本企業も7月時点で180社進出していた。これはもちろん極端な例だが、エネルギー政策がこれまでになく不安定な今、電気料金への反映、それに伴うエネルギー価格高騰対策の支援金給付など、日本はその場しのぎの対策を繰り返している。関連ニュース
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【解説】ニュースで振り返る今年の世界経済:エネルギー高騰と物価高に翻弄された一年
2022年12月27日, 20:24 (更新: 2022年12月28日, 17:19) 今年、物価高は世界の多くの市民の生活を直撃した。10月に発表されたIMF(国際通貨基金)世界経済見通しは、生活費危機への対処と題し、「世界経済活動は広範にわたり、かつ当初予想より大幅に鈍化 」「物価は数年ぶりの高水準を上回っている」と指摘。「財政政策は、金融政策と一致するよう十分に引き締まったスタンスを保ちつつ、生活費の圧力を和らげることを目指すべき」と提起している。世界で何が起き、市民の暮らしに何が影響を与えたのか、今年の主な経済ニュースを振り返る。
今年、特に経済ニュース欄を賑わせたのは、ウクライナ危機にともなう対露経済制裁だ。ロシアに対して発動された制裁の数は9000件を超えると言われており、把握するのに数日を要するほどだ。それに世界的な
物流事情の困難さが輪をかけた。日露間の貿易取引の基盤となっていた建設重機などの輸送品が制裁対象となり、監視を強化しなければならなくなったほか、コンテナや船の不足でサプライチェーンが混乱し、ロシアにおける製造業は大きく影響を受けた。ロシアに進出する日系企業の中でも、撤退を余儀なくされたのは、自動車産業を中心にした製造業だ。帝国データバンクは10月31日、ロシアに進出する日本の上場企業168社のうち、約1割が撤退したと発表した。
政治的状況に大きく左右される物流業界だが、韓国とロシアは11月に入って貿易促進の
凍結を解除するなど、新しい動きを見せている。韓国からは自動車を含む産業製品、ロシアからは食品や木材加工品が輸出される。また、完成車メーカーが撤退するかたわら、日本からロシアへの中古車輸出は安定的な伸びを見せている。
ロシアへの経済制裁が効いているのか否か?は日本や欧米メディアの好むテーマとなった。急激なルーブル安、物流の混乱などを受けてロシア市民が物価高を最も実感したのは4月だった。ロシア連邦統計局が発表するインフレ率によれば、4月は前年比で食料品価格が2割以上もアップした。それ以後は緩やかに低下しているが、サービス業のように、高止まりしたままの業種もある。
いっぽうの日本は、今年に入ってから円安の傾向が続いていたが、10月には、1ドル150円を超える
記録的円安が進行。シグマ・キャピタル代表取締役兼チーフエコノミストの田代秀敏氏は「エネルギー資源が乏しく、食料自給率も高くないのに生産拠点の海外移転が進んでしまった日本にとって、円安はデメリットの方が大きい」「円が強くなってこそ日本にメリットがある、と力強く発言するべきだが、今は全く逆のことをしている」と指摘し、日本政府は根本的に円安を解決するつもりがないと述べた。2023年初頭のドル円相場は、アメリカのインフレ鈍化と長期金利低下を背景に円高が予想されているが、為替レート変動の要因は日米長期金利の差だけではないため、予断を許さない。
ウクライナ危機以降、エネルギー政策、特にロシアの石油・ガス購入については、幾度となく論争の的になってきた。9月26日、ドイツ向けガスパイプライン「ノルドストリーム」で爆発が起きる。ロシア側はこれを国際テロと断定、10月29日には英海軍が作戦計画に加担していたと発表した。
12月5日、G7諸国、英国、オーストラリアによる第三国向けロシア産原油の上限価格導入が開始。取引価格条件を1バレル60ドルと定め、今後見直す可能性もある。合意に参加する国・地域は、取引価格が60ドル以下の場合、海上向け輸送サービスを利用できる。ロシアはこれに対し、価格設定をする相手には原油も石油製品も供給しないと警告を発してきた。また、中国やインドが参加しないことから「制限参加国はエネルギーのグローバルプレーのルールを見直しできるほどの大国ではない」との批判もある。エネルギー禁輸が西側諸国のインフレを加速させるだけで、ロシアに対する制裁効果が得られない根拠については
こちらの記事を参照されたい。
日本のように資源に乏しく、中東からの原油に大きく依存する国にとって、供給先の多様化、調達コストの高騰防止という意味で
サハリンプロジェクトは貴重な存在である。日本はこれまで、米国や欧州の同調圧力を受けながらも実益を重視してきた。5月、萩生田光一・元経済産業相はサハリン2について、「どけと言われてもどかない」と発言している。結果、サハリンプロジェクトで日本の権益は維持されることになり、サハリン2で産出される原油は、上記に示した上限価格規制の対象外となった。
外国から資源を調達できなくなるとどうなるか実例を示したのが、7月に大統領が国外逃亡し、首相が国家破産宣言をした
スリランカである。コロナによる外国人観光客の激減だけでなく、中国から借金を重ね、インドや日本という伝統的な友好国を軽視した外交のツケが回ってきた。外貨準備流出、それに伴う燃料不足で停電が続き、日常生活が困難になり国民の不満が爆発した。スリランカには日本企業も7月時点で180社進出していた。これはもちろん極端な例だが、エネルギー政策がこれまでになく不安定な今、電気料金への反映、それに伴うエネルギー価格高騰対策の支援金給付など、日本はその場しのぎの対策を繰り返している。