【視点】「天国にある地獄」 アジアにおける軍拡競争は日本と沖縄に何をもたらすか

© AP Photo / Greg BakerБоинг KC-135 Stratotanker ВВС США
Боинг KC-135 Stratotanker ВВС США  - Sputnik 日本, 1920, 02.03.2023
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日本政府は、自力でのミサイル開発を断念し、米国製の巡航ミサイル「トマホーク」を400発購入する可能性について検討している。なぜ、世界が共通して平和を求めているにもかかわらず、アジア太平洋地域での軍拡はますます強化されているのか。そして日本政府の軍事化の道への回帰はもはやデスカレーションに向かうことなどないのか、「スプートニク」が専門家に意見を訊いた。
というのも、地域における軍拡競争はすでにかなり前から始まったものだからである。それは、北朝鮮政府を打倒するという米国の計画に関係して、北朝鮮が核ミサイル防衛を創設してからである。

北朝鮮に倣って

歴史学博士で、東洋諸国大学の教授であるアナトーリー・コーシキン氏は、このことが、極東と北東アジアの軍事政治情勢を根本的に変えたと指摘する。

「トランプ政権時代に、北朝鮮が核兵器および最新のミサイルを保有したことが、米国に対し、朝鮮半島情勢のエスカレーションを抑止することとなりました。長年にわたって平和的発展を続け、防衛費を制限してきた日本は今、実質、平和憲法を捨てようとしています。日本政府は現在、防衛費を一気に倍増し、軍事力を強化していくつもりだと明言しています。また米国から、ますます多くの最新のミサイルを購入し、米国との軍事技術協力を拡大しています」

アナトーリー・コーシキン氏
専門家
そしてこれは、地域の軍事政治情勢の悪化だけでなく、事実上、日本の膨大な資金を国の軍事化に投入することに関係している。
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軍事紛争に賭けるビジネス

コーシキン氏は、「防衛分野への資金投入は現在、発展のため、日本経済成長のための原動力と考えられている」と指摘し、次のように続けている。

「日本経済は世界で3番目に大きいものです。しかし、日本の防衛産業施設の創設は、現在、日本経済を長引く不景気から抜け出させるものと考えられています。というのも、日本経済の成長率は、高度経済成長時代のレベルに届かなくなって久しいからです。ですから、防衛産業のポテンシャルを増強し、独自の最新兵器を開発することは、国の経済成長を維持するための一歩なのです」

アナトーリー・コーシキン氏
専門家
このように、現在の日本の変化は国民の未来を見据えた国家政策なのだとコーシキン氏は締めくくっている。

米国の計画

将来、防衛費はますます増額されるだけであろう。というのも、これは中国とロシアを抑止するためのアジアの早期軍事化を目指す米国の地政学的利益に100%かなうものだからである。
コーシキン氏は、「かつて、米国は防衛分野における日本の野望を抑制してきました。第二次世界大戦時の対立を記憶しているからです。しかし、今、米国は、日本が軍事大国へと回帰することをとにかく奨励、歓迎しているのです」と述べている。

「米政府には、再び、日本を軍事的に強力なものにするという以外の選択肢はないのです。その目的は、この地域における米国の計画の実現に、機動的に日本を参加させることです。ですから、ますます頻繁に米国と日本の軍事協力、それにNATO諸国の軍事ドクトリンや計画における協力を目の当たりにすることができるようになっています。英国、フランス、その他のNATO加盟国との合同演習も行われています。米国が地域においてクアッドやオーカスを創設し、インドをそれらに誘致しようとすることも、同じ目的を持ったものです。米国の計画へのインドの加入は、インド・太平洋同盟という名称によっても強調されています。このことは、実際的な懸念を呼び起こすものです。というのも、インドと中国の間の対立は残されているからです。ですから、米国が発案し、創設された新たな同盟に日本とインドを引き込むことはかなり危険なものとされているのです」

アナトーリー・コーシキン氏
専門家
一方、日本国内には、日本を積極的に飲み込もうとしている「忍び寄る軍事化」路線に反対を表明している県がある。
それは沖縄で、そこでは定期的に抗議行動が行われている。というのも、沖縄は、第二次世界大戦時、もっとも激しい戦闘が行われた場所だからである。
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自分に火をつける:核の目標物は米国外に

沖縄の人々は、自分たちの平和な生活を犠牲にして、再び「標的」になりたくはないのである。

「沖縄の人々は、中国や北朝鮮、あるいはロシアとの軍事紛争が起こった場合、自分たちが一番の目標物になることを理解しています。このようなスローガンは、沖縄で止むことのない抗議集会などでももっとも頻繁に耳にする言葉です。当然、攻撃は島民にではなく、米国の軍事基地に向けられたものであるわけですが」

アナトーリー・コーシキン氏
専門家
そして、米国は事実、自国から攻撃を逸らし、日本人を攻撃にさらそうとしているという大きな根拠がある。

「沖縄を訪れたとき、わたしは住民たちと話をしました。彼らは、日米安全保障条約があるとはいえ、彼らにとっての戦争は終わっていないとはっきり言っています。なぜなら、沖縄県に配備された米軍基地は、沖縄の人々の生活を常に脅かし続けているからです。沖縄は核戦争に備えた米国の国外の主要な軍事基地の一つになったのです。ホワイトハウスは、日本領内に核兵器を保有しているかどうかについて、認めてはいませんが、否定もしていません。しかし、わたしは核兵器はあると確信しています。というのも、沖縄の米軍基地の『戦略的な性格』は、核弾頭やミサイル、爆弾が米国領から運んでくるという状況を避けるものだからです。日本政府はこれを認識しています。しかし公にこれを口にすることはできないのです」

アナトーリー・コーシキン氏
専門家
そこで、沖縄から軍事基地を一掃するという市民の長年の戦いは、失敗する運命にあるとコーシキン氏は考えている。
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天国は、米軍基地に囲まれた「人質」

米国は基地の一部の配置換えにしか合意していない。
コーシキン氏は、「しかし、日本から遠く離れたところに移駐させるつもりはありません。移転先はグアムなどではなく、沖縄県内なのです」と指摘する。

「あるいは、美しい珊瑚礁や貴重な動植物を破壊して、新しい島を作るのです。しかし、日本政府は米国の路線に従い、米国の計画を妨害することはできません。ちなみに、沖縄には、島やアジア、南の海に生育しているエキゾチックな植物を集めた素晴らしい植物園があります。ガイドと一緒にこの植物園を見たとき、わたしたちの頭上に、突然大きくて黒い米国のB52爆撃機が現れました。そのとき、ガイドさんは悲しげに笑いながらこう言ったのです。『わたしたちの楽園は地獄にあるのです』と」

アナトーリー・コーシキン氏
専門家
なぜなら沖縄は素晴らしいリゾート地で、沖縄のビーチは、平和なときには、観光客にとってのトロピカル天国なのである。そこには雪のように真っ白な砂浜、エメラルドグリーンの海が広がっている。しかし、21世紀、親米的な路線をとり、軍事化を目指す日本そのものと同様、このユニークな観光地は、リスクのある場所にある。つまり、軍拡競争の激化と深刻な軍事紛争の脅威にさらされているのである。
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