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【解説】ロシアがレーダーを吸収する新素材を開発 ステルス技術で世界をリードするのは誰だ?
【解説】ロシアがレーダーを吸収する新素材を開発 ステルス技術で世界をリードするのは誰だ?
Sputnik 日本
レーダーを吸収する特殊な素材や空力設計を用いて、戦闘機にステルス性を持たせる実験は、第二次世界大戦までさかのぼる。そういった戦闘機はどのように定義されるのだろうか?その利点と欠点は何なのか?そして、次世代ステルスの開発を主導しているのは誰なのか?スプートニクがお伝えする。 2023年4月4日, Sputnik 日本
2023-04-04T06:30+0900
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ロシアの電子部品メーカー「ルセレクトロニクス」の子会社に勤めるエンジニアらが、レーダーから発生する電磁波を最大95%吸収できる新世代のステルス素材を開発した。この「完全に新しい素材」は、広い周波数帯域の電波を吸収することができ、航空機の部品に使用できるほど薄く軽量なグラスファイバーと金属コアの混合物で構成されているといわれている。同社の特殊放射線材料中央設計局のアレクセイ・ディモフスキー局長は、プレスリリースで次のように述べている。同社は、レーダーに最も捕捉されやすい部品のひとつであるエンジンのコンプレッサーブレードのステルス技術の開発を任されたという。また同社によると、この新しいレーダー吸収材料が「レーダー装置による空中物体の検出を著しく困難にする」ものであり、これは軍用機のステルス特性を向上させるものだという。ステルスとは何なのか?なぜ必要なのか?軍用機の設計者は、敵のレーダーシステムに捕捉されにくくするために、さまざまな工夫や技術を用いている。例えば、空気抵抗やレーダー信号の視認性(「レーダーシグネチャー」または「レーダー断面積」)を低減する空力特性や、レーダー吸収性コーティング(「放射線吸収材料」または「RAM」)などを備えた軍用機の設計が存在する。また、コンプレッサーブレードやエンジンを保護するための部品、熱放射を抑える特殊な燃料を使用するなど、レーダー拾う機体の面積を減らすことに重点を置いたステルス設計もあるという。20世紀後半において、探知・捜索・照準レーダー技術や長距離地対空ミサイルの設計が飛躍的に進歩する中で、ステルス技術は多くの最新戦闘機や一部の無人機・巡航ミサイルにおいて重要な機能となっている。ステルス技術は、敵の領空に侵入し、機密性の高い戦略的目標を攻撃し、うまくいけば敵の防衛手段による探知や妨害を受けずに脱出するための未来的なツールとして、冷戦時代に軍事計画者が構想したもの。しかし、1990年代の米国製ステルス機の戦闘経験は、非同盟の敵に対してでさえ、ステルスは、そう言われるほど万能な奇跡の兵器ではないことを示していた。これについては、以下で詳しく解説する。世界初のステルスが作られたのはいつ?ソ連と英国も、第二次世界大戦が勃発する前に、派手さはないものの、ステルス技術の実験を行っていた。ほぼ布と木材だけで作られたソ連製の多用途複葉機「ポリカールポフPo-2」や、最先端の合成ポリマー、アルミニウム粉末塗料、ラッカー加工で作られた飛行機の試作品で、試験中に視界から「消える」ことを可能にした「ヤコヴレフAIR-4」などがその例となる。英国の軽爆撃機「デ・ハビランド・モスキート」は、そのほとんどが木製であったため、初期のレーダーをくぐり抜けることができ、「ポリカールポフPo-2」と並んで戦時中に最も成功した「プロト・ステルス」設計であるといえるだろう。真の現代型ステルス機第1号を開発したのは誰?SR-71はベトナム戦争で活躍し、北ベトナムの防空網に一度も撃墜されなかった唯一の米国製の軍用機となった。このSR-71は、コラ半島やバルト海、極東で対ソ連のスパイ活動にも使用された。1973年の第四次中東戦争では、SR-71はエジプト、シリア、ヨルダン軍の集中に関する情報をイスラエルにタイムリーに提供した。SR-71は1990年代後半に正式に退役した。同機の熱狂的なファンは退役理由に政治的な理由と高い運用コストを挙げていたが、SR-71を迎撃できる速度・高度を持つソ連の超音速迎撃機「MiG-25」の投入が、SR-71のその後の運命を指し示した可能性がある。米国とソ連は1970年代から1980年代初頭にかけてステルス技術の実験を続け、米ロックウェルは1970年代半ばに可変翼超音速爆撃機「B-1ランサー」を展開し、米ロッキードは1977年に概念実証ステルス実証機「ハブ・ブルー」を開発した。一方のソ連は、レーダー吸収コーティングや正面RCSが1平方メートル以下などのステルス機能を盛り込んだ戦闘機「MiG-29」で追随した。1980年代初頭、ソ連のツポレフ設計局は可変翼重戦略爆撃機「Tu-160(ホワイトスワン)」を開発し、同機は史上最速かつ最重量の爆撃機としての記録を保持し続けている。Tu-160は、「レーダーに見えない」爆撃機として特別に設計されたわけではないが、機体にはレーダーを吸収する特殊なコーティングが施されており、最高速度はマッハ2.05。敵側が反応する機会を得る前に戦闘地域に飛び込み、命令を実行するように設計されている。1980年代半ば、ロッキードは「F-117(ナイトホーク)」の生産を開始した。これは軽ステルス攻撃機として開発された現代的な全翼設計で、RCSはわずか0.001平方メートル。1980年代後半には、米ノースロップが爆撃機「B-2 スピリット」を開発した。これは、敵地の奥深くでの爆撃を想定した全翼型ステルス機。この2機は、ステルス技術が付け足された存在ではなく、設計の基本的な部分にステルス技術が関わっていることから、史上初の真のステルス機といわれている。現代のステルス機、およびステルス技術を取り入れた軍用機には、米国の戦闘機「F-22(ラプター)」、ロシアの戦闘爆撃機「Su-34」、戦闘機「MiG-35」および「Su-35」、欧州各国が開発した「ユーロファイター・タイフーン」、インド製戦闘機「テジャス」、中国の瀋陽飛機工業集団の「J-31」、ロシアの戦闘機「Su57」、米国のマルチロール戦闘機「F-35ライトニングII」などが存在する。ステルス機における脆弱性は?ステルス機は、ステルス機ではない機体に比べて、敵方の空中環境で発見されずに活動する能力が向上したとはいえ、不可視な存在ではない。そのため、防空部隊が高いレベルである場合において、ステルス機は従来のレーダーやミサイルシステムに対して脆弱になることがある。1999年、ユーゴスラビアの防空部隊はステルス機「F-117」ともう1機を撃墜した。ユーゴスラビアは、最初に打ち落とされたF-117に対して、1960年代初頭に実戦投入されたソ連の防空システム「S-125ネヴァー」を使用していた。ステルス機に対する現代の有効な対抗手段としては、RCS検出能力を向上させたパッシブ(マルチ)レーダー、赤外線探知&追跡システム、VHFレーダー、OTHレーダーなどがある。米国や北大西洋条約機構(NATO)の加盟国だけでなく、ロシア、中国、イランも、敵のステルス機を探知・追跡、必要に応じて撃墜できる最新のレーダーやミサイルシステムを保有している。また、これらのミサイルシステムには、遠距離で米国製最新ステルス機「F-35」を探知できる、ロシアの表面波(地上波)OTHレーダー「ポドソンヌフ(ひまわり)」も含まれている。
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【解説】ロシアがレーダーを吸収する新素材を開発 ステルス技術で世界をリードするのは誰だ?
レーダーを吸収する特殊な素材や空力設計を用いて、戦闘機にステルス性を持たせる実験は、第二次世界大戦までさかのぼる。そういった戦闘機はどのように定義されるのだろうか?その利点と欠点は何なのか?そして、次世代ステルスの開発を主導しているのは誰なのか?スプートニクがお伝えする。
ロシアの電子部品メーカー「ルセレクトロニクス」の子会社に勤めるエンジニアらが、レーダーから発生する電磁波を最大95%吸収できる
新世代のステルス素材を開発した。
この「完全に新しい素材」は、広い周波数帯域の電波を吸収することができ、航空機の部品に使用できるほど薄く軽量なグラスファイバーと金属コアの混合物で構成されているといわれている。
同社の特殊放射線材料中央設計局のアレクセイ・ディモフスキー局長は、プレスリリースで次のように述べている。
「構造的にレーダーを吸収する素材を作るというテーマは、現代の軍用機業界では長らく課題として横たわっていた。既存の軍用機用のステルスコーティングは定期的に修復する必要があるが、グラスファイバーは反射係数を低減するため、メンテナンスの必要がない。我々のプロトタイプは、すでに工場での必要なテストに合格している」
同社は、レーダーに最も捕捉されやすい部品のひとつであるエンジンのコンプレッサーブレードのステルス技術の開発を任されたという。
また同社によると、この新しいレーダー吸収材料が「レーダー装置による空中物体の検出を著しく困難にする」ものであり、これは軍用機のステルス特性を向上させるものだという。
軍用機の設計者は、敵のレーダーシステムに捕捉されにくくするために、さまざまな工夫や技術を用いている。例えば、空気抵抗やレーダー信号の視認性(「レーダーシグネチャー」または「レーダー断面積」)を低減する空力特性や、レーダー吸収性コーティング(「放射線吸収材料」または「RAM」)などを備えた軍用機の設計が存在する。また、コンプレッサーブレードやエンジンを保護するための部品、熱放射を抑える特殊な燃料を使用するなど、レーダー拾う機体の面積を減らすことに重点を置いたステルス設計もあるという。
20世紀後半において、探知・捜索・照準レーダー技術や長距離地対空ミサイルの設計が飛躍的に進歩する中で、ステルス技術は多くの最新戦闘機や一部の無人機・巡航ミサイルにおいて重要な機能となっている。
ステルス技術は、敵の領空に侵入し、機密性の高い戦略的目標を攻撃し、うまくいけば敵の防衛手段による探知や妨害を受けずに脱出するための未来的なツールとして、冷戦時代に軍事計画者が構想したもの。しかし、1990年代の米国製ステルス機の戦闘経験は、非同盟の敵に対してでさえ、ステルスは、そう言われるほど万能な奇跡の兵器ではないことを示していた。これについては、以下で詳しく解説する。
ソ連と英国も、第二次世界大戦が勃発する前に、派手さはないものの、ステルス技術の実験を行っていた。ほぼ布と木材だけで作られたソ連製の多用途複葉機「ポリカールポフPo-2」や、最先端の合成ポリマー、アルミニウム粉末塗料、ラッカー加工で作られた飛行機の試作品で、試験中に視界から「消える」ことを可能にした「ヤコヴレフAIR-4」などがその例となる。
英国の軽爆撃機「デ・ハビランド・モスキート」は、そのほとんどが木製であったため、初期のレーダーをくぐり抜けることができ、「ポリカールポフPo-2」と並んで戦時中に最も成功した「プロト・ステルス」設計であるといえるだろう。
SR-71はベトナム戦争で活躍し、北ベトナムの防空網に一度も撃墜されなかった唯一の米国製の軍用機となった。このSR-71は、コラ半島やバルト海、極東で対ソ連のスパイ活動にも使用された。1973年の第四次中東戦争では、SR-71はエジプト、シリア、ヨルダン軍の集中に関する情報をイスラエルにタイムリーに提供した。SR-71は1990年代後半に正式に退役した。同機の熱狂的なファンは退役理由に政治的な理由と高い運用コストを挙げていたが、SR-71を迎撃できる速度・高度を持つソ連の超音速迎撃機「MiG-25」の投入が、SR-71のその後の運命を指し示した可能性がある。
米国とソ連は1970年代から1980年代初頭にかけてステルス技術の実験を続け、米ロックウェルは1970年代半ばに可変翼超音速爆撃機「B-1ランサー」を展開し、米ロッキードは1977年に概念実証ステルス実証機「ハブ・ブルー」を開発した。一方のソ連は、レーダー吸収コーティングや正面RCSが1平方メートル以下などのステルス機能を盛り込んだ戦闘機「MiG-29」で追随した。
1980年代初頭、ソ連のツポレフ設計局は可変翼重戦略爆撃機「Tu-160(ホワイトスワン)」を開発し、同機は史上最速かつ最重量の爆撃機としての記録を保持し続けている。Tu-160は、「レーダーに見えない」爆撃機として特別に設計されたわけではないが、機体にはレーダーを吸収する特殊なコーティングが施されており、最高速度はマッハ2.05。敵側が反応する機会を得る前に戦闘地域に飛び込み、命令を実行するように設計されている。
1980年代半ば、ロッキードは「F-117(ナイトホーク)」の生産を開始した。これは軽ステルス攻撃機として開発された現代的な全翼設計で、RCSはわずか0.001平方メートル。1980年代後半には、米ノースロップが爆撃機「B-2 スピリット」を開発した。これは、敵地の奥深くでの爆撃を想定した全翼型ステルス機。この2機は、ステルス技術が付け足された存在ではなく、設計の基本的な部分にステルス技術が関わっていることから、史上初の真のステルス機といわれている。
現代のステルス機、およびステルス技術を取り入れた軍用機には、米国の戦闘機「F-22(ラプター)」、ロシアの戦闘爆撃機「Su-34」、戦闘機「MiG-35」および「Su-35」、欧州各国が開発した「ユーロファイター・タイフーン」、インド製戦闘機「テジャス」、中国の瀋陽飛機工業集団の「J-31」、ロシアの戦闘機「Su57」、米国のマルチロール戦闘機「F-35ライトニングII」などが存在する。
ステルス機は、ステルス機ではない機体に比べて、敵方の空中環境で発見されずに活動する能力が向上したとはいえ、不可視な存在ではない。そのため、防空部隊が高いレベルである場合において、ステルス機は従来のレーダーやミサイルシステムに対して脆弱になることがある。1999年、ユーゴスラビアの防空部隊はステルス機「F-117」ともう1機を撃墜した。ユーゴスラビアは、最初に打ち落とされたF-117に対して、1960年代初頭に実戦投入されたソ連の防空システム「S-125ネヴァー」を使用していた。
ステルス機に対する現代の有効な対抗手段としては、RCS検出能力を向上させたパッシブ(マルチ)レーダー、赤外線探知&追跡システム、VHFレーダー、OTHレーダーなどがある。米国や北大西洋条約機構(NATO)の加盟国だけでなく、ロシア、中国、イランも、敵のステルス機を探知・追跡、必要に応じて撃墜できる最新のレーダーやミサイルシステムを保有している。また、これらのミサイルシステムには、遠距離で米国製最新ステルス機「F-35」を探知できる、ロシアの表面波(地上波)OTHレーダー「ポドソンヌフ(ひまわり)」も含まれている。