【ルポ】墨絵という芸術で、日本人を模倣せず自己表現するロシア人

© Sputnik / Ludmila Saakyan墨絵教室「墨と紙」の生徒展
墨絵教室「墨と紙」の生徒展 - Sputnik 日本, 1920, 23.04.2023
サイン
モスクワで開かれていたナタリヤ・ベズヴリャークさんが指導する墨絵教室「墨と紙」の生徒展が先週末、閉幕した。生徒展のタイトルは、「雪、月、花」で、これは明らかに13世紀の道元禅師の有名な歌「春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえて冷しかりけり」から引用したものである。
民間ギャラリーの狭いスペースには、教室を率いるナタリヤ・ベズヴリャークさんをはじめとするベテラン画家とまだ墨絵を始めたばかりの初心者たちの数十作品が展示された。「スプートニク」の取材に対し、墨絵教室の生徒の1人で、今回の生徒展にも出品しているオリガ・フェオクティストワさんが展覧会の案内役を買って出てくれた。オリガさんによれば、展覧会の展示は、絵画、詩歌、生花、さらには洋服や小物、食など、ほぼすべての日本の文化にとって重要な季節性というものの原則に沿って行われたという。
「季節性というのは、日本文化に深く根付いていて、それを直接、口に出す必要がないほどです。これはイメージを連想させるものです。たとえば、カッコウとか鹿の声と聞くと、日本人はすぐにそれがどの季節を表したものであるのか感じとります。わたしたちは、こうした連想という原則に沿って展示を行いました。展示の始めのコーナーには、雪の中でも咲く椿、それから日本のシンボルの一つである桜、雨の滴のついた紫陽花が展示されています。ただこの展覧会では、少し順不同にしてあるところもあります。というのも、この展覧会は日本の芸術について詳しくない人々にも見てもらうことを想定したものだからです。
ですから、もっとも親しみのあるテーマである、竹、動物、鳥、いろいろな種類の花など、国籍を問わず理解できるものを取り上げました。また墨絵というのは、何を表現してもよい手法であるということから、いくつかのテーマが融合された作品もあります。最近では、日本人も竹や藤にはあまり興味がありません。もう何百万回も描かれ、見尽くしてきたからです。また、雪や炎といった特殊な効果を用いた作品も描いています。最近はまさにこうした作品が展覧会で賞を受賞することが多くなっています」
© 写真 : Alexander Dvoriankin墨絵
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現在はロシアでも、墨、筆、画仙紙、そしてフレームやマットなど、額装用品も手に入れることができ、墨絵に対する関心も高まり、学校や教室、水墨画の動画レッスンなども増えている。これについてオリガ・フェオクティストワさんは次のように述べている。
「現在ロシアでは、モスクワにもその他の都市にも、日本画の指導者がたくさんいます。おそらく、そのすべてが、山田みどり先生の生徒たちで、いわば1本の大木からいくつもの枝が育ったということです。墨絵というのはとても独特なもので、観る人たちの興味をそそります。一番大切なのは、その作品が観る人の感情に訴えかけるということです。しかも、受け手が感じたものが、画家がその絵に込めたものではないこともあるのです。
しかし、その絵が人の心に何か呼び起こしたとしたら、それは素晴らしい作品だということです。オープニングには、プロの画家がたくさん足を運んでくれ、ナタリヤ・ベズヴリャークの『りんごの枝』という作品を高く評価してくださいました。この作品は理想的なものだとわたしは思います。コンポジションも明快で、画法も非常に個性的です」
オリガさんによれば、墨絵(水墨画)を描いているのは、ただそのプロセスが好きだからという人が多いが、しかしその中の多くの生徒が、全日本水墨画会が組織するものを含め、国際展覧会に出展できるレベルに達しているという。
アンドレイ・ヴェルホフツェフさん - Sputnik 日本, 1920, 10.04.2023
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しかし、墨絵という芸術が、ロシアで生まれたのではなく、日本からロシアに伝わったということには驚かされる。というのも大部分のロシアでは、1年のほぼ半分という長い期間、白い雪と黒い木々のシルエットという世界が広がっており、白い紙に黒い墨で表すこの芸術が非常にぴったりだと感じられるからである。ちなみに、墨絵は14世紀に中国から日本に伝わったが、ロシアでは世俗画の歴史は17世紀になってようやく始まったものである。それまでは聖像画(イコン)や聖堂のフレスコ画を描くことしか許されていなかったのである。
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