上川新外相は衆議院当選7回のベテラン議員で、党内では総裁派閥の岸田派に属する。東大、米ハーバード大出身の才女で、政府内で数々の要職を歴任。法相時代の2018年には、オウム真理教事件の死刑囚13人の執行を命じたことでも知られている。
就任から一夜明け、初登庁した上川外相は記者会見に臨んだ。そこでは対露政策にも言及している。
「ロシアに対して強い制裁を行っており、今後もしっかりと進めていく。
同時に、日露は隣国だ。例えば、漁業などの経済活動や海洋における安全など、日露が隣国として対処する必要のあることには、何が我が国の国益に資するかという観点から適切に対応していく。
北方領土問題に関しては、領土問題を解決して平和条約を締結する、との方針を堅持する。北方墓参をはじめとする交流事業の再開は、今後の日露関係の中でも最優先事項の一つだ」
上川外相の発言は、林芳正前外相や岸田首相の従来の方針と完全に一致しており、真新しいことはない。ウクライナ情勢に関するお決まりのロシア批判もあった。
ロシア科学アカデミー・極東研究所日本センターのワレリー・キスタノフ所長は、上川外相の発言について次のように説明する。
「これは日常的な声明以上のものではない。今、公にロシアを非難することが、日本の政府高官にとって有益なテーマとなっている。
昨今の日・ウクライナ間の会談で出た支援を考慮すれば、日本政府のウクライナに関する政策はより踏み込んだものになっている。こんな状況で平和条約交渉など、しかも日本側の条件でできるはずがない」
岸田首相は13日の会見で、上川外相の起用について「国際人脈が豊富で、閣僚としても経験豊富」であることを理由に上げている。一方、キスタノフ所長はこれについて次のようにコメントしている。
「上川氏は確かにベテラン政治家だが、外交分野での経験はほとんどない。物事を決めるのは外務省の官僚だ。今回の内閣改造が国内問題をもとになされたことを考慮すれば、日本のロシアへのアプローチは変わらないだろう」
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