RouteХは何をしている会社?
大森さん:「弊社RouteXは、海外のスタートアップエコシステムのリサーチとコンサルティングを主に行っている会社です。例えば、日本の会社がロシアのスタートアップと一緒にビジネスをしたい、或いはその逆の場合に、日本やロシアのマーケット事情をお伝えし、リサーチ・コンサルティングを行うことで進出をサポートします。ロシアと日本のスタートアップの架け橋になる会社は少なく、そこにRouteXはチャンスを見出しています。実はロシアだけでなく、シリコンバレーや、東南アジア、中東などに対してもビジネスを行っていますが、特にロシアに注力しています。」
どうしてロシアにフォーカスすることになったのか?
大森さんはロシアだけでなく、旧ソ連諸国にも詳しい。ウクライナ、ベラルーシ、アゼルバイジャン、カザフスタン、キルギスなどで、広くリサーチを行い、旧ソ連地域にもスタートアップエコシステムの強みが様々あると話す。
ロシアの第一印象は? どこが魅力?
スコルコヴォで最も記憶に残ったことは?
大森さん:「例えば、義手、つまり腕を失くしてしまった人にロボットアームをつけるというスタートアップがあり、ただロボットアームをつけるだけではなく、そこからスマホを操作できたり、普通の人以上の握力で重い物を持てたり、いわゆるトランスヒューマニズムと言われるような、『人とテクノロジーの合体』という部分において、ロシアではかなり先進的だと感じました。実際、そこのスタートアップの方とミーティングをさせてもらった際には、日本の一番大きい会社と話が進んでいると聞いています。」
(大森さんのスコルコヴォ訪問についてはこちらに詳しく書かれている。)
ロシアと日本のビジネス慣習の違い
スプートニク:ビジネス慣習の違いにはどのようなものがある?
大森さん:「例えば、ビジネスを進めるに当たってのスケジュール感や契約書の中身など、いわゆる『クリアライン』の設定ですね。例えば、日本では99%以上の完成度がないと次に進められない場合が多いかと思います。一方、他の国はトライアンドエラーを素早く行うので、完璧でなくとも彼らの基準を満たしていれば次に進んでいくスタイルをとっています。日本と海外の間では、どうしてもこのギャップが大きすぎて、日本側が準備に時間をかけている間に断られてしまうパターンが多く、ロシアにおいても同じような状況になっている印象を受けます。このような問題が発生しないためにも、弊社がしっかりサポートしたいと思っています。」
ロシアに進出する日本のスタートアップは何社ある? 日本に進出するロシアのスタートアップは?
大森さん:「何故双方のスタートアップの進出があまり進んでいないかと言いますと、日本の企業でロシアのマーケットにアプローチしている会社は、ほとんどが大企業、特にエネルギー関係・自動車関係など資源を輸出入するような大きな会社です。またロシアで起業されている日本人の方もほとんどいない状況で、非常に少ないです。
日本で活躍されているロシアのスタートアップといえば、LikePay、あとは最近、弊社が支援させていただいている『SE-Japan』という日本語を学習するためのアプリをロシア語話者向けに作るようなスタートアップが出てきていますが、数えれる程しかいない状況です。なので、日露のスタートアップという意味では本当にまだまだこれからというのが現状です。」
日露スタートアップイベント
日露初の大規模なスタートアップイベント「Japan-Russia Startup Online Conference(日露スタートアップ・オンライン・カンファレンス)」が昨年9月、在日ロシア大使館後援、RouteX Inc.、ロシア連邦国際文化科学協力庁、モスクワ大学サイエンスパーク、欧亜創生会議の共催で開催された。
それ以降、オンラインの日露スタートアップイベントが少なくとも毎月1回は開催されている。
RouteXが支援しているのは日露のスタートアップイベントだけではない。3月に開催された、ロシア大使館/ロシア連邦文化協力庁主催による、ユーリイ・ガガーリン人類初宇宙飛行60周年記念写真展セレモニーもRouteXが支援した。
欧亜創生会議を通して、日露のビジネス創出に貢献
大森さん:「欧亜創生会議にはRouteXとしても協賛企業として入っています。スタートアップだけでなく、日露のビジネス創出という点で主に支援させていただいています。これまでの日露の関わり方は、どちらかというと文化交流がメインでした。例えば、日本のアニメや茶道、或いはロシアの食べ物や、ダンス、オペラ、バレエなど。一方で、ビジネスの面においては交流が少ないことが顕著でした。そのため欧亜創生会議では日本人向けに「インスピリッツ」という雑誌を発行していて、まずはロシアのマーケットを知ってもらい、そこから興味を持たれた方にはご相談をお受けして、様々なサポートをさせていただいています。」
今後の計画について
このほか大森さんは、ロシアで事業を行う日本人に現地で支援を提供するため、近いうちにモスクワのオフィス開設も考えていると教えてくれた。
スタートアップを起こすには、何から始めればいい? スタートアップに入社するには?
スプートニク:残念ながら、日本人は大学でロシア語を勉強しても、大学を卒業後、ロシアとは関係のない仕事を選ぶことが少なくありません。その最大の理由が、起業の仕方が分からない、ロシア関連の仕事を見つける方法がわからないというものです。そうした人にアドバイスするとしたら?
スプートニク:それは、もともとロシアについて詳しい知識を持っていない人でもできることなのでしょうか?
スプートニク:最後にお聞きします。多くの人は、スタートアップはリスクが大きいと言って躊躇します。これについてどう思いますか?
今回お話をお伺いし、RouteXや大森さんが日露のスタートアップ・エコシステム拡大に向け、様々な関係者と連携しながら直進している事が改めて分かった。日露の経済交流がさらに活性化していく未来に向けて、RouteXの今後の活躍が楽しみである。
今回取材した大森さんのプロフィール
海外渡航歴60カ国、学生時代にシリコンバレー、イスラエル、ロシア等でのインターンや調査を経験。海外のスタートアップ・エコシステムのリサーチを専門とし、世界中のスタートアップのビジネスモデルやテクノロジーの分析を行なっている。ロシアや旧ソ連地域が得意。シリコンバレーで毎年開催されるFacebookの最も重要なカンファレンス「F8」にて2019年度は日本人で唯一「F8 Hackathon」に参加。シリコンバレー発の世界最大のエンジニアとスタートアップのコミュニティFacebook Developer CirclesとAngelHackの日本運営代表を務めている。京都大学MBA (経営学修士) 修了