西側諸国によるウクライナへの兵器供与

米戦車「エイブラムス」 9月中旬にも最初の10両がウクライナへ=米誌

米国はウクライナに供与を約束した戦車「M1エイブラムス」の第1弾として、9月中旬にも10両を引き渡す。米誌「ポリティコ」が8月31日、匿名の米国防総省関係者の話として伝えた。
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同誌によると、今回ウクライナに引き渡されるのは供与を表明したエイブラムス31両中10両。現在はドイツで修理を行っており、完了次第ウクライナに輸送される。
同誌はこれまでに9月中に最大8両が引き渡されると報じており、これに2両が前倒しで加わった形となる。
米国欧州アフリカ陸軍司令部のマーティン・オドネル報道官によると、米国は秋に31両の戦車供給を加速させるとしている。また、すでに200人のウクライナ兵がドイツの米演習場で訓練プログラムを修了したという。
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言うは易く行なうは難し

西側諸国のウクライナへの戦車供与は1月、英国の「チャレンジャー2」を皮切りに相次いで発表された。米国は「レオパルト2」の供与を渋るドイツに散々圧力をかけた挙げ句、自身のエイブラムスの供与は何かと理由をつけて先延ばしにしてきた。
それから約8ヶ月が経ち、ようやく最初の10両が引き渡されることになった。だが、当初約束していたM1A2改良型ではなく、旧式のM1A1型の供与となった。国防総省は、「M1A2を30台送るには1年近くかかるのに対して、M1A1を刷新した場合は秋までに送ることができるため」と説明していた。
時間がかかる理由について「改修」の必要性が挙げられているが、その作業にはロシアに渡れば都合の悪い機密技術で作られた部品を外す作業も含まれているとの見方もある。オリジナルの改良型には、最新鋭の射撃管制システムや熱画像パノラマ照準器、劣化ウランを使用した装甲など多数の先端技術が盛り込まれている。これらを取り外し代わりのパーツをつけるとなると時間がかかるのも無理はない。
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燃料をむさぼり食うブタ

「奇跡の兵器」と名高く、ウクライナ紛争の転換点となると信じられていたドイツのレオパルトだが、6月の反転攻勢開始から少なくとも25両が失われ、期待外れに終わった。まだ本格的に実戦投入されていないチャレンジャー2についても、少量のこれら戦車があるだけで戦場での流れを変えることは望めないというのが軍事専門家の見方だ。エイブラムスがどれほど役に立つのかは未知数だが、突破口にはなりえそうにない。
ウクライナ軍にとっての運用上のデメリットもある。エイブラムスは米メディアでさえ「燃料をむさぼり食うブタ」と評価するほど、燃費が悪いことで知られている。起動させるだけで6リットルの燃料が必要で、その後は1リットルあたり200メートルしか進めない。1両辺りで1日2000リットルを消費する。しかも、ただのガソリンではなくジェット燃料だ。31台そろったときに必要になる補給網確保の困難さは想像に難くない。
さらに、ロシアの戦車「T90M」が約48トンなのに対し、エイブラムスは67.6~73.6トンとかなりの重量級だ。イラクやアフガニスタンなどの荒野での戦闘とは違い、ウクライナの泥地では身動きが取れなくなる可能性がある。また、露戦車が渡れる小さな橋は、エイブラムスの重さに耐えられないという事態も想定される。

ロシアの退役大佐が、ウクライナ軍への引き渡し準備が進められているエイブラムス戦車の主な欠点を指摘

ロシアの退役大佐で軍事専門家のアナトリー・マトヴィチュク氏は、ウクライナ軍向けの米製戦車エイブラムスは新型車両ではなく、中古だと指摘した。同氏によると、エイブラムスの主な欠点は、ガスタービンエンジンが採用されていることで、これはイラクで期待に応えることができなかった。
ガスタービンエンジンは加速が可能で音が静かだが、大量の燃料を消費し、特に起伏に富んだ地形では航続距離が短くなる。したがって、マトヴィチュク氏によると、米国はあとになってドイツでエイブラムス用の新しいエンジンを注文した。すなわち、ウクライナに供与されるエイブラムスのエンジンは何も問題がないわけではないとマトヴィチュク氏は強調する。
同氏は、改修されたウクライナ軍向けのエイブラムスとロシアの軍用車両を比較した場合、ロシアのT-90戦車はあらゆる点で「米国製」より優れているとの見方を示している。同氏によると、米国のエイブラムス戦車は、1970年代初頭にソ連で製造されたT-72戦車の近代化バージョンと同一視できるという。
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