クナシル近海のホッケ漁見通し立たず 露日漁業交渉の行方は

ロシア極東のクナシル島(日本名:国後島)近海で、例年9月中旬に露日の協定をもとに解禁されるホッケ漁の「安全操業」ついて、今年は政府間協議が10月に入っても始められない事態となっている。2日、NHKが伝えている。一方、これまでの両国の漁業交渉の結果を見てみると、日本側は完全に望みが絶たれたわけではなさそうだ。
この記事をSputnikで読む
NHKによると、クナシル島近海でのホッケ漁は、露日協定をもとに例年9月16日に解禁されていた。だが、今年は10月に入っても交渉すら開始されておらず、露日領海の中間ラインの日本側で操業しているという。また、例年10月16日から始まるタコ漁についても見通しが立っていない。日本水産庁は「ロシア側からの操業実施に向けた肯定的反応がみられない」としている。
ロシア外務省は今年1月、南クリル諸島(日本でいういわゆる北方領土)における露日漁業交渉について、日本政府の対露制裁の環境下では協議できないと声明を発表。同省は岸田文雄首相とその政権が外交規範と国際法に違反してロシアに対する非友好的措置を取ったと指摘した。
ロシア、米国やノルウェーなど非友好国の水産加工品を輸入禁止 日本は対象外

日本にチャンスはないのか

ただ、日本側の望みが潰えたとみるのはまだ早い。露日関係が悪化して久しいが、これまで遅れが出たり条件付きでありながらも妥結している漁業協定もあるからだ。
2022年6月、露外務省は日本政府が協力金の支払い義務を果たすまで、露日間の漁業協定の履行を停止すると発表。しかし、その後日本政府は必要な手続きを済ませ、ロシア側は態度を軟化。昨年のホッケ漁は例年より2週間ほど遅い9月30日から開始した。
一方、ロシアの川で生まれたサケ・マスに関する漁業交渉については、露外務省の厳しい姿勢にもかかわらず、3月末に妥結。ロシア水域での試験操業については昨年に引き続き見送られたものの、日本水域での操業は例年と同じ4月10日から解禁となった。協定署名が4月25日にずれこんだ2022年よりは、むしろ前進している。
さらに、ハボマイ群島(日本名:歯舞群島)近海で日本漁船がロシア側に入漁料を払い行うコンブ漁についても、日本側の窓口となっている北海道水産会とロシア側とで4月中に交渉妥結。例年と同様に6月1日の出漁に間に合った。昨年は露日関係悪化の影響で妥結が6月までずれこみ、実際の出漁は同月22日からとなっていた。
これまでに今年のホッケ漁に関するロシア側の公式コメントは出ていない。一方、日本側はこれまでにエネルギーや漁業分野におけるロシアとの関係を維持する方針を示しており、9月に就任したばかりの上川陽子外相も「漁業などでは何が我が国の国益に資するかという観点から適切に対応していく」と述べている。
関連記事
クリル諸島での漁業は日本の漁業者にとって死活問題=鈴木貴子議員
処理水放出 露科学者による魚介類の初の分析結果が明らかに
コメント