【視点】日本の防衛装備のNATO規格化 全ては戦争のためなのか

CC BY-SA 2.5 / TKN / 5.56 x 45 mm NATO5.56x45ミリの弾薬
5.56x45ミリの弾薬 - Sputnik 日本, 1920, 26.06.2023
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日本の防衛省は、日本の防衛装備品の規格を米欧などの友好国と統一することを検討している。これに関して、防衛省は要件や金額など詳細を詰め、2024年度予算案の概算要求に盛るとしている。この提案はきわめて周到な表現で行われていることから、実際のところ何を意味しているのか理解するのは簡単ではない。
メディアでは、防衛省は防衛品に対する予算が増加することに懸念を抱いており、こうした出費を抑えるために、友好国との協力を拡大したい考えだと指摘されている。また、戦車や航空機、艦船の製造に関与する9000社以上が名を連ねる防衛産業が自国の製品を輸出する可能性を手にすることになるとも言われている。日本政府は、国内の防衛企業が利益を上げられるようにすることを目的に、防衛品の輸出に対する制限を緩和する意向である。
すべてははっきりしているように思われるが、問題は複数ある。
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戦争のために行われる規格統一

防衛品、武器、弾薬の規格統一は、同盟国の間で、軍事行動での合同参加のために行われるものである。規格を統一することで、戦場で非常に重要な、部隊の補給を簡素化することが可能となるからだ。
これに関する例は枚挙にいとまがない。NATO(北大西洋条約機構)の一連の兵器、弾薬、部品などの現在の規格は、NATOの全加盟国が、ソ連を中心とするワルシャワ条約機構の国々を相手とした戦争に難なく参加できるようにするために作られたものである。
たとえば1954年、NATOは7.62x51ミリという弾薬筒の規格を採用し、これにより、英国、イタリア、フランス、ドイツの弾薬筒は除外された。そしてこの弾薬筒に合わせて、94種類のライフル銃や機関銃が製造された。1970年代、ベトナム戦争の経験を経て、NATOは5.56x45ミリという新たな規格に移行した。そしてこの規格に合わせて、135種類の銃器が製造された。つまりNATO諸国がどのような銃器で装備されていたとしても、戦闘を行うにあたっては同じ弾薬が用いられたのである。
これは、NATOとの戦争に備えていたワルシャワ条約機構の国々の中でも同様であった。7.62x39ミリ弾に合わせたライフル銃、機関銃が47種類、5.45x39ミリ弾に合わせた銃器が35種類作られた。ソ連は同盟国に大量の兵器を供与し、また武器や弾薬の工場の建設に尽力した。規格の統一により、中国やエジプトの「カラシニコフ」を手にした反乱軍がチェコやブルガリアで製造された弾薬筒を使用できたり、あるいはその逆のことも可能になった。
ちなみにこうしたことは日本の戦争史においても起こったことである。大日本帝国軍は、自身の部隊に日本製の武器を与えた。満州軍、中華民国国軍も、日本の三八式歩兵銃や三年式機関銃、十一年式曲射歩兵砲、三八式野砲などで装備していた。
概して、規格統一というのは戦争のために行われるものである。規格を統一することで、同盟軍が共通した後方の組織を持つ統一軍にまとめることが可能となるのである。
つまり、日本の防衛省が自国の装備品や技術の規格を米欧諸国のもの―つまりNATO諸国の規格と統一させると言い出したということは、参戦するにあたり、この軍事ブロックに統合しようとしていることを意味している可能性がある。
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規格は防衛品の販売においては最重要ではない

防衛品の輸出入に関する提案はより興味深い。基本的に、日本は防衛品において、主要な輸出国になる可能性がある。しかし、売買を行うためには、NATOの規格に移行する必要がある。というのも、多くの防衛企業が、注文主の要求に合わせて防衛装備品を製造しているからだ。
たとえば、企業グループ「カラシニコフ」は2020年より、輸出のため、5.56x45ミリのNATO弾に合わせた小銃AK–19を製造している。この弾薬はロシア軍では使われていないものである。
中国はより興味深いことを行っている。中国は、バングラデシュ軍のために69式戦車(ソ連のT–55戦車を基に作られた)とNATO諸国の規格であるドイツの44口径120ミリ滑空戦車砲とを掛け合わせたのである。ちなみに、日本の九十式戦車にも、日本でライセンス製造された同じ戦車砲が装備されている。
加えて、忘れてはならないのは、武器が供給される場合、そこには普通、弾薬、部品、修理などさまざまなサービスが含まれているということだ。
戦車も弾薬と合わせて調達される。たとえば、ある国が200台の90式戦車を10の弾薬セットとともに購入したがっているとする。弾薬セットは、戦車に搭載される砲弾の数である。90式戦車には42発の砲弾が搭載される。つまり、200台の戦車を調達した場合には、8万4000発の砲弾も購入することになるのである。
これは部品についても同様である。戦車も、航空機と同様、スペアのエンジン、消耗品、部品、メンテナンスに必要な品々と共に購入される。そして供給者は機械技師に修理やメンテナンスの方法を指導する。
というわけで、注文主にとっては規格は最重要なものではない。重要なのは、装備品や武器の信頼性が高いこと、戦闘能力があること、そして価格が適正かどうかである。
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しかし、日本の装備品の戦闘能力については、大きな疑問がある。日本は1945年以来、戦争を行っておらず、日本の防衛品は70年以上、戦闘で使用されていない。
戦闘条件での試験に送られたこともおそらくないと思われる。これはもっとも深刻な問題である。なぜなら、日本の防衛品や武器が現代の戦闘で持ち堪えることができるかどうか、誰にも判断することはできないからである。たとえば、10式戦車は演習場でも故障している。

軍事産業の拠点としてのNATOへの統合

世界の二大武器輸出国といえば、米国とロシアである。この2つの国の武器や兵器は世界中で戦闘に使用されてきた。おそらく、過去70年で、ソ連やアメリカの兵器が使用されなかった戦争を見つけるのは不可能であろう。そこで注文主たちは、これらの国の兵器を購入するのに際し、これらが戦闘で使える武器であることを確信している。
戦闘で使われることは、武器を完璧なものにするのに非常に重要なものである。それぞれの戦いの中で、武器の修正が行われ、改良される。修正や改良は小さなものであることもあれば、きわめて重要なものであることもある。
そしておそらく今、ウクライナでの実戦において、この2つの兵器製造大国とその同盟国が作る武器や兵器の最大の実験が行われている。この戦いの中で米欧の兵器が、宣伝されていたような性能を有していないことが明らかになった。M1A1エイブラムス戦車の次に優れているとされていたレオパルト2A6も簡単に撃破されたことがこのことをはっきりと証明している。
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日本の防衛装備品は戦闘で使用されたことがないばかりか、米欧のモデルを基に開発されたものである。こうした事実が、世界の防衛産業市場における日本製品の立場をきわめて弱いものにしている。もしかすると、日本の企業は、防衛装備品の製造技術をソ連またはロシアから習得すべきなのではないか。少なくとも、これらの製品には需要がある。
もちろん日本がカラシニコフ銃や戦車T−72、ミグ29戦闘機などを製造することは想像もできない。こうした観点から見て、防衛装備品の輸出のための条件を作るという防衛省の提案は、日本が事実上、NATO諸国にとっての軍事産業の拠点をなることを意味している。そうであればすべての疑問は消えていく。
まず、NATO諸国への供給を行うためには、NATOの規格に合わせなければならない。第二に、NATO諸国は現在、さまざまな軍需品の供給を必要としている。そして第三に、日本は直接的あるいは間接的に、ウクライナ軍への支援への参加者となることを避けられないのである。ただ、これは日本が完全に自衛の政策を棄て、事実上NATOという軍事組織に統合したことを意味するのである。
日本はこうした決定に対する対価を受けることになるだろう。それは核攻撃である可能性も除外できない。
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