【視点】利益獲得も想定し、防衛費を増大する日本

日本の防衛省は2024年度予算案の概算要求に7兆円以上の防衛費を計上する調整に入った。この数字は2023年度の6兆8000億円規模を大幅に上回らないが、今後、防衛費を徐々に増額し、2027年には、NATO(北大西洋条約機構)の基準である国内総生産(GDP)比2%にするという政府の方針に合致したものである。
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この概算要求に、国産の長射程ミサイルの早期導入に必要な費用が盛り込まれていることは注目に値する。とりわけこれは、三菱重工業が開発する「12式地対艦誘導弾」の、射程を延長した能力向上型の開発の費用である。射程は現在の数百メートルからおよそ1000キロメートルに延長されることになっており、これで北朝鮮と中国を射程内に収めることとなる。さらにこの予算には、配備を断念した陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」(陸上イージス)に代わるイージスシステム搭載艦2隻の建造開始に必要な費用も含まれている。
【視点】台湾有事に際し、日本は参戦不可避か
この数年、日本は防衛費の支出額で、米国、中国、ロシア、英国、インドなどの国に大きく差はつけられているものの、世界10位の水準となっている。
しかし、2022年12月に、敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有の方針が示された新たな国家防衛戦略を策定して以来、日本はより射程の長いより高度な兵器を必要とするようになり、これに伴い、防衛費も増大した。これは、憲法において、戦争を国際紛争の解決の手段とすることを放棄している戦後日本の安全保障政策において深刻な一歩である。
中国・現代アジア研究所日本研究センターの主任研究員、オレグ・カザコフ氏は、日本の政治において、防衛力強化の傾向は明白であると指摘している。

「かつては日本の安全を米国が保証しており、どちらにとってもそれで良かったわけですが、現在、米国は、地球上―とりわけインド太平洋地域のあらゆるリスクや脅威を分析した上で、日本に対して、真剣に自国の安全保障について考える必要があると説得しました。

もし台湾をめぐる軍事紛争が起こった場合、米国は日本なしでは対処できません。そんなわけで、日本は自国の防衛能力を強化し、防衛費をGDP比2%まで増額し、NATO諸国、そして地域の同盟国との協力を活発化させているわけです」

オレグ・カザコフ
中国・現代アジア研究所日本研究センター、主任研究員
【視点】日本の防衛装備のNATO規格化 全ては戦争のためなのか
地域諸国の協力強化の一例として、カザコフ氏は、インド、日本、米国、豪州が参加して8月11日からスタートした海上共同訓練「マラバール」を挙げている。またカザコフ氏は、6月に日本と豪州が、防衛分野での技術協力を推進するため、共同研究を始める際の手続きを簡素化する覚書に署名したほか、米国、日本、韓国の3カ国による同盟関係が活発化している点についても指摘している。
そしてもしこの3カ国が、共同訓練およびデータ・情報交換などに関する確固としたメカニズムを確立すれば、これは中国抑止に向けたインド太平洋地域におけるきわめて重要なファクターとなる。カザコフ氏は続けて次のように述べている。

「とはいえ、兵器には莫大な資金が必要です。しかし見返りはありません。一方、日本は潜水艦や爆撃機を含め、最新の技術を持つことで知られています。ですから、世界の市場において需要が高い兵器の製造に力を注いでいます。

しかし、防衛費の承認には、日本の国民に防衛費の負担を感じさせないようにするにはどうすべきかという議論が避けられません。

そこで日本は、防衛費を受動的に増額しているのではなく、防衛産業が国に利益をもたらすことができるような形で兵器の生産を新たなレベルに押し上げています。つまり、日本が世界の兵器貿易に参画できるようにするということです。グローバル戦略航空プログラム(GCAP)の枠内で、日本、英国、イタリアはすでに、第6世代戦闘機の開発について合意しています。そしてクアッドの枠内では潜水艦建造プロジェクト実現の可能性も除外されていません」

オレグ・カザコフ
中国・現代アジア研究所日本研究センター、主任研究員
最後にカザコフ氏は、日本は憲法の基本的な原則に、できる限り違反することなく、完全な軍事大国になろうとしていることを隠そうともしていないと締めくくっている。自民、公明両党は、防衛装備品の輸出品目拡大についての協議を8月23日に再開する。
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