「ロシアでないとすれば一体誰なのか」
「ノルドストリーム」のガス漏れが発覚した後、EU首脳陣はこれが「意図的な攻撃」によるものである可能性を示した。ロシア大統領府は同年9月28日、欧州諸国からの事件調査の要請を検討する構えだと述べた。しかし、ロシアはデンマーク、ドイツ、スウェーデンが開始した調査に参加することを許されなかっただけでなく、自国のガスパイプラインを爆破させたとの非難を浴びた。その後、欧州と米国はこの言葉を撤回した。
この事件で本当に得をしたのは誰か
同年10月12日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はこの事件を「安価なエネルギー源を破壊するための国際的なテロ行為」とした。
注目すべきは、米国が最終的に主な受益者となったことである。米国は欧州諸国と液化天然ガス(LNG)供給の有利な契約を結ぶことに成功した。これには、ジョー・バイデン米大統領がノルドストリームを破壊すると公然と脅迫した事実が考慮されていない。
そしてこの言説が、米国で初めて公に語られた。ピューリッツァー賞を受賞した米国人記者のハーシュ氏が同年10月8日、ノルドストリーム爆破事件の調査に関する記事を発表したのである。その記事では、同年夏に行われた北大西洋条約機構(NATO)の軍事演習「バルトップス演習」の際、米国人ダイバーがノルドストリームの下に爆薬を仕掛け、その3カ月後にノルウェー人が作動させたと述べられている。ハーシュ氏によれば、破壊工作は、バイデン大統領が国家安全保障チームとの9ヶ月以上に及ぶ秘密協議の末に決行。その動機は、冬が近づいてきたためにドイツがロシア産天然ガスの受け取りを再開するのではないかという懸念であるという。
事態はますます複雑に
ハーシュの記事を西側メディアが取り上げなかったのは理解し得る。もっとも、彼らは自分たちの犯人を特定していた。今年3月7日付けの米紙「ニューヨーク・タイムズ」は、諜報機関の話を引用し、ノルドストリームに対する攻撃は親ウクライナ派が仕組んだと報じた。同紙によると、西側諸国は兵器供与を行うため、この破壊工作での「ウクライナの痕跡」を隠蔽したという。
ここで注目すべきは、1500キロから2000キロの爆薬が15mのヨット「アンドロメダ号」で運ばれたことである。今年8月末、ドイツメディアはこの言説について再び言及した。
答えはまだ見つかっていない
スウェーデン、デンマーク、ドイツの3カ国で公式調査が実施されたにもかかわらず、誰が破壊工作を実行したのかという疑問が解決されていないのは驚くにあたらない。米CIA元職員で現在は「国益協議会」事務局長のフィリップ・ジラルディ氏はこう語る。
「調査が3回行われたという事実は、調査を実施した3カ国全てがNATO加盟国である以上何の意味も持たない。したがって、ロシアやウクライナが自ら実行したという論拠に異を唱える動機などないだろう」
またジラルディ氏は、CIAと国防総省に信頼できる情報源を持つハーシュ氏の話を疑うのは難しいと語る。さらに、米国はそのような作戦を実行する動機だけでなく、能力も持ち合わせているという。
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