1. 安倍晋三元首相殺害事件
7月8日、安倍晋三元首相は奈良市の近鉄大和西大寺駅前で参議院選挙の応援演説中に凶弾に倒れた。日本の憲政史上、最長の在任期間を務めた安倍元首相の突然の死に、日本国内のみならず世界に衝撃が走った。
事件で殺人容疑で送検され、現在鑑定留置中の元海上自衛官・山上徹也容疑者(42)は、自作の銃で犯行に及んだ。何度も下見をして襲撃の機会をうかがっており、計画的な犯行だったとみられる。動機については、宗教団体「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」に母親が多額の献金を重ねたことで家庭が崩壊し、旧統一教会と安倍元首相がつながっていると考えていたことから一方的な恨みを持っていたとされる。また、後述のように旧統一教会と政治家のつながりや、霊感商法といった問題も事件をきっかけに明るみに出た。
一方、事件は要人警備の問題点や国葬をめぐる議論にも発展した。
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)
© AFP 2023 / Kazuhiro Nogi
2. 旧統一協会をめぐる問題
安倍晋三元首相殺害事件では、事件の遠因となった旧統一教会と政治家の関係にもスポットがあたった。
岸田文雄首相は旧統一教会との関係を断つ方針を示し、霊感商法などによる多額の献金の被害者や家族の救済に全力で取り組むと表明した。
一方、国会では旧統一教会による被害者を救済するため、悪質な寄付を規制する被害者救済法案が12月、与野党の賛成で成立した。法人などが霊感商法などで不安を煽り寄付を求めるなど、個人を当惑させる不当な勧誘行為を禁止。マインドコントロールによる寄付の禁止をめぐっては、法人側に対して個人の自由な意思を抑圧しないよう「十分に配慮すること」を定めた。
円安
© AP Photo / Hiro Komae
3. 記録的円安、1ドル=151円台、32年ぶり
世界経済における供給網の混乱やエネルギー価格の高騰、日本と諸外国の金利差の拡大などで、今年3月以降に急速な円安が進んだ。年初に1ドル=115円だった円相場は10月21日には一時151円台にまで下落し、32年ぶりの円安となった。政府・日銀が覆面為替介入を行うなどしたが、12月現在でも1ドル=130円以上の記録的円安水準が続く。
円安の影響は経済や生活にも色濃く現れた。昨年から続くガソリン高に拍車がかかり、レギュラーガソリン価格の全国平均は170円を突破。また、夏にかけ東京電力、関西電力など電力各社が電気料金の値上げに踏み切った。
一方、円安の恩恵を受けている企業もある。9月中間連結決算で大手商社は、伊藤忠商事を除く6社の最終利益が過去最高を更新。資源価格の高止まりと円安が業績を押し上げたことが原因だという。日本が誇るテレビゲーム業界も円安が利益を押し上げている。だが、今後は世界的な景気後退も懸念され、業績に悪影響が出る可能性もあり、安泰とはいえないようだ。
北海道知床沖で連絡が途絶えた観光船「KAZU 1」
© 写真 : Shiretoko Pleasure Boat, Shari-cho
4. 知床観光船沈没事故
4月23日、北海道知床半島の沖合で乗員乗客26人が乗った観光船「KAZU 1(カズ・ワン)」が沈没した。これまでに20人が遺体で発見され、6人が未だに行方不明となっている。「KAZU1」の船体は事故から約1ヶ月後、182メートルの海底から引き上げられた。
国の運輸安全委員会は12月、船の前方のハッチが開いた状態だったため海水が流入したとする報告書をまとめた。船首区画の隔壁を密閉していれば沈没を防げた可能性があると指摘している。
北海道放送など日本メディアによると、第1管区海上保安本部は、「KAZU1」運行会社の桂田精一社長を業務上過失致死容疑で2023年にも立件する方針で捜査を続けている。桂田社長は船の不具合を放置した上に、悪天候のなか運行を強行した疑いが指摘されている。
5. 五輪メダル最多18個 W杯、強豪の独・西を撃破
悲しい事件、事故、政治や経済の混乱が相次いだ一方、明るいニュースもあった。2022年は日本のスポーツ選手の世界大会での活躍が日本中を大いに沸かせた。
11~12月に開催されたサッカーワールドカップ(W杯)でもサムライジャパンの快進撃に日本中が熱狂した。