米国はこれまでにも、ウクライナで使用する兵器の供給に関してロシアは北朝鮮と協力している可能性があると何度も述べてきた。ロシアはそうした発言を繰り返し否定してきており、それだけではなく、北朝鮮もこれを否定してきた。アレクサンドル・マツェゴラ駐北朝鮮ロシア大使は、北朝鮮がロシアに弾薬を供給することなどあり得ない、北朝鮮は今、事実上、戦争開始前の状態にあり、武器備蓄は北朝鮮自身にこそ必要だと指摘している。
スプートニクは、西側が何を見返りに求めて、北朝鮮からの秘密の武器供給の脅威を吹聴しているのかについて、専門家と共に検証を試みた。
「根も葉もない」情報
ロシア科学アカデミー、中国現代アジア研究所、朝鮮調査センターの上級研究員のキム・ヨンウン氏はスプートニクからの取材に対し、こうした根も葉もない情報が目指すところは、ロシアはあまりにも弱体化してしまい、北朝鮮のような国にさえ武器をくれと頼む有様だと言うことを示すところにあると話している。
キム氏は、ロシアが他国から武器を買い漁っていることを確証する確たる証拠は一切ないばかりか、そんなことをしてもロシアには何もならないと断言している。全ての西側諸国が一丸となり、事実上「10億人の人間が束になって」ロシアに対抗している中にあっても、ロシアは一国で切り抜けているからだ。
キム氏は、欧米がロシアと北朝鮮が武器供給交渉論を吹聴せざるを得ない理由はもう1つあると見ている。その目的は自国の抱える問題から国民の目をそらすことにある。
「欧米はウクライナで敗北を期しているため、今は何とかして注意を他にそらしたい。米国は選挙を控えている。 選挙で確実に勝利する最善の方法は、外部の脅威で国民を脅かすことだ。どこか、別の国に対して軍事紛争が開始されたが、勇敢な指導部(米国)は国を守っているというふうに吹聴するわけだ」
キム氏はロシアと北朝鮮は実際に協力を拡大すると考えている。ロシアと北朝鮮が軍事技術協力を再開した意図は、米国とその同盟国に対して、朝鮮半島で紛争を起こそうとするなと警告を発することにある。
その先はどうなる?
キム氏は、米国とその同盟国は、ロシアと北朝鮮の武器供給交渉をテーマに取り上げ、欧米がウクライナでやらかした失敗から注意をそらそうとしつつ、この地域で北朝鮮に対して何らかの挑発行為を組織する恐れがあると考えている。
キム氏は、先日の米韓とその同盟国による軍事演習「ウルチ・フリーダム・シールド」には約40万人が参加しており、その人員の数よりも構成に問題があったことを指摘している。
「(軍事演習には)米国、英国、カナダ、豪州、ニュージーランド、フィリピンの軍隊が参加した。これは何を示しているか? これらは朝鮮戦争で米国側について戦った国々だ。演習が想定した事態は、北朝鮮が攻撃し、彼ら(参加諸国)は北朝鮮の意思決定センターと最高指導部を攻撃したというものだった」
キム氏また、ウクライナでの特別軍事作戦は、一部の国は一般市民の住む町を砲撃し、ミサイルを撃ち込むなど、核保有国ロシアに対して、攻撃的に振る舞えることを示したと付け加えている。このことから考えれば、米国が国内に問題を抱えるが故に、勝てばこちらものもだと判断して、北朝鮮との衝突を決断する可能性も排除はできない。
こうしたのニュースにロシアが冷静な反応を示したことは注目に値する。ロシアのショイグ国防相は先に記者団に対し、ロシアと北朝鮮が合同演習を行う可能性も否定できないと述べている。ショイグ国防相はロシアはこの問題をすべての隣国と協議中だとし、一例として中国との戦略爆撃機やミサイル空母の共同パトロールを挙げた。