2022年の主要な出来事

【解説】ペロシ下院議長の台湾訪問と北朝鮮のミサイル発射 アジア太平洋地域における2022年の政治を総括

2022年、アジア太平洋地域は大きな注目を集めた。スプートニクは、この年における同地域の政治的ハイライトをお送りする。
この記事をSputnikで読む

台湾海峡での「火遊び」

米国のナンシー・ペロシ下院議長の台湾訪問は、大きな反響を引き起こした出来事だった。中国からの強い抗議と米国内で懸念が示されたにもかかわらず、ペロシ氏は台湾に向かった。何十万人がペロシ氏が搭乗する航空機をリアルタイムで見守り、現地時間の8月2日の夜、ペロシ氏は台北の空港に無事着陸した。同氏によれば、米政権内の「ナンバー3」の訪問は、中国だけでなく全世界に、米国が台湾への支援をあきらめないことを示す意味があったという。
その後の8月4日、中国人民解放軍は台湾の南西と南東の海域と空域で実弾射撃を伴う大規模軍事演習を開始した。この時中国軍が発射したミサイル5発は、日本の排他的経済水域(EEZ)に落下した。メディアは、EEZ内でのミサイル落下は中国の習近平国家主席個人の発案によるものだと報じている。
ペロシ氏の台湾訪問は、台湾との新たな議会外交に「ゴーサイン」を与えるものとなった。8月以降は米国のみならず、欧州や日本の代表団が台湾を訪れるようになった。
2022年の主要な出来事
ミハイル・ガルージン前駐日ロシア大使から高橋大輔選手まで 2022年にスプートニクがお届けした綺羅星のインタビュー集
11月には、インドネシア・バリ島で開催された主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)の枠組みの中で米中首脳会談が行われた。この会談で習氏はバイデン米大統領に対し、台湾問題は両国関係におけるレッドラインであり、ペロシ氏の訪問はまだそれを越えたものではないとの考えを示した。

「習近平は永遠に」 中国共産党第20次全国大会

10月16日から22日にかけて北京で開催された中国共産党第20次全国代表大会では、習近平国家主席の異例の3期目入りが決定した。2018年に「2期10年まで」とする国家主席の任期を撤廃するための憲法改正が行われていなければ、習氏はこの大会で国家主席を退任していたはずだった。
この大会では205人が中央委員に選出された。最高指導部である政治局常務委員(7人)の名簿には李克強首相、韓正副首相、李戦書国会議長、汪洋全国政治協商会議主席の4人の名前がなく、最高指導部から引退することが分かった。政治局常務委員には新たに李強氏など4人が選ばれ、新世代の指導部が誕生した。
この党大会では、党規約の改正案が承認された。承認された改正案には、中国共産党の中核として、習近平氏の思想の役割をさらに強化すること、中国軍を強化し世界をリードする軍隊とすること、台湾に関して「一国二制度」を実施することなどが含まれている。
2022年の主要な出来事
スプートニクと振り返る 2022年の日本の5大ニュース

「北朝鮮によるミサイル発射の年 」

北朝鮮は2022年、ミサイル発射実験を過去最多となる36回実施した。同国が行った最近の発射実験は「大々的」なもので、新型の大陸弾道ミサイル「火星17」はロフテッド軌道で1000キロメートル飛行したものの、通常の発射角度であれば飛行距離1万5000キロメートルとなり、米国本土に到達することが可能であることが分かった。北朝鮮当局は、「火星17」に国家英雄の称号を与えている。
また、北朝鮮は韓国の措置に対抗して、日本海や黄海に向けて砲撃を何度も実施した。10月24日には、南北間の合意で定められた黄海の海上境界線を韓国と北朝鮮の双方が侵犯したとして、両国が警告射撃を行うという大事件が発生した。
2022年、日米韓の3カ国は、北朝鮮が7回目の核実験を実施した場合、共同の対応を行うことで一致した。この3カ国は、北朝鮮が2017年以来となる核実験を準備していることから、7回目の核実験はいつ起きてもおかしくないと認識している。その一方で、北朝鮮は9月、新しい地位を獲得。核保有国であることを公式に宣言し、差し迫った脅威があれば、真っ先に核兵器を使用できると明言した。
北朝鮮は、情勢が激化したすべての責任は、朝鮮半島での軍事的プレゼンスを高めている米国にあると繰り返し指摘している。韓国と米国は定期的に軍事演習を実施しているものの、ここ数年間は演習のレベルを下げていた。しかし、2022年には共同軍事演習を新型コロナウイルスのパンデミック以前の水準、2018年の平壌共同宣言以前のレベルに戻した。特に、今年実施された大規模演習「乙支(ウルチ)フリーダムシールド」では、4年ぶりに北朝鮮からの攻撃に対応した反撃作戦の実地訓練が行われた。
【視点】北朝鮮はなぜ韓国に無人機を飛ばしたか 撃墜はなぜできなかったのか 韓国人専門家

古い枠組みと新しい枠組み

米国は2月、インド太平洋地域の外交方針を示す「インド太平洋戦略」を発表した。この戦略では、特に中国からの「挑戦」が強まる中で、この地域における重要性が極めて高く評価されている。
6月下旬、スペインのマドリッドで北大西洋条約機構(NATO)首脳会議が開催された。この会議では、日本、オーストラリア、ニュージーランド、韓国が、73年間のNATOの歴史の中で初めて「アジア太平洋地域のパートナー国」として出席し、同軍事同盟の今後10年間の新しい戦略構想を承認した。この構想では、欧州の安全保障における観点からインド太平洋の脅威に対応することの重要性を確認している。
また、ジョー・バイデン米大統領は、5月の訪日時に新たな経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」を発表し、米国、オーストラリア、ブルネイ、インド、インドネシア、日本、マレーシア、ニュージーランド、フィリピン、シンガポール、韓国、タイ、ベトナムの13カ国で発足した。IPEFの目的は、持続可能な開発、包括性、経済成長を発展させるために参加国間の経済関係を強化するというもの。
ロシア中国は、米国とNATOによるアジア太平洋地域の「開発」や、アジア太平洋経済協力(APEC)のような包括的なフォーマットを弱めることを目的とした構想を構築する点について、繰り返し懸念を表明している。
コメント